英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Les Misérables (2019) を見た。新『レ・ミゼラブル』

アカデミー国際長編映画賞ノミネート作。
フランス語講師のすすめで見る。といっても英語字幕をガン読みする。

ユニークな作品。冒頭と宣伝美術の大上段と比べ、事件は何と小さな世界で起きていることよ。

口の悪い人たちが怒鳴り合っているのに、Uncut Gemsと比べると全然毒が回らず、むしろさわやかでさえあるのは、使用言語のせいか、子どものせいか、アッラーの神のおかげか。
続々出てくる多分野の野郎たちに私の苦手なDV顔、ブチ切れ顔が1人もいなかったこともあるかなぁ。

私たちのフランス語講師のマダムは、「フランス語はゴミという言葉さえ美しいのだ」と言いながら、ゴミ、ゴミ、ゴミと何度も発音してみせてくれる。
アメリカに移住して長いようだが、パリへの望郷の念は強いようで、授業ごとにデモの心配をしている。
ついでにプライバシーに非常にセンシティブで、会話練習の流れで行ったことのある国を聞くのにも「あまりpersonalなことは聞くのは申し訳ないけれど」と前置きしたりする。

今回、英語字幕でフランス語作品を見て、このふたつの言語のもつ蔑称の豊かさ(?)とそれを日本語ローカライズする困難さについて考えた。
Motherf●cker、old c●nt、retard、birds●it...
どれにも笑いがわいた。後席にフランス語話者カップルが座っていたが、ほとんどはフランス語の流暢な客ではなかったはず。
フランス語・英語間の蔑称は文字どおり訳してもわりと機能するのだ。
これを日本語にしようとすると、マ●コ野郎とか、ノロマとか、バカモンとか、日本語ではそんなふうに人を呼ばないので不自然、というのはキャラクターが日本人でないことから差し引けるとしても、単に面白くなくなるのがね...。

ラストは好き。ある意味、安心した。

トレーラー。