英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Queen & Slim を見た。Exodus 2019 『クイーン&スリム』

『ハリエット』の時代から170年、ここにもまたアフリカ系アメリカ人の出エジプト記が。
脱構築半ばで倒れる(少なくとも地上では)ロードムービーは『怒りの葡萄『テルマ&ルイーズ』の系譜。

常にクイーン&スリムを導く十字架。昼は雲の柱、夜は火の柱。
いかなる旅であろうと感謝する、とクイーンは神に祈る。
ユダのトレーラーハウスにまで十字架があったのぅ...。

連休最終日、おいしいものでも食べて帰るつもりだったが、相方ともども何だかひどく悲しい気持ちになってただ無言で帰ってきた。
これ、よくもまあ感謝祭に公開したよね。

スリムの「普通にいい人」キャラクターは興味深い。キレたり怒鳴ったり汚い言葉を連発したりしないでくれてありがたい。

今回の旅で巡ったのはオハイオ、ケンタッキーなど。
昨日スリムが「寒いから早くしてくんない?」って言ったせいで事件になったというのに、翌日にはクイーンがスキンピーな衣装を選んでて、アメリカの広さを実感したことでした。

目に見えないシステムの頑強さ。Justice for allへの道のりの果てしなさ。
再び、デヴィッド・フォスター・ウォレスのスピーチ、This is water をかみしめる。
(ご存じない方へ、NewsweekやTIMEなどの各種卒業式スピーチランキングでは常に最高評価、2005年のジョブズスピーチよりも有名な作品です。探せばスクリプトはもちろん、熱意あふれる邦訳もたくさん見つかります)

たまたま今日出会った佐々木ののかさんのブログにも、水を意識し続ける闘いが描かれていて共感した。
結婚も交際もフィットしない それでも私が“公”が気になる理由

トレーラー。

映画 A Beautiful Day in the Neighborhood を見た。実践 ミスター・ロジャース『幸せへのまわり道 ア・ビューティフル・デイ・イン・ザ・ネイバーフッド』

まいった。

「私にとって一番大事なことが何だか分かるかい?今、ロイドと話をしているこの瞬間だよ」
で、トントン、とドアを叩かれ、撮影中だというのにミスター・ロジャースがロイドをみとめてヤアヤアと歓迎に歩み寄る姿に嗚咽が内臓から突き上げた。
迷子になっていた羊を見つけて大喜びするイエスじゃないですか !!!
それから、彼が言葉を発するたびに涙がとめどなく流れた。

ドキュメンタリーWon't You Be My Neighbor? がフレッド・ロジャース思想のテキストだとしたら、本編は実践編である。
人を「プレシャスな存在」として尊重するとはどういうことなのか、具体的なふるまいが描かれているのだ。
Loveは動詞で、目に見えるもの。
「ミスター・ロジャースが私の名前を知ってた!」というお連れ合いの言葉が象徴的です。

わたしの目には、あなたは高価で尊い。 わたしはあなたを愛している。(イザヤ43:4)

物語全体としてはロイドの話が長いな、と思わないでもなかったが、実は主役は彼なのです。
この映画のネタ元になったEsquireの記事、早速読んだ。
TOM JUNOD, Can You Say...Hero?
キリスト者としての側面がより深く書かれている。彼の「朝飯前」をぜひ見習いたい。
20年前の1本の記事がどのように立体に織り込まれたのかが分かるのも面白い。
次の描写には膝を打った。ミスター・ロジャースのこの姿勢ゆえに私は泣かされたのだ。

He finds me, because that's what Mister Rogers does—he looks, and then he finds.

番組セットや当時のニューヨークのニュアンスを描き込んだシネマトグラフィが素敵。
ミスター・ロジャースで育った人たちや、その子どもたちにとってはまた格別の映画体験になるのでしょう。
傷ついた者はキリストのまなざしに気づくことができる。
感謝祭やクリスマスに向けて神聖なホリデームービーでした。

悲しむ人々は幸いである。その人たちは慰められる。(マタイ5:4)

映画館で完全な無音状態を経験したのは初めてかもしれない。

もしもトム・ハンクスがまた賞などとったら、授賞スピーチで「感謝の沈黙」を再現してほしいですね。

ingoditrust.hatenablog.com

トレーラー。

映画 Honey Boy を見た。シャイア・ラブーフ is『ハニーボーイ』

『アメリカン・ハニー』『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』の仕事しか見ていないものの、シャイア・ラブーフはいかにも突然キレそうで、暴力(特に罵倒)がひどそうで、いついかなる原因で死んでも誰も驚かないあぶなっかしいろくでなしキャラに見える。
実際、経歴を見て暴れん坊時代を乗り越えたことを知った。

ハニーボーイ

ハニーボーイ

  • シャイア・ラブーフ
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でも最近、このインタビューを見て、人と向き合う姿勢に天性の懐の深さを感じた。
「『シャイア・ラブーフの部屋』にすればいいのに」というぶら下がりコメントに同意。
スチュワートが終始貧乏ゆすりをしていて青いね〜、という感じだから余計そう見えるのかもしれないけど。

そんなラブーフが生き抜いた厳しい子ども時代を描いたのが本作である。
「ぼく、12歳なんだけど」と、自分がマイナー(未成年)であることをアピールしなきゃいけない子ども時代。
私は子どもの頃にそんなセリフ思いついたこともない。言う必要がなかったからだ。

今だったら、父ちゃんは撮影現場で逮捕されるだろうよ...。
よくサバイバルしたね。強い子だね。

特に印象に残るシーンはなかったけど、ソツのない研ぎ澄まされた脚本だったと思います。

繰り返しになるけど、ルーカス・ヘッジズくんのキャリアの積み重ね方はスマートだよねえ
2作続けて彼の作品を見てしまった。

トレーラー。

映画 Waves を見た。トレイ・エドワード・シュルツ作『ウェイブス』

高解像度で綴られたゆるしの物語。
この内容で2時間もひきつける弱冠31歳の監督の手腕に舌を巻く。
観客の没頭ぶりは、悲劇のシーンで上がった、今まで映画館で聞いたことのないような腹の底からの悲鳴にあらわれていた。

自分の目には『ムーンライト』の残像も多いに重なっていたと思うけど、この物語の舞台が南フロリダであることには必然性があった。
私が初めてかの地に行ったのはもう30年以上前。とにかく砂が白かったのが印象に残っている。あとワニ沼に落ちかけたこと...。

世界の広さを知らないティーンズライフが小さな悩みでめちゃくちゃ翻弄されるのは想像つくけど、主役のタイラーはあまりに甘ちゃんボンの卑怯者でわりと驚いたかも。

エミリー章、ガン患者の登場は唐突でしたが(監督の実体験に基づいているらしいけど知ったこっちゃない)、誰もがゆるすことを覚えなきゃいけないからね...。
起きるべき神の計画だったのでしょう。
デビルよりもモンスターよりも罪ぶかき存在、われは人間なり。

憎しみは争いを起し、愛はすべてのとがをおおう。(箴言10:12)

ひとつ小ネタでメモしておきたいのは、風呂場でハンバーガーをかじる絵(しかも泣きながら)が新しかったということ。
ところで、ルーカス・ヘッジズくんのキャリアの積み重ね方はスマートだよねえ。職人ぽくもある。
エミリーをデートに誘う場面、すごく良かった。
(後で「アレクシスの仇〜」とか言って豹変しないか少し不安になる誘い方でもあった。そういう映画じゃないと知りつつ。)

WAVES/ウェイブス(字幕版)

WAVES/ウェイブス(字幕版)

  • ケルヴィン・ハリソン・ジュニア
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トレーラー。

映画 Charlie's Angels (2019) を見た。エリザベス・バンクスの『チャーリーズ・エンジェル』

このシリーズは初見。クリステン・スチュワートが好きなので観に行く。
イスタンブール旅行もできて結構面白かった。
タイトルシーンから一貫してガールズエンパワーメント映画ですね。
出てくる女性たち、全員self-possessedで好きになりました。
特にエラ・バリンズカの美しいことといったら。
過去のエンジェルズたちも顔を出していたっぽく、私は全然彼女たちの現役時代を知らないながらも「先輩、ありがとう」という気持ちに。

でも闘う彼女たちの傍らにオーガニック飯用意して整体して空気を和らげてくれるオカン役のセイントがいて、みんなが、特に新人のナオミが励まされているのがね… やっぱり集団にああいう役の人って必要なんでしょうか。

仕方ないけど、エンジェルズ御用達のハイテク機器がSONY製なのが弱冠気になった。

最近、何かの番組で「ブロックバスターのアクション映画とインディペンデントのドラマ映画のチケット代が同じなのは非合理的だ。制作費などによって適宜変えてもいいのではないか」という議論を聞いた。
私もそれはちょっと思ってた。
でも米国の場合、そもそも映画館や時間帯、新作か否かなどによって毎回値段が違うので、一観客としては今後さらに価格の変数が増えても気にならないというか気づかないだろう。
「あれ、やすっ、たかっ」と思うことが今より増えるくらいかな。
ちなみに今回は7.5ドルで、よく行く映画館ながら初めて当たった価格設定だった。

チャーリーズ・エンジェル

チャーリーズ・エンジェル

  • クリステン・スチュワート
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トレーラー。