英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Bones and All を見た。ルカ・グァダニーノ『ボーンズ アンド オール』

人喰いカップルのアメリカンロードトリップ。

全体的に、作り手が人間の禁忌を扱いかねている感じ。
もちろん、ホラーだとわかって見に行ったのだが、面子からもう少し「ドラマ」を期待していたんだろうな。
「匂いでわかるんだよ〜」と言われたら、はいはいホラーでしたよね、と言うしかないのだが。

たとえば、ラッセルとシャラメの距離が縮まるところをもう少し丁寧に描いてほしかった。
相手が人喰いだってわかってるのに、抱き合ったら首を齧られそうで恐ろしいじゃないですか。
どうしてこの二人の間ではそうならずに済んだのか。

クロエ・セヴィニー、最近目を疑うようなチョイ役が多いな。

トレーラー。

映画 Devotion(2022)を見た。海軍ジェシー・ブラウンとトム・ハンドラーの『デヴォーション』

1950年、朝鮮戦争のさなか。海軍航空隊の史実に材を取った物語。

優れた活劇なのだが、グレン・パウエルが主演していることもあってか、『トップガン』とかぶってる映画と思われて非常に損をしている。

ジャンルからして全然違うけど、あえて「海軍パイロットのお仕事もの」として比べるなら、本作のディテールのほうがはるかに興味深いよ。
兵士が戦闘以外の原因であっけなく命を落とすところも含めて...。
着陸の難しさとそれに対する操縦士の意識について丁寧に伏線を積み重ねていて興奮する。

また、アメリカが兵士をおだてるために膨大なコストをかけている話に戻るが、米軍のエンブレムはいちいちかっこいい、とどうしても思ってしまう。
それにひきかえ、日本の陸上自衛隊の日本刀のエンブレム、気持ち悪くないですか。
エxバとか、法x功とか、旧統x教会とか、一部宗教団体が採用するグラフィックデザインがうっすら不気味(何も知らなくてもポスターを一目見るだけでヤバいやつ、とわかる)に感じるのはなぜなんだろうと常々考えているのだが、それと同じ匂いがする。

わが祖国、一番戦争ゴッコや司令官ゴッコをしたがってたのはアレだと思っていたのだが、今なお、軍事費を大幅に増やして攻撃できるようにしようとしているらしいですね。
今年はもう80万人も生まれないんでしょ。私の世代の半分以下やで。どこに持ちゴマがあるわけ?
アホか。

原作。

トレーラー。

映画 The Fabelmans を見た。スピルバーグの『フェイブルマンズ』

スティーヴン・スピルバーグの8ミリカメラを携えたComing-of-ageストーリー。

小学生のときに読んだスピルバーグのゆるい伝記の内容が頭にあったのと、各誌絶賛レビューの雰囲気から、『リコリス・ピザ』『ラ・ラ・ランド』みたいな内輪受けかなぁ...と萎える感じがあったのだが、とんでもなかった。
最初の30分(サミーの言葉を借りれば、fake, totally fake。わざとやってるんだろうけど)を乗り越えれば、あとは素晴らしくスリリングな、ハヌカにぴったりの逸品だった。

カメラの後ろに立つことの権威性。
切り取られたものはフェイクであれ事実であれ「真実」になってしまう。
サミーの撮った自分の姿を見た母親と差別主義者のスター同級生の動揺は、「真実」を突きつけられた人の姿として説得力が高い。
特に後者はintenseかつentertaining。
Ditch Dayの映画を見ているうちにスター同級生の目線になってしまって「なんでこんな撮り方してん!」と一緒にサミーを問い詰めてしまうの。

ユダヤ人ファミリーとしての描写も興味深いものが多かった。
中の人は自分がreligiousだとは思っていなかったかもしれないけれど、一家のOSが旧約聖書にあることが節々でわかるようになっていた。『未知との遭遇』につながるのも道理である。
大伯父を出してきたところなど、監督にとっては非常に重要だったのでしょう。

特にインターネットなき時代は、アウトライアーの登場はほぼ環境に依存していたことがわかる。
グラッドウェルの『Outliers』が解釈したゲイツとジョブズが突き抜けた理由と同じ。

決して「映画業界の内輪受け」には終わっていないけれど、ユダヤ系が力を持っている映画業界で好感されやすいというのはどうしてもあるかも。『リコリス・ピザ』『シンドラーのリスト』のように。

LA移転後のエピローグは、蛇足の不安が湧いてくる前にピシッと地平線が決まり無事着地、拍手。
(でも、お父さんだけかわいそうすぎるよね...)

帰りに聞いたラジオで、アレが反ユダヤ主義者と会食した件の分析報道が流れててげんなり。

【12/7/2022 追記】
ユダヤ人ではない役者がユダヤ人を演じていることを批判したIndieWireの記事。
Enough Already! Let’s Agree It’s Weird When Gentiles Play Jewish Characters
とはいえ、そもそも「ユダヤ人」のレプリゼンテーションが一意ではないんだけどね...という留保も。
実際、こちらの自称Jewの仲間たち、信仰のグラデーションからして幅広く、とてもじゃないが共通点など挙げられない。改宗者も多いし。

スピルバーグもまさにグラッドウェルが言うところのOutliersのひとり。

邦訳。

私が、Artを通してこそ真実が伝わること、真実には絶対にそれとわかる力があることを学んだ本。

トレーラー。

映画 She Said を見た。『SHE SAID / シー・セッド』

とても面白かった。PLAN B作品にハズレなし。
2016年からの背景、記者たちのプライベート(というか彼女たちに完全なプライベート時間はなきに等しいのだが)を織り込んだ構成に拍手。

冒頭の「声をあげたのに大統領選はあの結果かよ」の呆然。
私もあの日は、それまでに出た性暴行報道を受けてもなお、アレに投票する人たち、特に女性がいるという事実をどうしても受け入れられなかった。
でも、取材に応じたあの彼女たちは決して捨て駒になったのではなく、後のこの記事とMeToo movementの下地を確かに敷いたのだ。

報道の説得力を強化するため、実名を記したいとの記者の要望に、「娘たちの未来のために」、あるいは「クリスチャンとして」GOサインを出す女性たち。
アシュレイ・ジャッドの本人役もよかった。
日本にも伊藤詩織さんや五ノ井里奈さんらがいる。
ありがとう。そしてI'm so so so sorry.
私は彼女たちが言ったことを一言一句、彼女たちの真実だと信じる。

それにね、語っても意味ないじゃん、と思った人がいる一方で、私は2016年のあの日、メディアを買い支えないと社会が崩壊する、と身にしみて知り、ニューヨークタイムズとロサンゼルスタイムズの購読だけはともかく始めたんです。
個人が発信できる時代だからこそ、この映画で描かれたような記事に起こすまでの取材と裏どりのノウハウを守ってもらわないといけない!!!と思ったの。

邦題についてはDenialのそれと同じくらい不誠実で、腹を立てているので引用しない。
このラストシーンを見てもまだ邦訳書の邦題を引き継ぐんかい。

斉藤正美氏が挙げていた邦訳の問題点も、すごく身につまされる。
たとえば、翻訳者に「冤罪ガー」に多少なりとも共感するバイアスがあることで、このような誤訳どころか歪曲が発生してしまうわけだ。
#MeToo運動を歪曲し、性暴力被害者を貶める ――『その名を暴け』の誤訳・改変と木村嘉代子氏の書評

原作。

トレーラー。

映画 The Banshees of Inisherin を見た。マーティン・マクドナー『イニシェリン島の精霊』

アイルランド、架空の辺境の地のマッドネスな人間模様。
照明明るめの『ライトハウス』

荒波に現れる架空の集落の生活を眺めながら、社会は複雑になりすぎたよなあと考えていた。
屋根の下で暮らすためだけに稼がないといけなくなったなんて。

視線の定まらないバリー・コーガンを見ていると非常にストレスがたまる。
『聖なる鹿殺し』レベルである。

コリン・ファレルの眉毛がどうも1920年代のセットに溶け込んでいないと思った。
眉毛だけ妙にコンテンポラリーで浮いている。

トレーラー。