英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画

映画 Happening / L'événement を見た。アニー・エルノー原作『ハプニング』

あまりにもタイムリーな全米公開。 1960年代のフランスで望まぬ妊娠をした学生が地下で中絶を遂げるまでを描く。昨今の状況に限らず、男性システムによる女性の体の支配についてもう次々と思い起こされて100分間ずっと腹の中で怒っていた。全米の赤い州で実…

映画 Hit the Road を見た。パッナ・パナヒ『ヒット・ザ・ロード』

大変いい映画だった。「いつ始まるのかなあ」と思ってるうちに終わった。そう思わせるシーンの積み重ねだった。 ずっと引きの別れの場面は影絵劇のよう。息を切らしながら息子と車の間を往復するお母さん、しばりつけられて暴れる弟。家族4人それぞれにすば…

映画 Petite Maman を見た。セリーヌ・シアマ『プティットマモン』

子どもが主人公のファンタジーながら一貫した突き放し感がひんやりするグリ―フケアの佳作。 『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督作品。双子、ガニマタの角度まで同じで本当にDNAは驚異だよ。鑑賞中、退屈したわけではないが、70分で終わるという事実に…

映画 Paris, 13th District / Les Olympiades を見た。『パリ13区』

まあまあ面白かった。 ただ、これがたとえばシカゴが舞台で全編英語だったら不思議と退屈になったと思う。 パリ13区である必然性は言語だけ。実に魅力的なヴォイスだった。フランス語を勉強するときには教材に使いたい。私にとってフランス映画の特徴といえ…

制作現場の搾取がにじみ出ている映画

暴力やハラスメントを許す環境で作られた作品は見ればわかる、という話がある。 映画は監督のメディアなのだから当然と言えば当然だろう。 いくつか、鑑賞中に「現場で搾取が行われてそう」と感じた作品を思いだしたのでメモしておく。後で追加する。『ダン…

映画 Cow を見た。アンドレア・アーノルド『カウ』

あの『アメリカン・ハニー』を撮ったアンドレア・アーノルド監督が乳牛の生涯を追ったドキュメンタリー。各所で配信しているが、イースター前の断食中でもあり、これは家では集中できないやつ、と思って劇場で瞑想してきた。出産時、人間3人がかりで子牛を引…

映画 Everything Everywhere All at Once を見た。『エブリシング・エブリホウェアー・オール・アット・ワンス』

レジェンド、ミシェル・ヨーとジョナサン・キー(ショート・ラウンド!)の粘り強いキャリアを寿ぎに。作品は苦痛に近いほど苦手なやつだった。 「2 Everywhere」とキャプションが出たとき、え......まだ......半分......と軽く絶望した。これを楽しめるほど…

映画 Nitram を見た。『ニトラム/NITRAM』

豪州史を動かしたタスマニア島のマスシューティング、ポート・アーサー事件の犯人のある人物像。 秀作。初めて見る俳優さんばかりだったが(たぶん)、全員素晴らしかった。彼のような「無敵の人」をどう包摂すべきなのかは分からない。フロリダの事件の犯人…

映画 The Outfit を見た。グレアム・ムーア『アウトフィット』

『イミテーション・ゲーム』の脚色で成功を収めたムーアの初監督作品。 戦争直後、シカゴでギャングたちをメイン顧客にスーツを仕立てるビスポーク「カッター」の企みを描く一幕劇。面白かったし、マーク・ライランスはとても良かった。 が、私のギャング・…

映画 Great Freedom / Große Freiheit を見た。カンヌ2021「ある視点」部門審査員賞『グレート・フリーダム』

第2次大戦後、強制収容所から解放されたと思ったら刑法175条(男性同性愛を禁じる法律)違反で刑務所に直行、何度も刑期を務めることになった男性の友情の物語。長い。 法律廃止前のエピソードは愛に出会うところも含めてほぼ刑務所内で完結しているので、社…

2022年アカデミー短編映画賞ノミネート作5本を一気見した。

ドキュメンタリー、アニメ以外の短編映画を腰を据えて見るのは12年ぶりである。友人の映画学校卒業式で数本卒業制作を見たのが最後だ。 これからも目にする機会はほとんどないと思うが、これはすごい世界だ。先の卒業制作短編は長く感じた上、何も覚えていな…

2022年アカデミー短編ドキュメンタリー映画賞ノミネート作5本を一気見した。

今年は4/5本が米国が舞台の米国作品だったせいか、粒が揃いすぎているというか、ズレを感じて問いが深まったり、新しい世界が広がったりした作品はなかった。それでもなんとか、印象に残った順に。 ■ The Queen of Basketball『ザ・クイーン・オブ・バスケッ…

映画 Marry Me を見た。J. Lo × オーウェン・ウィルソン『マリー・ミー』

ゴージャスなバレンタインムービー2022。 一昨年のスーパーボウルのハーフタイムショーを見たときと同じ印象。 J. Loは一緒に仕事をすると妙なエネルギーが湧いてきそう。 一度、West LAで見かけた彼女はかなり小柄だったのだが。ところで、ポップスター業界…

映画 Brighton 4th を見た。トライベッカ映画祭最優秀国際作品賞『ブライトン4番街』

ごくシンプルな物語。 イエス・キリストの生涯を端的に知りたいと思ったら、本作を見ればいい。 イエスの業績はこのお父さんのしたことと全く同じ。 自分の命とひきかえに私の借金を返してくれたわけ。闘いの後、お父さんは「これで借金は帳消しだな?」と確…

映画 The Worst Person in the World を見た。ヨアキム・トリアーのオスロ三部作『わたしは最悪。』

去年、宣伝のスチールを見て「シャツが素敵!」と思って注目した作品。 ↓これな。 Neon主人公のモラトリアムに共感したし、2時間楽しめたけど、ここまで絶賛されている理由は分からず。 『WAVES/ウェイブス』でも感じたことだが、このプロットでがんを発症さ…

映画 Compartment No. 6 を見た。ユホ・クオスマネン『コンパートメント No.6』

A Heroと並んでカンヌ2021グランプリを獲得した作品。 ラフで生々しい筆致を堪能した。 食事をしながら喋っているローラの口元にずっとソースがついてるとか、別れに言葉がなく遠景で視線を交わすだけとか、そういうところ。 こういう映像を見ると、ハリウッ…

映画 Flee/Flugt を見た。ゴッサム・ドキュメンタリー賞『フリー』

緻密なデリバリーの秀作。 ストリーミングが始まっているけど、あえて劇場に見に行ってよかった。 トゥイーンを意識的に排除したアニメは照明がものすごく適切で、解像度が高いほど情報量が多いのは事実だけど、それが必ずしも真ではないことを思い知らされ…

映画 The Fallout を見た。ミーガン・パーク『ザ・フォールアウト』

興味深い題材の青春ドラマ。 尻切れトンボなエピソードや軽すぎる大人たちが気になるが、90分ではこれが限界だろう。本人のみならず、周囲の近しい人たちの正常性バイアスを解くことの難しさな。 特に「うちの子はそれほどダメージを受けていない」と思いた…

映画 A Hero (2021) を見た。カンヌ2021グランプリ『英雄の証明』

宣伝美術のイメージに反してシーラーズの庶民の日常を描いた作品で、とても面白かった。聖書にもたびたび出てくる「取税人」のつらさを思う。 相手を信じてお金を貸しているのに、なんだか悪者になってしまうという...。 本作の「取税人」にはかっこいい娘さ…

映画 Madres paralelas/Parallel Mothers を見た。『パラレル・マザーズ』

この映画がクィア・ライオンにノミネートされた(カテゴライズされた)のは疑問。 ハリウッドで評価が高いのも疑問。 たまたま数人マイナーな性的指向の人が出てきたものの、あくまで血縁の妙をテーマにして失敗した作品としか思えなかった。脚本が非常に粗…

映画 Licorice Pizza を見た。ポール・トーマス・アンダーソン 『リコリス・ピザ』

始まりは悪くなかったが、「セレブ」がちらほら出てきてガソリンが在庫薄になってくるあたりからドラマチックすぎて退屈という...。この作品の評価が妙に高いのは、批評家のバックグラウンドの偏りでかさ上げされてるからだと思う。『ラ・ラ・ランド』のとき…

2021年 映画館または家で見た映画ベスト4→3

気に入った作品順。それぞれ、鑑賞日の日記にリンクしています。スケールは「ていうか、見たっけ?」以外文春シネマのを拝借。 4月以降、映画館で見られた作品には<映画館>のラベリング。★★★★★ もう最高!ぜひ観て!! 私が見た映画の中では今年は該当作品な…

映画 The Lost Daughter を見た。マギー・ジレンホール × オリヴィア・コールマン『ロスト・ドーター』

オリヴィア・コールマンのartsを味わう作品。意識の流れの書き込みが素晴らしい。 ニーナまわりの人々への屈託、映画館で沸いた怒りからダンパで超笑顔になるところまで矛盾がない。平気な顔で良くないことをしても狂気は感じない。(私の趣味としてサイコパ…

映画 Drive My Car を見た。濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』

【2022 追記】私は下記のとおり感動して何度も見てしまったのだが、イ・ユナ役の俳優さんが手話ネイティブではないと知って完全にさめた。少なくとも米国の観客は彼女を耳は聞こえるが普段から手話を使用している俳優さんなのだと思って見ていました。収奪だ…

映画 Benedetta を見た。ポール・バーホーベン『ベネデッタ』

こ、これは...... 絵づくりがおバカすぎる。 超ポール・バーホーベン。さすがポール・バーホーベン。80代にしてなお貫かれるフェティシズム。実際、ちょこちょこ吹き出してる人いたし、ラストシーンは失笑が漏れたし、そういう映画ってことでいいんだよね? …

映画 King Richard を見た。ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ一家の『ドリームプラン』

面白かった。ウィリアムズ一家役7人の空気感がこなれていてとてもよかった。たまたまコンプトンにほど近い映画館で見たところ、前の席に2時間半ずっと背もたれに寄りかからず背筋を伸ばして鑑賞している黒人男性がいて気になった。理由はわからない。ただ腰…

映画 House of Gucci を見た。リドリー・スコット『ハウス・オブ・グッチ』

もとの話はドラマチックなのに、この退屈さはなんなのだ...。 本作の肝は殺人の動機の仮説を提示することのはずだが、そこの語りが弱すぎる。 一番印象に残ったのが最後の史実のキャプションなんですけど。伝記・回想記好きだから思うのかもしれないけど、実…

映画 C'mon C'mon を見た。 マイク・ミルズの『カモン カモン』

プロットを読み、アメリカのロードムービーファンとしてはかなり楽しみにしていたのだが、好きな脚本ではなかった。言葉でしゃべりすぎ。 インタビュー音声、書籍のモノローグ、絵本の読み聞かせ、ドビュッシーなどを媒介にくどくどと説明しまくってしまう油…

映画 The Power of the Dog を見た。ジェーン・カンピオン × ベネディクト・カンバーバッチ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

ジェーン・カンピオン怖いんだけど泣 『ブロークバック・マウンテン』と同じ後味。 主人公、この時代のこの土地に生まれたためにほんとにしんどかったね、最後まで何もいいことなかったじゃん...ってすごくかわいそうになるやつ泣 ↓↓ ホラ、苦しそうすぎる泣…

映画 Eternals を見た。クロエ・ジャオの『エターナルズ』

今更ながら。まったく興味なかったのだが、主に日本のムービーゴーワーたちから流れてくる感想を読むうちに、ドラマやコメディでしか見たことのない個性派スタアたちが必死でヒーローごっこするところを見たい、クロエ・ジャオ監督の挑戦を寿ぎたいと思うに…