あまりにもタイムリーな全米公開。
1960年代のフランスで望まぬ妊娠をした学生が地下で中絶を遂げるまでを描く。
昨今の状況に限らず、男性システムによる女性の体の支配についてもう次々と思い起こされて100分間ずっと腹の中で怒っていた。
全米の赤い州で実質中絶ができなくなっても中絶件数は大幅には減らない、むしろ死ぬ妊婦が増えるだけ、という試算をしている研究者がいて、「だろうね」と思っていたのだが、この物語を見るとその帰結が確からしいことがよく分かるのではないだろうか。
先週土曜日は私の町でもプロチョイスとプロライフ両方のデモがあった。群青州の地元では今そこにある危機を感じにくいけれど、原理原則の問題としてワシントンで後退してはならないと思う。カバノー怒バレット怒。
プロライフの運動団体の人は普段からクリニック前にいつもいる(『愛しのグランマ』のように、ビジターが来たら止めに入る)。あれはあれですごい。でも当然だけど、誰も中絶したくてするんじゃないことを分かってくれ。
私の直接の知人で知っている限りで中絶を経験しているのは3人。うち1人は2度。そして「4人目は無理だと思っておろしてもらった」と公言している男が顧客に1人いた。
産もうが産むまいが体に負担はかかるし、全米の60万人、日本の10万人全員が、みんな命を守る最後の手段として決断したんだよ。
プロライフあるいはとりあえず女性に罰を課したい人が言う「好きに遊んでもし妊娠したら堕ろせばいいと思ってる女性」というイメージは藁人形です。
腹立つわ。
最近『富士日記』を読んで武田百合子氏のことを調べてたら、何度も中絶して最後には倒れたと書いてあって連れ合い(知らん小説家)にめちゃくちゃムカついてる。
本作、Wikipediaでは「ドラマスリラー」に分類されてて的確すぎた。
原作はアニー・エルノーの小説『事件』。
トレーラー。