英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 They Shall Not Grow Old (2018) を見た。ピーター・ジャクソン監督 『ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド 彼らは生きていた』

貴重な映像と音源で綴る、第一次世界大戦を戦ったイギリスの若い兵隊さんの風俗史、生活史。
大雨、スーパーボウルの午後。街の人通りもまばらで、ついに!初めて!映画館1人占めだった。。。
さすがにこれは楽しい、というより映画館で見た意味がないぜ。

意味がないといえば、無駄に3Dで見た。
無駄だなー無駄だなーと思いながら、白黒写真の紙芝居を見ていたら、戦地に入ってからふっと天然色に。まるで、『オズの魔法使い』のように。
価値がありました。
100年前なんて、本当に最近の人たち。
ほぼ少年がふざけ合う姿や、お便所や、シチューや、凍傷の足や、ネズミの山や、折り重なる無残な遺体を、立体カラーで見ることになった。

残念ながら、個人的にはあまり感銘は受けなかった。
「この20分後には亡くなったであろう若者たち」の表情を見ても、ほとんど心動かされないのだ。
悲壮感なく、わりとラフに過ごしているように見える彼らに、人間はすぐに慣れてしまう生き物なのだなあ、と考えていた。

まさに、日常としての戦争。

古い話だが、大河ドラマ『新選組!』に、「緊張感がない、平和すぎ、明るすぎ」という批判が寄せられたとき、佐久間象山役の石坂浩二が、大戦中、焼夷弾が降る中、じいさんだか誰だったかはのんびり風呂に入っていたというエピソードを紹介し、庶民生活は案外そういうもんらしいぞ、と反論していた。
隣で友人が死んでも、自分が近々殺されるっぽくてもなお、死に現実感がない。

クレジット後のメイキングは面白かった。
カラーリングの技術が!と思うし、それも確かにすごいのだが、それ以上に唇の動きを読み、地域語の専門家まで動員した音声の再現に気が遠くなる。
そして、彼らがカメラ目線でじーっとしているのは、たぶん動画を見たことがなかったから、という種明かしですね。
彼らがギリギリ知っているカメラは、写真館のカメラだけ。

ひいおじいちゃん、おじいちゃん、おじさんらを偲んでパーソナルな思いで本作を仕上げたジャクソン監督。
映画を見た人にも、身近な人たちから話を聞いてほしい、という。きっと戦争の記憶を持つ人がいるはずだから、と。

象山先生の話はたぶんこの本だったと思う。Kindle版がないので確認できないけど。

トレーラー。