みっちりと面白かった。
映画として、Another American storyとして。
無邪気なルース博士は幾重もの文化的基盤を持つ素晴らしい言葉つかい。
ヘブル語、ドイツ語の素地にフランス語、そしてアメリカに移民してから覚えた英語でラジオ、テレビ出演までこなしてしまう。
このドキュメンタリーの中だけでもあらゆる言語を操る。そりゃボケにくいわ。
私がキリスト教徒になってからたまげた聖書の言葉のひとつ、ヘブル語の「ヤダー」がセックスセラピストの博士の口から語られて嬉しかった。
こまごました相談の回答よりも、「ヘブル語で『知る』とはセックスの意味でもあるんです」の一言で解決することのほうが多いかも。
旧約聖書の中で「知る」(ヤダー)の目的語が人であれば、1対1の深い交わり、夫婦間と同様の性的交わりを意味するのです。
人は、その妻エバを知った。彼女はみごもってカインを産み、「私は、主によってひとりの男子を得た」と言った。(創世記4:1)
私たちは、知ろう。
主を知ることを切に追い求めよう。(ホセア書6:3)
これほどまでに主と深い交わりができるのは幸せなことです。そして人間のセックスも神聖。ほんと、適当に考えちゃいけないです。
「ホロコーストの孤児」としての道程、初めてのセックス、3人の夫との生活がどんなだったか(2人とはなぜ別れたか)、学究生活の歩み。
何よりも、ずっとアメリカに行きたかった、アメリカがホームだと知っていた、というのが私には感動的だった。
その理由は映画では語られなかったけれど、アメリカは戦争を乗り越えた彼女にとっての「西」だったのでしょうか。
そして、随分と多くの長生きのお友達に恵まれていることよ。
90になって初恋の人と親しく話ができるとか、華すぎませんか。
隣席のカップルの男性が博士のドイツ語訛りが聞き取りにくいのか、単に耳が聞こえにくいのか、しきりに女性に文末ばかり聞き返していた。
(ついでに博士がdiscouragingな経験を語るたび、いちいち心を痛めてOh, no...と嘆いているのがかわいかった)
日本人の私の耳にはむしろとても分かりやすい英語でした。
トレーラー。