英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Marriage Story を見た。スカーレット・ジョハンソンとアダム・ドライバーの『マリッジ・ストーリー』

丁寧なクラフト。
かなり精緻ながら、指紋の跡はしっかり残っているような。
映像やセリフで感情が動かされた自覚がないのに涙が流れているのに気づいてビックリした。
魂ではなく、霊が本物にふれて震えたのでしょう。

ひたすらスカーレット・ジョハンソンとアダム・ドライバーの芸を鑑賞する映画なのだが、NY/LA芸能界お仕事モノ、「離婚業界」モノとしても実に面白い。
弁護士費用とか親権とか州の法制度の差とか、チェックを切るシーンまであってめちゃ具体的やぞ。
私も「カリフォルニア州では結婚しないほうがいい」と何度も言われたけど、その理由の一端が分かるよ...。
(もちろん、それは離婚の可能性を前提にした助言だったわけで、どれだけプラグマティックなのかという話だが)

友人たちを見ていても思うけれど、これほどいろんな意味で消耗するのに「今の生活を変えたい」という理由で離婚を選ぶアメリカ人は本当にエネルギッシュだ。
人生に対して貪欲というのだろうか。
観客の前のめりぶりを見るに、この街に"I've been there" な人がどれだけ多いかを思い知らされた。

何人か出てくる弁護士が全員達者。気まずいオーラ全開の家庭調査員の微妙さもかゆいとこついてる。
かわいそうな役が続いていたローラ・ダーンがノビノビとやり手を演じていて面目躍如。良かった。

愛の始まりがよみがえるラストの爽やかさは唯川恵の小説『燃えつきるまで』の結末に似ていた。
その記憶は決して朽ち果てない、いや忘れてたまるかという誓いにも似て。

スペースという言葉がひとつのキーワードだったが、LAの茫漠とした広さを嫌ってポートランドに移住した知人が何人かいる。
逆に「この生活費でこのスペースはナイわ」とオースティン、ヒューストンやフェニックスに移って行く人も。

ジョハンソンの衣装が平凡ながらステキでマネしたいと思った。
NordstromとTargetで揃いそうでリアルなの。
リアルついでに言えば、ドライバーが立って済ませる適当なランチにコスコっぽいチキンを食べていたのもあるあるでした。

本作はNetflixで12月6日全世界公開です。

【朗報】本作では遮られてしまったアラン・アルダのヘアドレッサーネタのオチはこちらで。

トレーラー。