英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 All of Us Strangers (2023) を見た。アンドリュー・ヘイ『異人たち』

夢現の意識の流れを描いた作品としては、これまで見た中で段違いに良かった。
ポール・メスカルに負うところがすごく大きい。あの終始コントロールの効いた呼吸。『アフターサン』の若い父親役のイメージを重ねてしまったせいでよけいに良く見えたのかも、と言ったら失礼かな。

シンボリズムとリアルのえぐみが共存するプロダクションデザインが白眉。

昨年末に他界した山田太一の小説『異人たちとの夏』の骨組みを借りた物語だが、中野翠あたりが「なぜ同性愛なのか」とか言い出しませんように。

平日マチネ、14ドルで鑑賞。

1988年の大林宣彦作品と見比べると、ふたつの世界の行き来を見せるギミックの違いが面白い。
大林版は花やしきのお化け屋敷のようだが、『異人たち』は超現象を直に描写しないことで洗練されて見える。
たとえば、
<両親との別れ>
今半で「3名様」を通した中居さんを人払いしたあと、西日がさす中、両親は文字通り消えていく。
VS.
ダイナーでファミリーミールを注文、「多いですよ」とサーバーに言われる。ひとりぼっちの主人公の卓上には3つのドリンクだけが残される。
<生気を抜かれていく主人公>
白髪1本から始まって急に目の周りが黒くなり、最後は本人とわからない特殊老人メイクで現世の人々に心配される。
VS.
熱や咳が出てきてきて亡霊たちに気遣われる。
<恋人の種明かし>
えっれえことになる。
VS.
遺体の一部が写るだけ、あとは寄り添って静かに眠りに落ちる。

トレーラー。

メスカルの今回の役作りのニュアンスについては心理学徒でもあるポートマンがうまいこと言葉にしてくれてます。