英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 63 Up を見た。7年ごとの記録。逃げ切り世代が63歳に。

英国の選挙結果が出たところでなんとタイムリーな英国社会史。
やはり物語は人物伝が一番面白い。
実際、Brexitや支持政党について語る出演者も多く、観客もそこに一番膝を乗り出していた。

私がUPシリーズについて知ったのは、NHKで日本編のドキュメンタリー『7年ごとの成長記録』を見てから。出演者が就職活動をしていたので、21歳編だったのだろうか。
その中で本家についてもふれられていて、大人になってから「出なきゃよかった」と悔いる出演者の声が紹介されていたことだけを覚えている。

それなのにまだ撮影続行が可能だとは。
非常に貴重な資料だが、とにかく今見ると「よく撮れたね」と思うばかり。
最初にどんな契約が交わされたのかと考えると気が遠くなる。
少なくとも7歳のときに出演を決めた責任は親にあるのだろうが、親を訴えたとかいう話は聞かない。
もちろん、成人してから途中で出演を拒否した人はいる。
いったんは抜けたけど、音楽のプロモーションのために出演再開したという彼はしたたかですね。
まあ、利用したったらええねん。

『63』出演者(1人は故人)は、全員1回以上結婚していて、63歳の現在はみな夫婦同席して幸せそうだ。
かつ1人をのぞいてみんな子どもがいる。
これはすごいことなのでは。次の世代はそうはいかないよね。

で、みんな異口同音に「親よりも豊かな生活ができるようになった最後の世代だと思う」とか言って、子どもたちが自分以上に祝福される(少なくとも経済的に)という信仰がなさげ。

日本はもっとひどいかも、と思った。
本編では人権が守られるようになったとか、経済面以外で改善した面のコメントがあったが、日本て経済面以外も悪化してるし。

じゃあ、米国はどうなんだと言われると、同様に苦しい人とそうでない人の差は開いているし、教育費が削られているのも似ているし、都市部の家賃上昇きついなあと思うけど、子どもたちのほうがいろいろな面で闘ってきた先人たちの恩恵を受けて選択肢を増やしているという希望はあって、私は楽観的。
だまされていると言われれば、だまされているのだろう。中にいると分からないものですね。

日本編も続けて制作されているようですね。リンク先はNHKの報道資料です(注:PDFです)。
特集番組『7年ごとの記録 7年ごとの記録』

トレーラー。

映画 The Two Popes を見た。アンソニー・ホプキンス & ジョナサン・プライス『2人のローマ教皇』

楽しかった。言葉のワンダーランド、優れた役者が織りなす知恵に富んだ対話劇、地理や歴史、ある人物が信仰に至る経緯とそのかたち、バチカン業界モノ等々私の好きな要素がぎゅうづめ。
2人が別れてからが冗長なのと、お仕えする脇の人たちの描き方がやや大げさ(いい人たちだけど)であることをのぞけば最高。

ラテン語、イタリア語、スペイン語とラテン系言語が揃いぶみで、それぞれいかに似ているかを実感するのと同時に、地続きの国でフランス語だけがなぜあれほど発音が乖離したのか謎が深まる。

それから、なぜ観客は国民性ネタに大喜びするのか。
今回も一番ウケていたのは「ドイツではジョークは...」というやつですね。

カトリックは人間が崇拝の対象に立てている面で、聖書に照らし合わせて論理矛盾を抱えているし、プロテスタントの女性として個人的に絶対に共有できない教義がたくさんあるのだが、本作の2人を見ていたら、目に見えるリーダーがいるのもいいよね~、と思うのだった。
フランシスコが故郷で「引退しないで~」とすがられているのも良かったし。
彼も人間だということさえ忘れなければ...。
とりあえずバチカンは行きたい。

フランシスコが挙げた句を私も特に愛しています。

恐れるな。わたしはあなたとともにいる。
たじろぐな。わたしがあなたの神だから。
わたしはあなたを強め、あなたを助け、わたしの義の右の手で、あなたを守る。
(イザヤ41:10)

そういえば、カバンに突っ込んだオレガノはどうなったんであろうな。

本作は12月20日、Netflixで全世界公開です。

トレーラー。

教皇も、日本の天皇もまさかの「生前退位」、ザッツ高齢化社会。

映画 Dark Waters を見た。リーガルスリラー『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』

わたしはまた主の言われる声を聞いた、「わたしはだれをつかわそうか。だれがわれわれのために行くだろうか」。その時わたしは言った、「ここにわたしがおります。わたしをおつかわしください」。 (イザヤ6:8)

ドクター・ナカムラの長年にわたる活動について聞いたとき、彼はきっとキリスト者だろうなと思った。
ミッションを前にすると何も恐怖がなくなるのだ。家族を置いていくことさえ。

ビロット弁護士も言った。I'm still here.

本編に描かれる彼もその家族も犠牲者たちも皆、キリスト者。
さもなければ、10年以上もあの重圧に耐えられまい。
家族を伴って水のきれいな遠い地に逃げることだってできたのに。

逆に、神との契約なしに石を投げつけられながら意志を貫ける人はそれこそ超人だと思う...。ちょっと病気の可能性もあるかも。

もうひとつずっと頭に浮かんでいたのは、日本の原発ははるかにやばいということ。
放射能が人体に害を及ぼすのは確かだけど、原因と被害の関連性が見えにくい。随分後になってからうっすらデータにあらわれる可能性もある。この映画みたいに訴えても勝てなさそう。50年後に責任を自任する人もいないだろう。

そういえばオペレーショントモダチで被爆させられたと訴えた軍人さんたちはどうなったかなと調べたら、やっぱり決着なんて当分つかなそうよ。
San Diego judge dismisses U.S. sailors’ Fukushima radiation lawsuits, rules Japan has jurisdiction

五輪の聖火リレーの出発地点、放射線量が高いらしい。やめようよ、ほんとに。
Radiation hotspots 'found near Fukushima Olympic site'

本編の元ネタになった報道の一部。
The Lawyer Who Became DuPont's Worst Nightmare

トレーラー。

帰りにいいことがふたつあったのでメモしておきたい。

FedExに寄ったら、カウンターにかつてないほどの長蛇の列ができていた。
しばらく1本の列に並んでいたら、「買い物だけ?だったらあちらの列へ」と案内されて、隣に新しくできたレジ列に移動。
それでも3番目のまま全然動かない。
5分ほど待っただろうか、別のスタッフさんが来て「あなた買い物だけなんだよね?あっちで通すからついてきて」と言われて旧列のさらに奥にできていた列の前へ。
聞くと、最初に私の後ろにいた親子連れのおじさんが、「あの人はもっと前から待っている」とわざわざ言ってくれたらしい。
お礼を言うと、「いやだってフェアじゃないじゃん」とさらり。
ありがとう。

通りに出て歩いていると、信号待ちをしていた車の男性がこちらを見て「YES!!」と絶叫してきた。
まあ、ただの若者グループの酔狂だったんだけど、神の約束と、ジョンとヨーコの出会いのきっかけになったヨーコの作品 Ceiling Painting を思い出してちょっと励まされた。

For no matter how many promises God has made, they are "Yes" in Christ. (2 Corinthians 1:20, NIV)

なぜなら、神の約束はことごとく、彼において「しかり」となったからである。(第2コリント1:20)

Ceiling Painting, 1966
I was an outcast in the avant-garde because the rest of the avant-garde was trying to alienate the audience. But i was trying to say 'YES.' I was trying to communicate. I was trying to say 'LOVE' and 'PEACE' and 'YES.' - Yoko Ono

I was not happy with my life so I wanted to say 'yes' to me. Yes, yoko, don't worry. I wasn't expecting anything. But it worked, didn't it?!" - Yoko Ono

YES!

2019年 映画館で見た映画ベスト3

今年は不作だった感がありますが、上げておきます。スケールは文春シネマチャートの真似です。個人的に気に入った作品順。それぞれ、鑑賞日の日記にリンクしています。

★★★★★ もう最高!ぜひ観て!!
The Farewell『フェアウェル』
Waves『ウェーブズ』
Marriage Story『マリッジ・ストーリー』

★★★★☆ 一食ぬいても、ぜひ!
A Beautiful Day in the Neighborhood『ア・ビューティフル・デイ・イン・ザ・ネイバーフッド』
The Two Popes『2人のローマ教皇』
The Last Black Man in Sawn Francisco『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
Amazing Grace『アメージンググレース』
The Mustang『ムスタング』
『東京物語(1953)』4Kリマスター版@Filmtheater de Uitkijk
Queen & Slim『クイーン&スリム』
The Chambermaid『ザ・チャンバーメイド』
Judy『ジュディ 虹の彼方に』
Us『アス』

★★★☆☆ 料金の価値は、あり。
Knives Out『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』
Stan & Ollie『僕たちのラストステージ』
Blinded by the Light『ブラインデッド・バイ・ザ・ライト』
Parasite『パラサイト』
They Shall Not Grow Old『ゼイ・シャル・ノット・グロー・オールド』
Apollo 11『アポロ11』
Ask Dr.Ruth『おしえて!ドクター・ルース』
Midsommar『ミッドサマー』
Wild Rose (2018)『ワイルド・ローズ』
Toy Story 4『トイ・ストーリー4』
American Woman (2018)『シングルマザー ブリジットを探して』
Booksmart『ブックスマート』
Maiden (2018)『メイデン』
Brittany Runs a Marathon『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』
American Factory『アメリカン・ファクトリー』
The Peanut Butter Falcon『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』
Honeyland『ハニーランド 永遠の谷』
63 Up『63 アップ』
Rocketman『ロケットマン』
Hustlers『ハスラーズ』
One Child Nation『一人っ子の国』
Shusenjo: The Main Battleground of the Comfort Women Issue『主戦場』
Honey Boy『ハニー・ボーイ』
Dark Waters 『ダーク・ウォーターズ』
Sorry We Missed You『家族を想うとき』

★★☆☆☆ 暇だったら……。
Isn't It Romantic?『ロマンティックじゃない?』
Gloria Bell『グロリア 永遠の青春』
Free Solo (2018)『フリーソロ』
High Life (2018)『ハイ・ライフ』
Long Shot『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』
Late Night『レイトナイト 私の素敵なボス』
Once Upon a Time in Hollywood『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Toni Moirrison: The Pieces I Am『トニ・モリソン ザ・ピーシズ・アイ・アム』
Good Boys『グッド・ボーイズ』
Ad Astra『アド・アストラ』
The Lighthouse『ライトハウス』
Charlie's Angels (2019)『チャーリーズ・エンジェル』
Harriet『ハリエット』
Frankie『ポルトガル、夏の終わり』
Cats (2019)『キャッツ』

★☆☆☆☆ 損するゾ、きっと。
Long Day's Journey Into Night (2018)『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』
Mary Magdalene (2018)『マグダラのマリア』
The Art of Self-Defense 『恐怖のセンセイ』
A Bigger Splash (1974/2019)『ア・ビガー・スプラッシュ』
The Lion King (2019)『ライオン・キング』
Yesterday (2019)『イエスタデイ』
Jawline『ジョーライン』
Downton Abbey (2019)『ダウントン・アビー』
Edie『イーディ83歳、はじめての山登り』
Pain and Glory『ペイン・アンド・グローリー』
Last Christmas『ラスト・クリスマス』

☆☆☆☆☆ ていうか、見たっけ?
Wild Nights with Emily (2018) 『ワイルドナイツ・ウィズ・エミリー』
Fiddler: A Miracle of Miracles『フィドラー:ミラクル・オブ・ミラクルズ』

番外:今年、映画館以外で見た映画。少ない。家で映像を見る習慣がほんとになくなった。ドラマも全然見てない。テレビもねえ、ラジオもねえ。
『日々是好日』 ★★★☆☆
『バーニング』 ★★★☆☆
『ユナイテッド93』 ★★★☆☆
以下はそれぞれ80年代、90年代の作品だが、「そのシーン」になると妙な楽曲が流れ始める共通点あり。
『きのうの夜は...』 ★★★☆☆(同棲の苦しみがよく描かれている)
『幸福の条件』 ★☆☆☆☆

★★★★★ もう最高!ぜひ観て!!
★★★★☆ 一食ぬいても、ぜひ!
★★★☆☆ 料金の価値は、あり。
★★☆☆☆ 暇だったら……。
★☆☆☆☆ 損するゾ、きっと。

☆☆☆☆☆ ていうか、見たっけ?(文春シネマチャートには無いラベルです、念のため)

それから今年は何度かリサーチ・スクリーニングに行けたのが楽しかった。
初号よりも前のクレジットがついていない段階のプロセスで、一般客の反応をみて切ったり足したりするためのマーケティング試写である。
同様の試写会で噴き出した不満を反映して『ショーシャンクの空に』の最後の再会シーンが付け足された話が有名だろう(残念ながらまさに蛇足感があって、私はないほうがよかったと思った。車が遠ざかるシーンでキレイに終わってたもの)。
作品どうこうよりも、周防監督が『「Shall weダンス?」アメリカを行く』で事細かにレポートしていたネットなき時代のスクリーニングとやり方が変わってない !!!ということに興奮した。

ingoditrust.hatenablog.com
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映画 Knives Out を見た。『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』

面白かった。
演者がみんなすごく楽しんでますね。
ダニエル・クレイグも来春公開の第25作目で007やめるってよということだし、じっくりこういう役を積み重ねてほしい。

美術もとても良かった。

RNのマルタに共感したのは『ベアトリス・アット・ディナー』的な弱みを設定してあったから。
家族の会話にたびたび出てくる「あの子は移民」という言葉に私も過敏に反応してしまった。
オマエモナーと言いたくなる。
ま、007が代弁してくれたけどね。さらに、移民だなんだは別として、看護師としての彼女の仕事ぶりを理解している彼のセリフが嬉しかった。 

「ウソをつけない体質」も面白い。それって神。
神は全能ですが、ウソはつけないんですよ。「真実な方」だからです。
彼女の家は典型的なカトリックみたいでしたね。
ルームミラーの十字架を手前にちらつかせるのが『クイーン&スリム』と同じ演出で、いろいろと残像が浮かんだ。

クリス・エヴァンスがマルタを連れ出して話を聞くシーンの白いセーターがセクスィー!と人気を集めてるらしいんだけど、理解できない。むしろ素敵な人が着てたらガッカリするタイプの衣装だと思ったわ。

トレーラー。

感謝祭のテーブルを囲む監督と出演者たち。和気あいあい。