英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 House of Hummingbird (2018) を家で見た。『はちどり』全米公開

主演のウニちゃんの体の通りの良さに驚嘆。
彼女にとって感覚をすみずみまで行き渡らせることができるのは指先だけではない。

『ドライブウェイズ』に続き、とても文法の正確な作品。クリシェだらけという意味ではなくて、この動詞にはあの形容詞の組み合わせがしっくりくるよね、というコロケーションがきっちりしてる。

あの家族、すごくヘン。
子どもに対する関心が微妙なのは分かった。
でも、毎日おいしそうなおかずをたくさん並べて一緒に食べてるんだよ。ウニも母親のチヂミが大好きらしい。
それではたしてあんな仲悪い集団ができあがるだろうか。
手の込んだ料理を毎日一緒に食べることで仲良し家族を演じる仮面家族、という話なら日本の小説で何度か読んだことがある。
でもこの家族の場合は他者にも自分にもそういうアピールの必要性に迫られていない...。

少なくとも、朝ごはんさえ食べさせていれば子どもはグレない(@田辺聖子のご夫君)という真理を二度目のチヂミシーンが物語っていた。

10歳くらいのころ、ふと気づいたことがある。お母さんがごろごろしてる姿を見たことがない!って。
それはすごいことだったのだと改めて思った。
ウニのお母さんは働き者だけど、お父さんに浮気され(多分)、いつも疲れていて、しょっちゅうもの憂く昼寝してる。そんなの誰も責められないしお母さんに共感するけど、ウニちゃんは不安をつのらせていた。

「子どもは毎日幸せにしたらなアカンのに」という『大阪ハムレット』のおっちゃんのセリフが何度もオーバーラップした。

本作では「急いで」ハングルを書くシーンが何度かあるけれど、英語だけでなくひらがなに比べても書くのに時間かかりそうに見えた。世界で一番合理的な言語のはずなのに。

Peter Sobczynskiの批評には、単数形のtheyが使われていた。
https://www.rogerebert.com/reviews/house-of-hummingbird-movie-review-2020

地元映画館のオンラインプラットフォームにて英語字幕で鑑賞。
138分、スタンディングデスクで立ち続けたまま最後まで見てしまった。

愛すべきなにわ語マンガ、『大阪ハムレット』。子どもを幸せにするリサイクル屋おやじが登場するのは第2巻。

トレーラー。

映画 Irresistible を見た。ジョン・スチュワート × スティーヴ・カレル『イレジスティブル』

期待のPlan B作品だったが駄作。2020年にタイムリーというだけ。
赤と青のステロタイプや、キャンペーンのチームがどういうものなのかが垣間見られる面白さは少し。

種明かしを見れば演出かとは思うけど、本筋の外で出てくる街の人たちがいちいちわざとらしくて見るに堪えない。
特に要所要所で通りかかるばあさんとか『トゥルーマン・ショー』の趣。
設定も同様で、カレルにダジャレを言わせるためだけにあんな小さな街に尼さん集団がいることになってるし。

さて11月だけど、私は覚悟はできている。
もちろん政権は変わってほしいし、アレがアレしてるのを今でも信じられない思いで見ているけれど、この4年間、既得権金持ちや白人至上主義者以外のアレ支持者の切なる声も聞いてきたゆえ、かつその盤石さも知ってのことです。
今の状況ゆえに、新しい投票手段、調子にのって暗躍しまくるハッカー含めた投票所の混乱の心配もあります。
とにかく、神のみ旨に沿った結果になるように。祈るのはそれだけです。
ただ、ランニングメイトはカマラ・ハリスがいーなー。サンダース並みの大きな政府志向だからバランスとれると思うし、何より気さくで素敵な人なのよ(インタビュー映像等での印象です)。

トレーラー。

映画 My Darling Vivian を家で見た。ジョニー・キャッシュと『マイ・ダーリン・ヴィヴィアン』

ジョニー・キャッシュの、ジューン・カーターでないほうの妻、ヴィヴィアンの生涯を4人の娘たちが語る。
前田ハウスで話題の SXSW 2020 出品作だが、イベントが初めて中止になったため、オンラインプレミア。

50年代、60年代のメンフィス、ロサンゼルスのバレーの映像が楽しめる。

職業ハウスメーカーのヴィヴィアン、少なくとも4人の子育てのクレジットは彼女にあるべきなのに(実際、ほぼ1人で育ててるし)、ジョニーとジューンがそれさえ奪ってしまう。サイアクだ。ジョニーのお別れ会でもまるでいないことにされてるのがひど過ぎる。

聞き捨てならなかったのは、熱心なカトリック信者ながら、離婚したために聖餐を受けられなくなったという話。娘の1人は、そのせいでカトリックから離れたという。当然だ。聖書を教典にしていながらなぜそんなイジメに走るのか。うちの教会だったら半分以上の人が聖餐受けられなくなるわ笑
後に、ヴィヴィアンにとって信仰がいかに重要かを知っていたジョニーが教会に「離婚は自分のせい、彼女は悪くない」と手紙を書いて再び聖餐が受けられるようになったというが、それもますますバカバカしい。厳禁だった炭酸が、コカ・コーラ社長の入信以来OKになった某教会かよ...。

若い2人がやり取りした手紙の筆跡の美しいこと。
封筒に入ったラブレターをもらえたのは私の世代が最後ではないか。
私は残念ながら書くほうは経験しないままだけれど、男子たちから切実な手紙を見せてもらっては(そう!年齢に関わらず、コドモは見せびらかすんだよ!!! 特に男子!!! だから絶対書きたくなかったんだよ!!!)書き手の思いの純粋さに驚嘆したり、時には勘違い的妄想にちょっとウケたりしていた。
今の若い人はそもそも手書きの手紙をもらえることはほぼなかろうね、気の毒に。

離婚後は、娘によるとなぜかジョニーより先に再婚しなくては、と焦り、取引みたいな結婚をしたヴィヴィアン。でも、愛したのはジョニーだけだったという。彼亡き後は「彼のいない惑星に生きてたって意味がない」とさえ。
娘の言葉、"She never falls out of love with my dad"が素敵。

娘たちが口々に「母はこの映画を目にするのが嫌で公開前に慌てて死んだんだ」と言う2005年の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』。
ヴィヴィアンをジニファー・グッドウィン、ジョニーをホアキン・フェニックスが演じるが、ジョニーの自伝が原作で、主役はジューン・カーター(リース・ウィザースプーン、本作でオスカー獲得)とのカップル。そりゃ見たくないわ。

ヴィヴィアン本人のアカウントはこっち。

CBS Newsで放映されたPR。

映画 Miss Juneteenth を家で見た。Channing Godfrey Peoplesの『ミス・ジューンティーンス』

155th aniversary of Juneteenthに。
奴隷解放宣言から実に2年半後の1865年、米国で奴隷制がオフィシャルに終焉を迎えた日である。
今週になって急に各地の自治体や企業がこの日を記念しようとPRを始め、私も初めて知ることになった。
近所の銀行からも「今日はJuneteenthをおぼえて半ドン営業にします」と連絡がきた。

公民権運動の「意外に最近」感に比して、こっちはフロンティアの消滅よりも前で現在の状況も考えると随分昔だなという気がする。
この長きにわたって問題は埋め込まれたままであるということ。

最後に解放が伝わった町、テキサス州フォートワースのブラックコミュニティで起きたある継承の物語。
本作で長編デビューしたChanning Godfrey Peoples監督も、子どもの頃からJuneteenthを祝うのが習慣だったそうだ。
映画の中でJuneteenth博物館の見学もできるし、ガイドさんから解放の日の説明も聞ける。

孫はあずかれないよ、あんたの子でしょ、と孫の目の前で言うおばあちゃんさすが。
毎週末に孫が来て面倒をみることが恒例になってしまい、実の子に「もうヤダ、しんどい」と言えないまま10年たってる日本の友人のことを思った。
が、このおばあちゃんには別の顔があって、偽善というはるかに大きな罪をおかしていることが分かるのだが...。
あれは一番やばい。娘が寄り付かないのも当然だ。残念ながら彼女がいる限り、あの教会は栄えない。

姉妹みたいに年の近い母娘3代。彼女たちも、まわりの男性たちも、みんな、若すぎるのが諸問題の根源だと思う。
She doesn't know what she is doing のまま、家族を再生産すると、少なくとも彼女たちの社会ではただただ貧乏ばかりが繰り返されてしまう。

バーオーナーのおっちゃん。
「黒人にアメリカンドリームなんかない。目の前にあるものにしがみつくだけ。でも、たとえオサレじゃなくてもそれは自分のもの。Free and clearだ。大事なものがあるなら絶対に誰にも渡しちゃだめだ」
(Free and Clearは一切の負債がない状態のこと。ちなみに、イエスの辞世の句は「完了した」なんですけど、原語は金融用語で「完済した」の意。私たちを完全に買い取った、と言われて身代わりに死なれました)

Ph. Dをとると、Mr.とかMs.とかそれ以外にも人間を分類するあらゆるタイトルから自由になれてナイスだ、と誰かが言っていた。
彼女たちが、マヤ・アンジェロウを普通にドクター・アンジェロウと呼ぶのを聞いて、ほんとにそうだなと思った。ただ、実はアンジェロウは学位を取得していない。自分でドクターと呼んでもらいたがったとのこと。それもよし。
先日、トレバー・ノアもトークゲストのバイデン副大統領に「ドクター・バイデンにもよろしく伝えて」と言っててすがすがしかった。ジル・バイデンは教育学博士。
同時に日本語の「さん」「さま」の良さにも気づくのであった。相手の属性を知らずして敬意を払うことができ、人を分けない。日本語、いいね。

そして何よりも、名前を奪われてはいけない。
Miss Juneteenthでもなく、自分だけのタイトルを。

聖書的だな~。千と千尋だな~。

トレーラー。

Google先生がちょっぱやでこさえたのであろうDoodleがいい。コロナ禍の中、5月のメモリアルデーの事件が起こる前から準備していたというなら、それはそれで機を見るに敏。

Vimeoオンデマンドで鑑賞

映画 For They Know Not What They Do (2019) を家で見た。『フォア・ゼイ・ノウ・ノット・ワット・ゼイ・ドゥ 彼らは何をしているのか、わからずにいるのです』

引き続き、Pride Month。アトランタ、シアトルをはじめ、多数の映画祭で観客賞を受賞したDaniel G. Karslakeのドキュメンタリー。
原理主義的で強硬なプロチョイスの福音派やカトリックの家庭とLGBTIの子どもたちの葛藤。

イエスが十字架の上から語られた慈悲の言葉がタイトル。
LGBTIに対して「かわいそうに自分が何をしているのかわかっていないのだ」と聖書を盾に同胞を裁き、「治してあげる」ためにお節介をやく人たちのほうが、実は何をしているのかわかっていないのではないか、と問いかける。

神さまがゲイはダメと言うなんてあり得ないと信じるキリスト者の1人として、エバンジェリスト家庭の話を聞くことができてとても興味深かった。

LGBTIを非難する人たちが根拠にしている箇所は以下のような箇所(口語訳)。イエス自身による言及はないのは有名。

またあなたの神の名を汚してはならない。わたしは主である。あなたは女と寝るように男と寝てはならない。これは憎むべきことである。(レビ記18:21, 22)


女と寝るように男と寝る者は、ふたりとも憎むべき事をしたので、必ず殺されなければならない。(レビ記20:13)


不品行な者、偶像を礼拝する者、姦淫をする者、男娼となる者、男色をする者、盗む者、貪欲な者、酒に酔う者、そしる者、略奪する者は、いずれも神の国をつぐことはないのである。(第1コリント6:9)


すなわち、彼らの中の女は、その自然の関係を不自然なものに代え、男もまた同じように女との自然の関係を捨てて、互にその情欲の炎を燃やし、男は男に対して恥ずべきことをなし、そしてその乱行の当然の報いを、身に受けたのである。(ローマ1:27)

そのうえで登場する牧師の1人は、「聖書が非難しているのは同性愛ではなく、性暴力や搾取なのだ」と説いた。原書のニュアンスは分からないながら彼の言うことは正しいのだろうと思う反面、そういう解釈の弄り回しは聖書に従いたいと望むばかりに苦しむ人に対してあんまり意味ないように思う。ただ、イエスは絶対に理不尽を言われない、ましてや弱い人間を裁いたりはなさらない、と信じられるだけ。

この映画に出てくるLGBTIの子どもが育った4家庭、どの両親も一度も離婚していないどころか実に仲睦まじいのが非常に希少。ミラクル。
それが実現している背景に、かれらが敬虔なクリスチャンとして結婚を当然のように神聖視していることが大きいと思う。
子どもは親が機嫌よくしていればそうそうグレないので、個別の苦悩はあっても、親ガチャとして見れば大当たりである。一方でその親の信仰がかれらを圧迫する皮肉。
親がどっぷりけがれて子どものジェンダーどころか放置放任の家庭と、深い愛ゆえに子どもに罪の意識を着せてしまう家庭と...どっちのほうがマシだろう。
(もちろん2択ではないのだけど、この街では一度も離婚してない人を非常に珍しく感じるので)

4組の親たちが子どもの真の姿との邂逅を得て映画は終わるが、コンバージョンセラピーにまで通ったライアンは親の理解と引き換えに捨て石になってしまった。それは聖書の上では栄光でもあるのだけれど...。墓標にはまさにそれを言い得た言葉が刻まれている。

はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。(ヨハネ12:24 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』のエピグラフから)

自慢の息子が改めて女性として生き始め、葛藤の塊だったサラのお父さん。
彼女の素敵なパートナーに会った瞬間、「ああ、これが祈りの答えなのだ」と悟ったという。
結婚式で娘をエスコートできる日が来るなんて、と喜ぶ笑顔に涙が止まらなかった。

Happy Pride.

トレーラー。

再び、地元の映画館に収益が入るプラットフォームで鑑賞。
https://watch.firstrunfeatures.com/products/