映画
最近ではなく、パンデミックの足音がひたひたと近づいていたクリスマスのころの話。アンネ・フランク・ハウスにほど近いプランセンフラハト沿いにその映画館De Uitkijkはあった。 間口の狭い正面は小さなカフェになっていて、窓口らしいものはない。カフェの…
これほど白黒で見せることに意味のある作品があるだろうか。 実は見る前は、ルース・ネッガ(『Loving』以来、とても好き)をパッサー役として説得力を持たせるためにやむなく白黒にしたのだろうか、などと疑っていた。いろいろ間違っていた。すみませんでし…
秀作。マルタの賢者の贈り物。 息子の命を救うためにEUにアイデンティティを売った父親は、同時に息子に語る物語も失ってしまったことに気づく。ルッツの舳先でにらんでいる目をくどいほど映すカメラ。 あれだけ船の守りがいかついのに、さらにカトリックの…
アーティストのうっすら狂気モノ。創作上のスランプをlow keyで描く。イングマール・ベルイマンが暮らしたフォーレ島のアーティスト・イン・レジデンスを体験できる。 あまり島自体に随一の魅力は感じられないけど、いつも風が吹いているのがいい。劇中劇の…
モントリオール! モントリオール! モントリオール!カナダの都市のいいところはふとフランス語が漂ってくるところ。 ハイスクールでフランス語を履修した子どもたちが夏休みに隣国へプチ留学に出かけているのを常々羨ましく思っている。 私もやろうかな。 …
Sooo many things going on... でもドラマとして面白かった。家父長制に抵抗する女性たちが精神病院に突っ込まれた19世紀の物語。 ヨーロッパには旧精神科病棟のユースホステルやホテルがいくつもある。その部屋を思い出しながら見た。霊が見える奴はヒステ…
閲覧注意作品。 アブグレイブ刑務所の捕虜虐待の記憶を背景に『魂のゆくえ First Reformed』と同じ罪の煩悶の軌跡をなぞる。 実際、『魂のゆくえ』で見たシーンが頻繁に出てくる。 ウィリアム・テルの病み描写はまさにデジャブ。映画は面白かった。 ポーカー…
この題名は見に行かないわけにはいかない。 パンデミック・フレンドリーな佳作だった。カリニョもアダムもマチュアで素敵。「あなたが思うところの私ってどんな人なの?」はい、私も男に殴られたんだ...とまず思わされたよ。 実際、日本の会社員時代、自宅ト…
脚本を中心に非常に多方面に配慮を張り巡らした快作だと聞き&オークワフィナを見たくて行った。 良かった。 かなりの部分がしっかり中国語劇(英語字幕)なのも、シャン・チーは親の教育方針で4か国語できるんだヨン、という設定も非常に面白い。 スマッシ…
きこえる喜びが胸をみたす素敵なトリート。 演者全員に拍手。好きな俳優がどっと増えて嬉しい。 折り目正しい教科書どおりのつくりが心地よい。 音大入試オーディションのルビーの「歌唱」はメッセージの音量に圧倒されてむせそうになった。最後にルビーが送…
はい駄作。 ショーン・ペンも、ショーン・ペン的ろくでなし像も大嫌いなのに、出先の調整で見てしまった。これしか時間合うやつなくて...。 冒頭5分の異常に大音量の楽曲で「あぁ、もうダメ...」と思った。全般に音楽の趣味も入れ方もイモ過ぎ。 脚本も非常…
リアルタイムでは番組や著書にふれていなかった私にとって、アンソニー・ボーディンはうつに苦しんだ有名人というイメージが強い。 実は彼が亡くなる3日前に出たケイト・スペードの訃報のほうがショックで、「この2人を自死させるアメリカ社会やべえよ」、Th…
詩で綴るLAダウンタウンの西側地区。大変dopeでよかった。 書いてパフォームするのが、アマンダ・ゴーマぢおンを含むアンジェリーノの詩のスタイル。 多面体のこの町の中でも「知っている」と思えるシーンがいくつかあった。『エイス・グレード』と同様、原…
一言で言うとEw。 元ネタのツイートシリーズが2015年らしいが、既にうんざり感あり。 最先端のミームは高速で滅びる。Zola ゾラテイラー・ペイジAmazonゾラとステファニーの生々しい連れションシーンを見て思ったこと。 最近、日本のジャーナリストが男子ト…
なぜAfro-Latinxがいないことにされてる?との論争ひとしきり、さめた目で鑑賞。 楽しかった。 よくこの長さで押し切った。マーケティングのプロセスにパンデミックが影響した? プロットは少々理屈っぽい。イン・ザ・ハイツ(字幕版)アンソニー・ラモスAmazo…
北村紗衣氏が面白かったと言っていたので、小説→映画を一気にさらう。 ワクチン2nd doseの後は具合悪くなった、1日寝込んだ、と言う知人が多かったので、ビビッて予備日にしていた今日、ひたすら水分を摂りながら見る。おかげで一切変調なしで24時間過ぎた。…
英語字幕で鑑賞。 perpetratorという言葉を覚えることになる。 法的、社会的に「戦犯」と定義されないにしても、ホロコーストにかかわってしまった一般人enablersの最後の証言を集めたドキュメンタリー。 何人か否認者も出てくるので、閲覧注意である。作品…
エピソードIが良すぎて、あとの3つは印象が薄いどころか蛇足にすら感じた。説明するのが難しいのだが、エピソードIVの医学生と医師の車中のトークを見ていて、不条理に満ちたコンテキストの中にいてこの会話の内容を自分が分かるのはなぜだ...という不思議の…
スコットランドの荒涼とした島で辛抱強く時を待つ難民申請中の人びと。 ――という興味深い枠組みだが、演出が苦手すぎてあんまり頭に入ってこなかった。どんな演出かというと、20年ほど前に新宿・中野・下北で過剰に賞賛されていた不条理劇みたいな構成と空気…
ついに!映画館が戻ってきたYO! 去年Straight Upを見て以来なので、実に14か月ぶり。 よくぞ持ちこたえてくれた。 ここ以外の行きつけ2館はつぶれてしまった...そして、本作は映画館復帰作としてぴったりだった。 私よりももっとセサミになじんできたであろ…
たいへんよかった。 不治の病に向き合う人間をモチーフにした映画は数あれど、少なくとも日米にこういう断絶ギリギリの絶妙な距離感(対病気でも対人でも)を描ける人はいないのでは。 北欧の徹底したほの暗さも、この人たちの他者への敬意のはらいかたを浮…
ギャレット・ブラッドリー製作・監督作品の感想。
ボスニア作品、ヤスミラ・ジュバニッチ監督『クオ・ヴァディス、アイーダ?(2020)』の鑑賞日記
エマ・セリグマン長編デビュー作「フェミニズム・コメディ」『シヴァ・ベイビー』の感想
ぐいぐい伝わるローデータ・ドキュメンタリー。 ホワイトハウスから17ブロックの界隈に暮らす家族の20年を監督と本人たちが撮った。場所柄、2回の大統領選の夜の描写もあるのだろうな、と思ったのだがとんでもなかった。 終始「政治ナニそれ食えるの?」とで…
トール・フロイデンタール監督、チャーリー・プラマー主演。統合失調症に苦しむ少年の青春を描いた作品。
フローリアン・ゼレールの手によるアンソニー・ホプキンスの優れた「一人芝居」。これまでに出会った、そして今まわりにいる認知症患者のいろいろなシーンが次々に掘り起こされること必至。 肉親については、死別して悲しみに耐えるよりも、認知症を患ったか…
ダリウス・マーダー監督、リズ・アーメッド主演。アカデミー作品賞ノミネート作。
ブリテン諸島の美しい風景の中で繰り広げられる母娘の復讐劇。 「ジュリー」の登場で自分が幸運な人生を送ってきたことに気づいた悪者、最期までラッキーなのだった。 娘が獣医学生でよかったな怒キャンパスレイプ未遂のエピソード、現場を押さえられた学生…
大統領就任式に登壇した桂冠詩人アマンダ・ゴーマン氏が、朗読の前にとなえるというマントラ。 この映画ではこのマントラが指す系譜、ファミリーツリーの意味の片鱗にふれられる。 I’m the daughter of Black writers who are descended from Freedom Fighte…