英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 The Lady in the Van を見た。マギー・スミス、ホームレス役。『ミス・シェパードをお手本に』

土曜午前の映画館が好きである。
私がよく行く半ミニシアターのところは、この時間はマチネ料金(だいたいどこも10ドル以下)ながら、年寄りグループか、1人でふらりと来てるような人ばかり。
実際今日はドカッと前に座った女性が盛大に「週1度、私の好きな時間なの。1人で静かに過ごせるでしょ」とポップコーンをバリバリ頬張りながら隣の人に話しかけていた。
(ついでに、Spotlightがいかにexcellentだったかを熱く語っており、気の毒な隣人は最後には「帰りにチケットを買う」と応えていた)

The Lady in the Vanは大女優を据えた賞狙い作品の一つ。
(一応、評判をとりやすい「実話モノ」)
All about マギー・スミス。

Sister Actやハリポタなど、私は彼女の演じる威厳ある女性がすごく好きなのだが、結局、誇りのない人物を演じることはできない人ということだ。
多分、「目の死んだ人」に扮することはできない。

原作者は劇作家、原作も舞台で、Steve Jobs同様、舞台作品のようなつくり。
バンに暮らすマギー・スミスを中心とした小さなカムデンの街の物語は楽しめるのだけど、全体的に「滑って」いる感じがした。
特に「ハイ、ここ見せ場ね」っていう、初のバンペインティングのシーン、車いすで坂道を下るシーンがきつかった。
アランとの最後の握手だけはなんとかOK。自分の手は"Clean"だ、というセリフが効いている。

逆に、ああ、いいなあ、と思えたのは、彼女のプチ旅行風景。1人で子どもに混じってビーチの乗り物に乗ったり、背の高いパフェを食べたり。

彼女が死んでからのエピローグは、「劇」なので仕方ないところもあるけれど、全て蛇足である。

話の傍流になるけれど、イギリスの福祉は年季が入ってるなあ、という感想を持った。
最近、在イギリスの人から「いろいろヤヴァさはあるけれども、ともかく医療費は無料」「保健婦さんが家に巡回に来てくれている」といった話を聞いたばかりだったので、この作品に出てくるつかず離れずのソーシャルワーカーたち、デイケアの人たちに代表されるリソースの成熟に改めて感心した。単純に「何でこんなに国に余裕あるの?」と思ってしまった。
ケアワーカーの、(主役のアランもほとんど触れたことのない)彼女に肩を貸し、乱れたスカートのすそをきちんと直してあげる、という態度が物語の文脈の中で描かれている。

『ストレイト・ストーリー』『ネブラスカ』といった年寄りの自分探しモノはわりと日本では公開されるようだけど、本作はどうかな...
原作はこちら。