英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Lady Bird (2017) を見た。グレタ・ガーウィグの『レディ・バード』

12月追記:小児虐待を訴えられているウッディ・アレンに対して言葉を濁すグレタ・ガーウィグに失望。
2013年のVanity Fairの養子からの告発がうやむやになったのも謎だったが、本当になぜか彼(と大統領)は「例外」なんですよ、まだ。
http://beta.latimes.com/opinion/op-ed/la-oe-farrow-woody-allen-me-too-20171207-story.html

で、『レディ・バード』は、良くできたサクラメントプロモムービーだった。
とはいえ、グレタの故郷が本当にサクラメントなんだから仕方ない。
『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』『20センチュリー・ウーマン』『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』で「いたっけ?」な役者だった(マギーなんか主役なのに)グレタ・ガーウィグが初めて脚本、監督を務めた彼女の半メモワールコメディ。

レディ・バード (字幕版)

レディ・バード (字幕版)

  • シアーシャ・ローナン
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脚本家の向田邦子が初めて手がけた随筆に対する山本夏彦の評価が思い浮かんだ。
ガーウィグもまた、「突然あらわれてほとんど名人である」。

いきなり、敬愛するスタインベック大先生の『怒りの葡萄』のエンディングから始まり、期待が高まる。
そう、サリナスも北カリフォルニアなのだった。
ちなみに私もテープセット持ってたわ〜。全部聞かないうちに延びちゃったけど〜。この機にAudibleで買い直すわ。

彼女が通ったのはカトリックのハイスクールだが、アメリカの学校の長所が集約されていたと思う。
1人1人にじっくり向き合う全人教育。

病に悩む担任や、厳しくも温かく生徒を見守るシスター先生たちだけでなく、「イェールとかに行きたいんですよね」というレディ・バードに思わず吹き出す正直な進路指導教師、代行で経験ないのに演劇を指導することになったスポーツコーチの熱烈さには笑ってしまった。愛ある学校です。

レディ・バードの反抗期はマイルドで私にはちょうど良かった。
でも反中絶教育での侮辱は観客悲鳴、ちょっとやり過ぎだったわ。

ボーイフレンドたち、友人たち、兄弟たち、お父さん、お母さんの造形も素晴らしかった。

『君の名前で僕を呼んで』のエリオ君が憧れのバンドマン役だが、彼の据え方は巧み。
プールサイドで本読んでるだけで失笑を買えるという...
シアーシャ・ローナンとの掛け合いも相性が良くて、「ウチの親、ガン」と言うだけで大笑い。

最後、お母さん渾身の手紙の内容を脚本としては受け流したのはうまかった。
あれ、(お母さんの声かぶせたりして)読んじゃったらいけないのですね。

ニューヨークのシーンで終わらせるのは、監督も悩んだんじゃないかな。
でもあの終幕こそが「サクラメント」だったのかもね。
(Sacramentoの語源を調べていくと、この作品の象徴としてなんとピッタリはまっているのかと驚くはず。
さらに、『怒りの葡萄』の構成とも重なることに気づく。そして『葡萄』の本歌がまた、旧約聖書のエクソダスなんですねえ...)

ふと耳にした聖歌に素直な気持ちになって故郷、サクラメントに電話をする。もう300%共感。

250席がほぼ満席だったので、地元民の共感ポイント(Oh...というため息や温かい微笑が合唱になる)が分かりやすくて面白かった。
"I have been there"と思ってしまうシーンですね。

  • 自分のセクシャルオリエンテーションに困惑する元ボーイフレンドがレディ・バードに取りすがって泣くところ。
  • 娘を送り出した母親の取り乱し。
  • 「離婚するの?」と聞かれた父親の"I can't affort it."

などなど。

そういえば、Shall we dance?のアメリカ各地のスクリーニングに随行した周防監督が書いていたのだが、どのシーンよりもおデブダンサーの涙の告白にそれこそ全米が泣いていたという。

コメディとしては、やっぱり聖書の下敷きがあったほうが笑えます。
例えば、聖餐用のおせんべいをお八つにする場面で観客がメチャクチャウケていたのだが、あれが、お供え物をくすねる小僧さんよりもずっと面白いのだということは、聖書を知らない人には伝わりにくいだろう。

「なんもない街」として知られる我が州都、ぜひ次のサンフラ旅行時には通りかかってみたいと思う。

私が見た北カリフォルニアの風景はこちら

追記、本作を「2017年に見た映画ベスト5」に入れました〜

周防監督の全米行脚録は、何度読んでも飽きない。Miramaxでブイブイ言わしてた時代のワインスティーンも登場する。

『怒りの葡萄』は登場人物たちが全員なまっているので「ジョード一家章」を原書で読むのはハードル高い。まずは大久保訳でどうぞ。が、新訳もたくさん出ていて驚いた。日本での人気がうかがえる。

トレーラー。

第45代米国大統領親子の来日の日本語ニュースを読んでいて、つくづくマズイと思った。
日本の若い人には日頃から日本語以外の報道にふれてほしい。絶対に。

一応確認だけど、日本の首相は、大統領にバカにされている、相手ははっきり言って何も考えずにモノを言っているのを重々承知の上でお腹を見せてるふりをしてるだけだよね? なんぼなんでも?

ところで、首相とイヴァンカ氏が正面向いて並んだ写真を見て、あの有名な昭和天皇とマッカーサーの写真を思い出した人は多いのでは。もっとまわりは忖度してあげて、と思った。
生来的な身長のことを言ってるのではない。イメージは重要なのだから、演出できるところはしようよ、ということ。
抱擁シーンで小雪に膝をつかせ、常磐貴子には車椅子にまで座らせたキムタクを見習おう。
(あのニコパチも腹見せの一環なんだよ、というなら、言うことはありません)