英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 The Florida Project を見た。ウィレム・デフォーの『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

ここ最近でいちばん楽しみにしていた作品。

よかった。実によかった。正直ですがすがしい、人生讃歌。
アートディレクション、撮影も最高。
同じ沿岸でもこことは違う、オーランドの湿った生暖かい空気を思いっきり吸い込んだ。

子どもたちの演技のタフさ、リズム感の良さは言わずもがななんだけど、それよりもとにかくウィレム・デフォーが素晴らしい。
『プラトーン』からポツポツ彼の出演作を見てきて、なんかしんどそうな俳優さん、つまり、「見ててしんどい…」人だった。
でも本作では、中の人が体の奥深くからcomfortableそうだ。
とても快く息をしているのが感じられて、見ているこちらも気持ちがよかった。

最後、母の虐待の疑いにより、母子が引き離されそうになるところ、現場から離れた場所でかれらのことを思案しつつ、手持ち無沙汰にタバコ吸いながら、「洗濯機、来週直るから」と今言わんでもいいことを言うシーン、実にいい。
あそこで、母子の肩を持って口論に加わったりしたら、瞬く間に三流作品になっていただろう。

(念のため、『ルーム』でも書いたが、私は子どもを守るために公権力が介入するのに賛成。密室の子どもの人権はどんなに大げさにしてもなお、なかなか守れるものではないから。最近、東京で子どもに副流煙を吸わせないための家庭内禁煙が努力目標になったそうだが、当然だと思いつつ、よくもそんなリベラルな条例が通ったものだ、と驚いた。日本の状況からすると結構な飛躍じゃない?)

その意味では、最後のドラマ直前に、"I promise, you gonna be alright"と母親がランドリーのお姉さんにハグされるシーンはちょっと浮いたかも。いいセリフすぎて。

物語にマジレスする作品でないのは分かっている。
でも『誰も知らない』の子どもたちと比べてごらんよ。

学校行かないで日がなブラブラしてる、お店の裏口で食べ物をもらう、ビンボー子どもとしてやってることは一緒なのに、本気で見守る大人がそばにいるだけで、どんなにイキイキとして幸せそうなことか。

モーテルの人たちも、おかーさんたちも、子どもたちをさりげなく、でもしっかりと愛している。
危険からは守ってやるし、少年のおかーさんなんて、昼間働いてばかりいるのに、少年のウソにちゃーんと気づく。
まあ、天候だけが取り柄のハリボテの町という舞台設定のおかげでもあるだろう。
これが舞鶴だったら、陰鬱過ぎて目も当てられないかも。

突如それまでの空気を切り離したエンディングは賛否あるだろう。
劇場でも「分かっちゃいたけど、拍子抜け」な雰囲気が漂った。うまく拍手させてくれない作品だ。
でも、『アメリカン・ハニー』と同じく、こういう一瞬一瞬を生きる作品は、ある意味、エンディングはどうでもいいんだと思う。とりあえず2時間くらいで終わらせないといけないので形はつけるけれど、大事なのはそこじゃないし、カタルシスも要らないので。

で、この子たちがこのまま大きくなったら、続編『アメリカン・ハニー』につながるわけだな…

ショーン・ベイカー監督は地域の「隠れたホームレス」に対して、ぜひできることをしてほしいと、支援を呼びかけていました。
あのモーテルが1泊38ドルということは、ひと月ではささやかな部屋の家賃より高くなったりして、負のループ。
定期買えなくて毎日切符買うのと同じ。「貧乏はカネかかる」というやつです。
なんとか最初の脱却の1歩から。

師走です。本作を「2017年に見た映画ベスト5」に入れました〜

トレーラー。

みんな素すぎる… なんとオカン役の素人、Briaは監督がインスタで見つけてスカウト!
ブルックリンちゃんなんか鼻ほじってるがな。デフォーが本当に楽しそうで嬉しい。

ショーン・ベイカー監督はiポンでいくつも劇場用作品を撮っている。
本作のラストのディズニーワールドも、iポンでの無許可ゲリラ撮影だと。