英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Die My Love を見た。リン・ラムジー × ジェニファー・ローレンス『ダイ・マイ・ラブ』

逸脱のプリミティブな痛みを綴る佳作。 金原ひとみが母親アイデンティティの屈折について書いた作品群を連想した。とはいえ、本作の主人公は必ずしも母親業が苦しいだけの人ではない。 序盤はパム、カールを配置することでケアラー役割を負った人々の悩みが…

映画 It Was Just an Accident を見た。パルムドール 2025『イット・ワズ・ジャスト・アン・アクシデント』

ジャファール・パナヒ監督作品。息子のパナー・パナヒ監督のHit the Roadと砂漠シーンの雰囲気が同じ。 大変な勇気を持ってつくられた作品なのはわかったけれど、昨年に続き、カンヌの最高賞に納得いかない。絵面が『ゴドーを待ちながら』みたいだな〜と思い…

映画 Anniversary (2025) を見た。ヤン・コマサ『アニバーサリー』

少しだけ明るい気持ちになったElection Nightあけに。よくある1984的風刺劇。半分現実になっているとはいえ、アメリカのいろいろな意味での広大さを考えるとこうはならんよなと思う。昨晩の結果を見ても。かわいい息子だったジョシュがカルトに染まるにつれ…

映画 The Long Walk を見た。フランシス・ローレンス x スティーブン・キング『死のロングウォーク』

キング原作作品を見るのは『ライフ・オブ・チャック』に続き今年2本目。 編集さんに乾杯。ほぼ全編歩く野郎が写ってるだけなのに飽きないんだよ。キングを信頼しているので、まったく情報を入れないで劇場に行って、「あ〜イカゲームか〜、非現実設定を物語…

映画 The Roses を見た。ベネディクト・カンバーバッチ x オリヴィア・コールマン『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』

初めて予告編を見たとき、「えっ、このふたりが夫婦役? 二回りくらい年が離れてるのでは?」と思った。実際は同年代で驚いたのだが、ローズ夫妻に対して最後まで違和感が拭えなかった。私が過去に見たそれぞれの出演作の干渉であって、完全に個人的フィルタ…

映画 Weapons (2025) を見た。ザック・クレッガー『ウェポンズ』

普段ならまず興味を持たない呪い操り系のホラーだけど、来年公開予定だったのがスクリーニングの結果があまりにも良すぎて封切りが前倒しになった、なんて聞いたら行ってしまうじゃないか。ジュリア・ガーナーも好きだしね。飽きないしクライマックスは圧巻…

映画 Sketch (2024) を見た。セス・ワーリー『スケッチ』

「みなしご」が選ばれて活躍する話。 今の私が見ても残念ながら何も響かないけれど、聖書から連なるこの系譜の物語作品に幼少期は随分振り回されたものだった。「私はなんでみなしごじゃないんだろう...」ってね。あのキラキラグルーは私にとってザ・アメリ…

映画 Together (2025)を見た。マイケル・シャンクス『トゥギャザー』

ロマンスは時にホラー。ようこんなこと思いつくな。監督はアホなのでは(激賞) リアルカップルのふたりが超好演。挿れたはいいが抜けなくなったときの恐怖を、観客も痛いほど体感できる。やはり連想するのは聖書の言うところのカップル。最も原語の逐語訳に…

在外投票でウルついた

先日、ダウンタウンで参院選の投票をしてきた。在外投票は、日本で投票するとき以上に1票の重さを感じさせるシステムだと思う。まず、案内してくださる方の人数が多い。自分の選挙区に配送するための封筒の準備や二重封筒の使用など、説明が必要な手続きが多…

映画 Materialists を見た。セリーヌ・ソン『マテリアリスト』

楽しかった。特に前半。ダコタ・ジョンソンの話し方好き〜!ソフトな口跡がメラニー・グリフィスゆずりよね〜個人的に自意識の漏れ具合が苦手な俳優、というのがいる。日本だったらたとえば佐藤健。こっちだとペドロ・パスカルがそのひとり。だからこの映画…

映画 The Life of Chuck を見た。トロント国際映画祭観客賞『ライフ・オブ・チャック』

すんげえよかった。スティーヴン・キングのアメリカン・ペーソスを久しぶりに堪能した。アポカリプスを描いた映像作品は長期シリーズ含めて星の数ほどあるけど(時節柄か最近また増えてる気がする)いいと思ったことがない。ちょっと予算が足りなかったのか…

Kindle出版の手続きで興味深かったこと(シリーズ献金 その24)

先週、初めてKindle出版をしてみてプロセスの中で面白いと思ったこと、ふたつ。1) コンテンツの作成にAIを使用したか否かを聞かれる。 たぶんKDPのスタート時にはなかった設問だろうと思う。 何そのデータ、私も見たい。2) 審査にはほんとうに時間がかかる。…

映画 Friendship (2024) を見た。ティム・ロビンソンとポール・ラッドの『フレンドシップ』

夏の公開ラインナップに興味が湧かない。ひと月以上映画館に行かなかったのは初めてではないかと思い、無理に見に行った。A24だったらひどい目には合わないだろうと。普通と言っていいであろう人が、劣等感やミッドライフ・クライシスとちょっとしたきっかけ…

映画 The Wedding Banquet (2025) を見た。アンドリュー・アン『ウェディング・バンケット』

面白かったのだが、少なくとも私の見た回はコメディとしては盛大に滑っていた。笑うところで全然笑いが起こらない。何やらB級感のある演出で間が悪い。特にジョアン・チェンが「段取りをつけてあげないとダメな演者」みたいに見えたのは編集のせいだと思った…

映画 The Friend (2024) を見た。スコット・マクギー x デビッド・シーゲル『フレンド』

スコット・マクギー x デビッド・シーゲルが、荒野のモンタナ・パラダイスから摩天楼へ。ニューヨーク・ニューヨーク! ライターズ・サークル! と好物だらけで楽しく見た。犬は、向こうから寄ってきたら撫でる程度で特に好きでも嫌いでもないが、私には珍し…

映画 Black Bag を見た。スティーヴン・ソダーバーグ『ブラックバッグ』

デートムービーにふさわしいオシャンティなスパイ・スリラー。 アクションなし、怒声罵声の無駄吠えなし、上質な手ざわりで落ち着いて楽しめます。プロファイリングの触媒として登場するポリグラフ、高度に実用化されているのを配信でトゥルークライム・コン…

映画 My Dead Friend Zoe (2024) を見た。『マイ・デッド・フレンド・ゾーイ』

ベトナム、アフガニスタンで従軍した二世代3人のベテランの邂逅。とてもよかった。ベースになるのは、Thank You for Your Service、American Sniperなどで提起されたのと同じ、帰還兵の自死は戦地における死亡の数十倍に及ぶ、という深刻なファクトである。…

映画 The Brutalist (2024) を見た。『ブルータリスト』

Destinationは「イスラエル」。フィクションなのに、アメリカを造ったユダヤ人の物語としてノンフィクションをにおわせてるのがちょっとプロパガンディ。コミュニティセンターのデザインのプレゼンテーションで、観衆は日の出による十字架の照射を見せてもら…

映画 Black Box Diaries を家で見た。『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』

Paramount+に課金してる日本語話者の友人宅で上映会。 お互い「えぐいね...」「きもいね...」「うざいね...」しか言ってない。どれも今年こそ口に出さないぞと決めた言葉だったのに。「(語彙力」というネットスラングがあるけど、こういうカバー範囲が広す…

2025年アカデミー短編映画賞ノミネート作5本を一気見した。

今回3本が社会問題のアウトリーチを目的とした内容で、お金払って広告を見に行ったような気分。もちろん、それぞれ映画として完成度が高いし、大勢の人に見られてなんぼなのでノミネートされてよかったと思うのだが、続けてクレジットの前に背景説明のテキス…

映画 I'm Still Here / Ainda Estou Aqui  (2024) を見た。ウォルター・サレス『アイム・スティル・ヒア』

私が接触する範囲だが、人権という先人のhard-earnedの発明を享受しているのに、現大統領に期待する(何を?)在米邦人が結構いる。 こないだも「〇〇人(米国ではマイノリティ)は怠けている」「〇〇人のセレブも、〇〇人は文句言うばかりじゃなくてまず努…

映画 One of Them Days を見た。キキ・パーマー × SZA『ワン・オブ・ゼム・デイズ』

ザ・低予算作品だが、劇場で見てよかった。配信だったら、多少は面白くなる金策行脚に入る前に脱落してたと思うので...。セントラルLAならではの背景と文脈を楽しめる映画。 ただし、そう笑えない。他の観客もひとつのネタ以外はシーンとしてた。不思議だと…

効果的な「避難しておいで」

人に手助けを申し出るにあたり、「何かできることがあったら言ってね」というのは行動につながりにくくて意味ないなぁと常々思っていて [注1]、なるべく「いついつに車を出そうか」とか、「どこそこに買い物に行くけどおつかいある?」とか、具体的に提案す…

映画 A Complete Unknown を見た。『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』

一連のシンガーバイオグラフィー企画の例に漏れず、最終回が迫った連載小説のようなせわしさだが、詩歌の愉悦はたっぷり。それなのに、私の頭の中ではなぜかアマンダ・ゴーマンのThe Hill We Climbが再演されていた。 年明けの就任式にも桂冠詩人が登場した…

映画 Babygirl を見た。ハリナ・ライン × ニコール・キッドマン『ベイビーガール』

若い男を前にコントロールを失っていく女性CEO、The Substanceみたいな話でイライラがつのる。それでも、この布陣と公開時期で、さすがに普通の失脚とか惨劇では終わらないよね?と思って耐えてたら、シスターフッドに守られる大団円だった。女性部下と娘が…

2024年 映画館で見た映画ベスト1

今年は映画館に足を運んだ回数がガクンと減ってしまった。2か月近く州外に行っていたというのもあるけど、すぐに見たいと思うタイトルも少なかったように思う。 気に入った作品順。それぞれ、鑑賞日の日記にリンクしています。★★★★★ 世に出してくれてありが…

映画 Wicked (2024) を見た。『ウィキッド ふたりの魔女』

まったく観に行くつもりはなかったのだが、劇場で体験できてほんとうによかった。 あれこれ見どころを教えてくれたfellow moviegoersのおかげだ。といっても、最後のひと押しになったのはジョナサン・ベイリーが超イイという情報だったのだが。半年前からユ…

映画 Small Things like These を見た。ティム・ミーランツ『スモール・シングス・ライク・ディーズ ほんのささやかなこと』

キリアン・マーフィーの呼吸音で意識の流れを構成した佳作。町が地元宗教コミュニティの悪事のenablerにならざるを得なくなるの、『スポットライト』にも描かれたカトリック教会の性的虐待はじめ枚挙にいとまがない。 私は毎週牧師の説教に1回は「えぇぇ...…

映画 A Real Pain を見た。ジェシー・アイゼンバーグ x キーラン・カルキン『リアル・ペイン 心の旅』

すっごく面白かったし好き。もう11月だが私の今年のベストかも。 ユダヤ系アメリカ人がオリジンを探る旅(収容所含む)といういかにもハリウッド・フェイバリットな筋書きではあるが、緊張の匙加減が絶妙な市井のいいひとアンサンブル、ショパンの国の歴史探…

映画 Anora を見た。ショーン・ベイカー『ANORA アノーラ』

大好きな『フロリダ・プロジェクト』のショーン・ベイカー作品。 ずっと「これがパルムドールぅぅぅ...?」と思いながら見ていたのだが、ふりしきる雪の中の車内のラストカットで突如として名画に豹変する。終わりよければすべてよしのフォース。人同士がつ…