英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Frankie を見た。イザベル・ユペール is 『ポルトガル、夏の終わり』

Find it before you look for it.
なんてことはない作品だけど、最近、自分では大事だと思っていたもの2つ同時に失ってやや荒野に足を突っ込んでいた私にはささやかな慰めになった。
シントラの背景にはさほど感心せず。
実際の現地がどうか知らないけど、あまりバカンスの地を魅力的に撮れているとは言えないかも。

クリスチャン・スレーター共演『Untamed Heart 忘れられない人』を見て以来、私はマリサ・トメイが好き。
いろんな物事に対するエンパシーがねっとり感じられるから(そう、対人だけじゃなく)。
J.Loにも似た愛のラテンウェーブ。

それから、ポルトガル語が結構聞き取れたのが嬉しかった。
昔、ウチの隣家にブラジル帰りの夫婦が住んでいて、幼かった私たちをよくタコ焼きだなんだと招いてくれたのだが、2人は時々ポルトガル語で話し合っていた。お姑さんに聞かれたくない話をするときは言語を切り替えるのだと冗談交じりに言っていたが...。

もちろん、「フランスの大女優」が主役なので、フランス語もたっぷり。

映画に全く関係ないけど、先日のフランス語のクラスで先生の前振りがシュールだったのでメモしておく。
授業中、マダムが「皆さん、自分の年齢と生まれ年を足してみて。漏れなく2019になるのよ!」と言ってきた。
一同、...そりゃそうだよねぇ、と首をかしげる。
「不思議じゃない?」とマダムがさらに押してくるので、何人かの生徒が「まあ、誕生日が来ていなかったら2018になるけど」などと半端な返しをする。
すると先生は混乱されたようで、「どういうこと?」
別の生徒が、「私の娘は2000年生まれ、じゃあ今何歳になります?」と例を挙げて説明を試みる。
しかし先生、理解されない。
教室がわあわあしてきたので、先生は「授業を始めたいから、あとで個人的に説明してちょうだい」と言って話を打ち切る。
休み時間に誰かが図を書いて(!)説明していたようだ。

翌週、先生が「謝りたいことがある。先週は意味不明なことを言ってごめんなさい。ただの足し算の問題でした。私は何だか西暦のミステリーだと勘違いしていたの。stupidな教師だと思われたでしょうけど、フランス語は教えられるからガッカリしないでください」と言われた。

マダムの「数字のミステリー」はフランス語の数詞体系に10進法と20進法が混在していることに起因しているのかな?と興味深く思った。

トレーラー。

映画 The Lighthouse を見た。ロバート・エガースの『ライトハウス』

Depressed.
タテに細長い映画。怒声と凍えそうな画面がつらくて、早く終ってくれ〜とばかり思っていた。
弱っている人にはおすすめしません。

トレーラーを見て絶対に好きじゃないなコレと思ったが、ウィレム・デフォーが主演なので観に行く。
彼はゴッホのままのヒゲ面。

ライトハウス (字幕版)

ライトハウス (字幕版)

  • ウィレム・デフォー
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灯台守の仕事が分かるのは面白い。
海の中に閉じ込められ、灯を守る以外におさんどんもしなくちゃいけないわけで(料理はウィレム担当)なかなか大変です。

「閉所に長期間、数人で生活しなければならない」仕事について。
そういう仕事場はこの離島の灯台とか、南極観測基地とかいろいろあるでしょうが、絶対に外に出られない、1人の暴動が即刻全員の死を招くスペースシャトルはその最たるものでしょう。
当然、NASAはその状況に耐え得る人物を選定するのに莫大なお金をかけています。

数年前にTwitterで「外で温厚な良い人でも家の中で暴力暴言ふるってるヤツはわりといる」という話になったことがありました。
で、「いやー、さすがにそれは分かる人にはバレてるでしょう」という意見もあったんですけど、私は日本人宇宙飛行士の第一人者のことを思い出していました。
彼のお連れ合いが手記を出版していて、夫(宇宙飛行士)が自宅で勉強しているときはめちゃくちゃ気を遣ったというのです。
子どもがぐずると「泣かせるな!」と言われるので、もうお連れ合いはビクビクして子どもを外に連れ出し、落ち着くまで背負って外を歩いたとのこと。
よくあることみたいに書いてたけど、それ同居家族の態度として最悪でしょ…。
その宇宙飛行士が神経質にイライラピリピリしている顔が目に浮かぶし、また子どもってそういうの一番に感知してさらに泣き叫ぶしね。
お連れ合い、生きた心地がしなかったんではないかと思うわ。

そして、そういう人でも天下のNASAの閉所協働適性試験にはパスしてしまうわけです。
実はかなり存在している「家の中で暴力暴言ふるってるヤツ」に世間が気づかないことは容易に想像できます。

えーと、灯台守の2人も、厳しい選考テストは受けていないでしょうけど、当然の帰結でしょうね、という話です。

ところで、けがれた人間が直に神を見たら、そりゃ目がつぶれますよ。
『十戒』でもモーセは岩の裂け目に隠されていたでしょう。
私たちパンピーが神と対話するにもけがれを覆う裂け目(イエスの血)が必要です。覚えておきましょう。

「しかし、あなたはわたしの顔を見ることはできない。わたしを見て、なお生きている人はないからである」。
そして主は言われた、「見よ、わたしのかたわらに一つの所がある。あなたは岩の上に立ちなさい。
わたしの栄光がそこを通り過ぎるとき、わたしはあなたを岩の裂け目に入れて、わたしが通り過ぎるまで、手であなたをおおうであろう。
そしてわたしが手をのけるとき、あなたはわたしのうしろを見るが、わたしの顔は見ないであろう」。
(出エジプト記20:20-23)

2人の名前が十二使徒のトマス由来なのも(で、あえてそのことを強調しているのも)、重層的な意味があります。彼らが実は同一人物であることをほのめかしているような。

トレーラー。

映画 Parasite を見た。パルムドール『パラサイト 半地下の家族』

英語字幕で鑑賞。
同じく対金持ちの『バーニング』のイメージを勝手にひきずってつぶやき系かな、とうっすら思っていたら、ずっと輪郭のはっきりした語り口だった。
貧乏生活のこまごましたところが役者さんになじんでなかったけど。
(でも、はからずもラストの後味は『バーニング』に似てる)

ボンビー家族が入り込むまで、金持ち一家が変態すぎて(そう、ボンビー一家でなく、金持ちズが過剰だった)、何の障害も持たない化けものだー、ついていけないー、と思ったが、金持ち主人が「うちのドライバー、地下鉄に乗ってる奴の匂いするやん」と言い出してから、がぜん人物たちの脈の打つ音が聞こえ始めた。

それに、浸水シーン、避難所シーンの膝下から湧き上がる、固定化された格差の絶望の既視感。
いまだ全容を把握できていない台風19号の被害を見聞きしたあとだっただけに生々しい。

一方の金持ち側も、チョ・ヨジョンの最後の諦めたような表情が印象的でした。

同じく見えない家族を描いた『アス』、『万引き家族』と比べると、私にはドラマチック過ぎたけど面白かった。
英語字幕を読む煩わしさからきた幻聴かもしれないけど、韓国語ってずっと聞いてると理解できるような気がしてくる。
やっぱりかれらは近い親戚なんだな。
これまでは韓国系の友人に質問したり、Duolingoで遊んだりするくらいだったけど、もっと勉強しようと思った。

ポン・ジュノ監督(中村勇吾さんかと思った)が繰り返し見ている作品は『となりのトトロ』、次に『サイコ』。

トレーラー。

Jesusへの私的ラブソング

詩に出てくるYouがJesusだと仮定しても通るラブソングはいろいろあります。
セクシャルでなければ何でもそうじゃない?と思うかもしれませんが、私は聖書に書かれた彼の人となりに沿っているなーと個人的に思うものに限ってイエスへの讃美歌にしています。
3曲紹介。後で付け足すかも。
どの曲も素晴らしいのですが、三人称がbabyでなければ!というのだけが軽く惜しい。さすがの私もJesusをbabyとかsweetieとかhoneyとか呼べません。

Celine Dion - Because You Loved Me
完璧に新約聖書。まずはあなたが無条件に愛してくれた。あなたは暗闇を照らす光。私のそばに立ち、真理と喜びを教えてくれた。私の力、声、目であり、私の真の姿を引き出してくれた。
逆にこれがJesus以外の人間だったらすごい...

Gloria Estefan, 'N Sync - Music Of My Heart
これも、本当の私を信じ、引き出してくれた、というところが上の曲に似ているのですが、It was you who set me free がめちゃ聖書的だと思う。
ちなみにこの歌がテーマ曲の映画 Music of the Heart も大好きで、何度も見てる。

NEW! Ed Sheeran & Justin Bieber - I Don't Care
5月、ラジオでパワープレイ中から好きになり、Jesus以外にもう1人の人間をつい思い出す作品。
あなたさえそばにいれば、世間じゃなく、あなたの声だけを頼りにしていれば私は大丈夫。私にもできる、と思える。

五嶋みどりさんもこの音楽学習支援プロジェクトに参加しているのに、映画には出てないのよねえ...
昔、彼女が日本の新聞のインタビューで「子どものためならどこにでも行く」と答えていたのを覚えている。

映画 Pain and Glory / Dolor y gloria を見た。ペドロ・アルモドバル監督『ペイン・アンド・グローリー』

英語字幕で鑑賞。
冒頭、墨流しの上に流れたテロップの余白の素人くささから始まって、
全体的に作りが安い...。
タイトルそのものも。ペイン・アンド・グローリーて。

ただ、最後にちょっと仕掛けがあるように、「(特に回想シーンは)あえて紙芝居っぽく、つくりもの感を演出したんだよ」と言われればそうなのかも、とも思う。

アントニオ・バンデラス(本作でカンヌ最優秀男優賞)、ペネロペ・クルスというスターシステムへの飽き感もあり。

それから個人的にドラッグ依存話にいい加減ウンザリしているということもある。
どんどん悪魔に抗えなくなっていくあの感じ。
幸いサルバドールは吸引手前まで用意するけどやっぱり引っ込める、というあり得ない所業ができ、仕事にも復帰できたようだが、稀有な例だと思う。

たまたま映画館に行く前に知人に会い、30代の近親者がオーバードーズで亡くなったこと、今後生きていても良い展望は描けないから神が思い余って召したのだろう、というそれまでの彼の苦しさを見ていたからこその親御さんの言葉を聞き、MJやホイットニー・ヒューストンを思い出していたところだった。

もう20年前、『オール・アバウト・マイ・マザー』を飯田橋のギンレイに見に行って以来のアルモドバル作品。
ペネロペ・クルスが初々しかったこと、ラストのキメ視線しか覚えてないけど。
ワンカットでも記憶に残っているだけで、(私にとっては)すごい作品なんだけど。

10/5 追記、
先ほど聞いたラジオの批評で。
監督は常々女性のチャネルを通して物語るのが得意。本作の主人公はいまいちグリップが効いておらず、同様の流暢な語りはできていなかったよね、とのこと。
『オール・アバウト・マイ・マザー』しか見ていない私でも、そうかもしれないなと思った。

トレーラー。