たぶん、今年最も批評家が好んだ作品。
NYTのクリティーク3人全員が2016年ベストムービーズにピックアップしている。
LA Timesの批評家も同様。(ちなみに1位にSilence「沈黙」を挙げる人も)
1980年代マイアミで、黒人、ゲイ、そして貧困層に属する男性がアイデンティティを見出すプロセスを3人の役者で描く。
非常に濃密な心理劇。
やはりというか、舞台の脚本、Moonlight Black Boys Look Blueのインスパイアが元になっている。
作者のTarell Alvin McCraneyは、現実にMoonlightを生きた男、として紹介されるようになった。
3人の役者が同じ人物だと思わせる演出に説得力がある。
Southside with youでも感じたことだけど、「マネッコ」ではなく、それぞれがしっかり同一人物のエッセンスを体現している。
特に青年期の彼(その名もブラック)は、細胞1つ1つが強力な言語を発していて圧倒された。
あの強迫観念的に鍛え上げられた黒い肉体に、不安定な精神を閉じ込めているのはどれほどきついことだろうか。
ちなみにブラックを演じたTrevante Rhodesは、テキサス大で短距離アスリートとして活躍していたそうだ... アメリカの役者層の厚さよ。
全体的に写実的な編集をしているけれど、メタファーはとても直接的。
まず、彼の名前がChironというのが意味深ではないか。
幼少期、青年期にはそれぞれリトル、ブラックの愛称があるので、その名がティーン期と、母親からしか呼ばれないのも。
「初めての海水浴」は、ドラッグ売人の手引きによるパブティズム。
そういえば、American Honeyのラストシーンも受洗、生まれ変わりだったんだわ。
言葉数の少ない映画ながら、最後のダイアログは本当に深遠。
人は1人では人たり得ないのだった。
昨年のホワイトアカデミー賞の反動もあるし、がっちり賞レースに食い込むのではないでしょうか。
師走です。私の個人的な2016映画トップ3はこちら。
◎Jan. 2017 追記:祝GG受賞、そのプレスQAで。
Janelleのpro-loveの宣言と、"How you guys acted against each other?"という質問に対する売薬人&Chironズの答えがテキトーかつカコイーのでぜひ見て。
トレーラーはこちら。