映画
イギリス語の愉悦に浸れる作品。 当然イシグロ脚本だという先入観のせいなのだが、『日の名残り』を見ているようであった。パ〜っと楽しくやってみようぜチャプターはほんっとに楽しくなさそうで、ミス・ハリスとの午後の輝きが映える。 上映前に寄ったピザ…
昨年成立したエメット・ティル反リンチ法の発端の物語。 1955年にはこのようなリンチ事件が大きく報道される程度には進歩していたのだなと思ってしまった。 そしてこの時代でも、人種差別をメディアの中だけの人ごとだと思いながら育ち、そのノリで他州に行…
関心のある題材だったのだが、映画は退屈だった。 最初と最後のキャプションが余計すぎたと思う。あれのせいで一気に説教くさくなった。 この内容だったら、一幕劇に脚色したほうが面白そう。たぶん、敬虔なキリスト者こそ、「天国に入れないぞ〜」という脅…
何も起こらない映画を久しぶりに見て新鮮だ。30 somethingのつらみギンギンのメスカル、いい。共感した。 こんな素敵な子どもの父親になれても苦しいのはすごく理解できる。 祝・アカデミー主演男優賞ノミネート。ポラロイド写真やブラウン管の像のギミック…
エウリピデスの『メディア』を下敷きに、実際にあった子殺し事件の解釈を試みるインテンスな女性論。 舞台で見たい感じ。 白人様が「洗練されている」「教養がある」と異様に絶賛するローレンスのフランス語に浸ることができる。ローレンスの母親、ごくわず…
トム・ハンクスが4回自死をはかって連れ合いの霊(だよね)に阻止される話。 甘々脚本だけど、charming enoughなファンタジーだった。 マリソル(Mariana Treviño)がとても良かったが、彼女が喋るたびに後ろの観客が鼻をフガフガさせながら爆笑するものだか…
気に入った作品順。それぞれ、鑑賞日の日記にリンクしています。 スケールは(c)文春シネマ(「ていうか、見たっけ?」「外部要因により留保」を除く)。★★★★★ もう最高!ぜひ観て!! Emily the Criminal 『エミリー・ザ・クリミナル』 Compartment No.6 『コ…
ネタばれはありません。『ビッグ・シック』の監督がオーシエロのメモワールを映像化するということでとても楽しみにしていた作品。 もう少しドタバタしてるかと想像していたのだが、よい意味で裏切られた。 トレーラーから受ける印象よりはるかにLow keyの素…
人喰いカップルのアメリカンロードトリップ。現実面の多数の突っ込みどころは目をつぶるとしても、全体的に作り手が人間の禁忌を扱いかねている感じが歯がゆい。 カメラの後ろでえずいてたんじゃないだろうか...。もちろん、ホラーだとわかって見に行ったの…
1950年、朝鮮戦争のさなか。海軍航空隊の史実に材を取った物語。優れた活劇なのだが、グレン・パウエルが主演していることもあってか、『トップガン』とかぶってる映画と思われて非常に損をしている。ジャンルからして全然違うけど、あえて「海軍パイロット…
スティーヴン・スピルバーグの8ミリカメラを携えたComing-of-ageストーリー。小学生のときに読んだスピルバーグのゆるい伝記の内容が頭にあったのと、各誌絶賛レビューの雰囲気から、『リコリス・ピザ』『ラ・ラ・ランド』みたいな内輪受けかなぁ...と萎える…
とても面白かった。PLAN B作品にハズレなし。 2016年からの背景、記者たちのプライベート(というか彼女たちに完全なプライベート時間はなきに等しいのだが)を織り込んだ構成に拍手。冒頭の「声をあげたのに大統領選はあの結果かよ」の呆然。 私もあの日は…
アイルランド、架空の辺境の地のマッドネスな人間模様。 照明明るめの『ライトハウス』。荒波に現れる架空の集落の生活を眺めながら、社会は複雑になりすぎたよなあと考えていた。 屋根の下で暮らすためだけに稼がないといけなくなったなんて。視線の定まら…
当たりクジを飲み尽くしてしまったレスリーがささやかな夢を取り戻すまで。 ひなびたアメリカの町のスケッチが緻密で、好きな物語だ。ダレンがジェームスに疑いを告げたと思われる工事現場の遠景のシーン、大変スマートでよかった。スウィーニー、ナンシー、…
いかにもCVSで売ってるペーパーバック(装丁にストックフォト使ってるやつ)にありそうな話。 眠っているような海辺の街を楽しむ映画。去年から知人のパートナーがアル中でリハブに入っている。 アルコールはいつでもどこでも買える分、一番闘いにくいと聞い…
よかった。 ケン・ローチみたいな作風なのだが、希望があって。 ニュージーランドの児童福祉の介入方法が垣間見られるのも興味深い。と言ってもカリフォルニアとそんなに設計思想は変わらないようだが。八方塞がりの中でどこに光を感じたかというと、最後に…
ダホメ王国のAgojie(女性兵士集団)、奴隷貿易の歴史への関心を開く作品。 すばらしいパフォーマンスだけれど、いろいろなところがちょっとずつ寸止めで歯がゆかった。 それからこれは完全に個人的な問題なのだが、ファンタジー以外の屋外セットというのが…
再びモンタナが舞台のスリラー。 寒々しくて絶品。これまでも何度か書いたが、私は私有地というシステムを疑問に思っている。 本作は、土地を自分のもんにしたがった人間の罪の帰結の物語。 サンドラもその罪からは自由になれないでいる。土地は地球のものよ…
Speak No Evilを見た直後だったのもあって、余計にかるっかるのプラスチック脚本に見えた。 ナメた邦題がこの上なくぴったりだ。 ジョン・チョーを楽しむだけの映画。私は彼が出ている作品に興味をひかれるけど、どうも血の気の多いおっさん役ばかりではない…
苦しい。すごくきつい。(ほめてます)これはフィクションだ!悪に魅入られるアダムとイブのメタファーなのだ!と自分に言い聞かせなければならないほど。 救いを求めて、ビョルン&ルイーズ役の普段の笑顔の写真とか探してしまった(サンダンスでチョケてる…
映画体験としては退屈だった。『シェイプ・オブ・ウォーター』みたいな後味の作品。 上映前の挨拶映像でミラー監督が、映画館で見てくれてありがとう、シアター上映を想定して作った作品だから...と言うのだが、シアターで見なくてもいい。なんならpodcastで…
大変面白かった。 久しぶりに劇場で拍手が起こるのを聞いた。冒頭、オーブリーの小鼻芸で一気につかまれ、シュールなエンディングまでもう「知ってる」風景ばかりで...。 エミリーもユセフもすぐ隣りにいるんだよね。モチーフになっているのがどう見ても割に…
これまでダイアナ妃や英国王室に材を取ったフィクションをいろいろ見てきた。 The Crown、The Queen、Spencer... 比べられるものではないが、そのどれよりもはるかに面白かった。夫妻の姿だけでなく、「そのとき」の一般市民の様子が多数盛り込まれ(スマホ…
South by Southwestで好評を博したコメディ。 面白かった。好き。21世紀のミセス・ダウトは物理的な制約が少なく、妄想をいくらでもかき立てられるので危険度が高い...。 テキストの向こうの人物の表現、The Girl From Plainvilleも似たようなことをしていた…
信頼するレビュワーたちが揃って「悪くはないけど、監督の過去の秀作(Get Out、Us)に比べると...」と言葉を濁す。 確かに1度見ただけで鮮明にキーのせりふを(ルピタ・ニョンゴの"We are Americans"!)、恐怖の感情を記憶している2作に比べると、とっ散ら…
『ショコラ』『ハイ・ライフ』などに続く、クレール・ドニ x ジュリエット・ビノシュのコンビ作品。 マメシャトルの『ハイ・ライフ』はとにかく後味が悪かったのだが、本作はレビュワーの評価が異常に高かったのと、現代劇だということで(みんなマスクをし…
素敵な拾い物だった。 マンガのようなヴィランズにいいひとたち、そして魔法のドレスが続々登場するディズニーアニメのようなプロットが楽しい。 ただ、パリの風景を楽しめる映画ではなく、あくまでハリスおばさんが夢みるところの「パリ」を箱庭内で撮影し…
『トイ・ストーリー』はろくに見ていないのだが、クリエイターがかなり闘った作品だと聞いて3D上映館に行く。 おもしろかった。 先週見たばかりだったせいもあるが、新『トップガン』と同じ話やんと思った。 失った同志の子孫の助けを得て過去の失敗を乗り越…
よかった。 これは見といたほうがいいのかも?と思わせてくれた多くのプロアマ批評家の人たちにありがとうと言いたい。 1作目の公開時には生まれていなかったであろうわっかい観客たちが興奮しているのも素敵だった。ちょっと『アポロ13』みたいだったよね。…
1970年前後、Roe v. Wadeの判決が下るまで中絶を支援した活動家グループJaneの記録。 Happeningに続いてタイムリーな公開。 (母親に生まれる前の子を殺す権利などあるものか、と説教する神父の動画に続いて) It's not a theological argument. It's a put-…