英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

2024年アカデミー短編映画賞ノミネート作5本を一気見した。

今年度も時間の制約を味方につけたアートがすばらしかった(アンダーソン作品を除く)。 私が気に入った作品順に。■ Red, White and Blue 今日はスーパーチューズデー。身につまされた。 中絶を禁じることの問題点を最も効果的に見せるギミックに翻弄される…

映画 Drive-Away Dolls を見た。イーサン・コーエン『ドライブアウェイ・ドールズ』

聞いてたとおりくだらないのだが、いい意味で身の丈を熟知しているのがうかがえるプレゼンテーションで好感をもった。こういうのを等身大というのだろうか。 ベテランのカメオ出演も度量の深さが感じられてすがすがしい。内輪っぽい臭みがない。 イーサン・…

映画 Origin (2023) を見た。エイヴァ・デュヴァーネイ『オリジン』

激動の2020年に大ベストセラーになったIsabel Wilkerson著Casteの執筆譚を下敷きにしたインスピレーションジャーニー。 刺激的だった。あらゆる問題は、言語化・見える化しない限り絶対に解決できない。日本にもいろいろなカーストがあるよね。 高校時代、定…

映画 The Zone of Interest を見た。『関心領域』#CeasefireNOW

『ファイナル・アカウント』のナラティブをドラマチックに再現してくれた感じ。もう20年近く前だが、ダッハウ強制収容所跡を訪れたとき、小学生くらいの子どものグループが石の上に座ってお弁当を広げていて驚愕したのを思い出した。ポーランドを旅行した世…

映画 All of Us Strangers (2023) を見た。アンドリュー・ヘイ『異人たち』

夢現の意識の流れを描いた作品としては、これまで見た中で段違いに良かった。 ポール・メスカルに負うところがすごく大きい。あの終始コントロールの効いた呼吸。『アフターサン』の若い父親役のイメージを重ねてしまったせいでよけいに良く見えたのかも、と…

映画 American Fiction を見た。トロント国際映画祭観客賞『アメリカン・フィクション』

面白かった。最近見た作品の中では久しぶりに時間を忘れた。『ブラック・クランズマン』や『ゲット・アウト』、『ホワイト・ボイス』にも描かれた、アメリカ社会の入れ子構造の差別を切って見せてくれるのだが、本筋よりもブラックPhDファミリーの描写のほう…

映画 The Boys in the Boat を見た。ジョージ・クルーニー『ボーイズ・イン・ザ・ボート』

胸がすく快作で面白かった。 超教科書どおりの構成と人物配置をはじめ、私の永遠のナンバーワン『プリティ・リーグ』に通じる圧倒的な気分のよさを感じる。 メイン2人の女性関係を省いて、もう少しボートレースの蘊蓄を盛り込んだほうがよかったようにも思う…

映画 Ferrari を見た。マイケル・マン x アダム・ドライバー『フェラーリ』

大変に血湧き肉躍った。お仕事ものは鉄板。 レースシーンも最高にゴージャス。 何かのインタビュー記事で読んだあるエンジニアの言葉「なぜ車がスピードを出せるか知っているか? ブレーキがついているからだ」が頭の中を何度も去来した。ミッレミリアに終止…

映画 The Color Purple (2023) を見た。ミュージカル『カラーパープル』

福音(ゴスペル)のナラティブを触媒にほとばしるシスターフッド讃歌。 原作のわりと大きなエピソードは省いても、主要人物のそれぞれの信仰の言説をしっかりすくってあるのが好き。 神に近づいて若返る、というのは新約のメインテーマのひとつだし。数々のD…

映画 Maestro を家で見た。ブラッドリー・クーパー『マエストロ:その音楽と愛と』

ハリウッドの権威が好むディアスポラ物語で、あーハイハイと言いたくなる。 バーンスタインのバイオや音楽に興味は尽きないが、目下のイスラエル政府(イスラエルではない)powered by アメリカの非道がちらついて作品を寿ぐ気分になれない。トレーラー。

2023年 映画館または家で見た映画ベスト3

気に入った作品順。それぞれ、鑑賞日の日記にリンクしています。 今年の私にとって大きかった映画関連のできごとはふたつ。7歳のリクエストで10年以上ぶりに日本の映画館へ行ったこと。ポップコーンの巨大さはアメリカ標準だった。 それから、リサーチ・スク…

映画 Eileen を見た。トーマシン・マッケンジー is『アイリーン』

毒親脱出物語は好きなのだが、構成のバランスが良くない。 写しすぎに思えるシーンに加えて、メイン2人のビジュアルの相性の悪さゆえ。レベッカの言うとおり、オランダ絵画の少女のようなマッケンジーのたたずまいをひたすら楽しむ。 衣装も各種カーディガン…

映画 May December を家で見た。トッド・ヘインズ『メイ・ディセンバー』

私が知るこの世でいちばんの快楽はpageturnerを一気に読むこと。それと似た体験ができるほどプロットの吸着力が強い映画は久しぶりだーとワクワクしたのだが、後半は尻すぼみ。 ガラかめを真面目ちゃんのナタリー・ポートマンがやるのが適役とも言えるし、つ…

映画 Killers of the Flower Moon を見た。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

面白かった。 Certain Womenのリリー・グラッドストーンが印象的だったので、彼女がメインを張るのを見られるのがいちばん嬉しかった。白人がやってる搾取にjusticeの介入ができるのも白人だけというのはきついね。近所の映画館の最終上映回に行ったのだが、…

繁栄できない原因(シリーズ献金 その23)

日本の教会で礼拝にあずかる機会に恵まれた。 そこで日本のキリスト教人口が1%を超えられない原因の一端を見たので、さばいてるように聞こえるかもしれないけれど事実として書いておく。そのプロテスタント教会は、メガチャーチとは言わないまでも日本では大…

映画 The Holdovers を見た。アレクサンダー・ペイン『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

ウソつかないバートンマンの矜持を描くあたたかなホリデームービー。好き。 バートンのインテリアからボストン各ロケーションまでプロダクションデザインがいちいち素晴らしい。『サイドウェイ』『ネブラスカ』に続いてまた男2人中心のロードムービーか〜、…

映画 Priscilla を見た。ソフィア・コッポラ『プリシラ』

アメリカンメモワールが好きなので楽しみにしていたのだが、退屈。 同じくコッポラの『マリー・アントワネット』と同じ話だった。 ローなまま権威的な庇護体制のもとに入ってしまい、超ヒマなつまらん空しい毎日を送るやつ。ふたりの関係性が中心とはいえ、…

奉仕に伴う神さま特別手当(シリーズ献金 その22)

友人にのっぴきならない急な事情があり、1か月間、高齢のご母堂の送迎を頼まれた。 困ったときに思い出してもらえたのは嬉しかったものの、一瞬「ほかに選択肢ないわけ?」と思ってしまった。 A地点からB地点の30分ほどの送迎なのだが、AもBもうちから車で1…

映画 Anatomy of a Fall / Anatomie d'une chute を見た。2023 パルムドール & パルムドッグ『落下の解剖学』

ちょっと長く感じるが、ユニークで面白かった。 フランスの子どものライツの守り方が興味深い。トリエ監督はサンドラに周囲の人物とは異なる言語を話させることにこだわったらしいが......結局、法廷での証言、子どもとのやりとりに配慮を得られない程度には…

映画 Waiting for the Light to Change (2022) を家で見た。リン・トラン『ウェイティング・フォー・ザ・ライト・トゥ・チェンジ』

スラムダンス映画祭2023の最優秀ナラティブ賞受賞作。 物語のセッティングとプロダクションデザインが好き。 エイミーの白髪の演出が白眉。トレーラー。

映画 She Came to Me を見た。『シー・ケイム・トゥ・ミー』

いやこれおかしいって。 この面子でロマコメだって言われたら、アン・ハサウェイがヒロインなのかな、って思うやん。 彼女完全不要。それどころか、ユニークな美貌が絵的にも邪魔。 ハサウェイは「観客が嫌いな俳優」に名前がのぼりがちだけど、なんでこんな…

映画 The Royal Hotel を見た。キティ・グリーン × ジュリア・ガーナー『ザ・ロイヤルホテル』

本当は怖いワーホリ物語。 うそ。 みんな知ってるアルコール恐怖譚。人間が理性とコントロールを失えば、そこは悪の吹き溜まりになるしかない。 だから最後の処理はよかった。あれしかけがれを落とす手段はないので。 本来はあのあたりも先住民族の聖地だっ…

映画 Fair Play を見た。『フェアプレー』

ダフネではないフィービーを見たくて出かける。興味深いテーマだが(文字どおりfairだし)、パワーハウスの人に、MeTooとパンデミックを経た今でもこういうtoxicな環境はリアルなんですか、とは聞きたい。 私のまわりの金融系2人は、あくまで西海岸の中堅企…

映画 Reality を家で見た。ティナ・サッター x シドニー・スウィーニー『リアリティ』

三者のパワーバランスの小刻みな移動が面白すぎた。 立ち話の緊張感な。 着座して向かい合ったのだったら全然テンションが違っただろうね。捜査対象者の人権がどのように、どの程度に守られているかが垣間見られて感動した。 ウィシュマ・サンダマリさんの事…

映画 A Haunting in Venice を見た。『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』

ケネス・ブラナーのポワロ作品については『オリエント急行殺人事件』のやり口に憤怒したので圏外だったのだが(もちろんナイル川は見てない)、本作は信頼するレビュワーが絶賛していたので出かけた。面白かった。 プロダクションデザインの愉悦に浸った。 …

映画 Bottoms を見た。エマ・セリグマン『ボトムス』

『シヴァ・ベイビー』のエマ・セリグマンがレイチェル・セノットと組んでクィアネス全振り。斬新で小気味よいのだが、設定(周囲の人や学校のあり方など)の変態度が強すぎるのが私向きではなかった。 面白いことになりそう...と観ていたが、ジェフが泣きだ…

映画 Barbie を見た。『バービー』と『Tiny Shoulders: Rethinking Barbie』

昨年のホリデーシーズンから続く異次元の広告投下量に若干白けていたのだが、ベン・シャピーロが「全編wokeのゴミタメ」とキレ散らかしていたので(ガーウィグ作品をあえて見に行っただけでも誠実だと思うが)、見る前から「やってくれたね!」と喝采を送っ…

映画 Oppenheimer を見た。キリアン・マーフィー is『オッペンハイマー』

ドキュラマとして大変面白かったが、『Quo Vadis, Aida? アイダよ、何処へ?』と同じ感想を抱いた。 デカさ、ツオさを希求する「男」なるもの、お前だよ。お前が全部破壊してんだよ。同じ間違いを繰り返しやがって。原爆開発物語ではなく超ハイペースのオッペ…

映画 No Hard Feelings を見た。ジェニファー・ローレンス『マディのおしごと 恋の手ほどき始めます』

くだらないと評判(?)の夏休み映画だが、ジェニファー・ローレンスのファンなので見に行く。 まあ、くだらなかったのだが、トレーラーから想像していたのよりずっといい話だと思った。 長く土地に縛られていた人がついに移動しようとする物語が好きなので…

映画 Asteroid City を見た。ウェス・アンダーソン『アステロイド・シティ』

Wokeの時代の風刺激。俳優をコマのように配置するこの監督の作風は好きではない。 宮沢章夫の舞台を思い出す。でも本作は、同じマスゲーム的演出でもまあまあ面白かった。 たぶん、私にとっては俳優が楽しそうに演じているように見えることがポイントなのだ…