英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Barbie を見た。『バービー』と『Tiny Shoulders: Rethinking Barbie』

昨年のホリデーシーズンから続く異次元の広告投下量に若干白けていたのだが、ベン・シャピーロが「全編wokeのゴミタメ」とキレ散らかしていたので(ガーウィグ作品をあえて見に行っただけでも誠実だと思うが)、見る前から「やってくれたね!」と喝采を送っ…

映画 Oppenheimer を見た。キリアン・マーフィー is『オッペンハイマー』

ドキュラマとして大変面白かったが、『Quo Vadis, Aida? アイダよ、何処へ?』と同じ感想を抱いた。 デカさ、ツオさを希求する「男」なるもの、お前だよ。お前が全部破壊してんだよ。同じ間違いを繰り返しやがって。原爆開発物語ではなく超ハイペースのオッペ…

映画 No Hard Feelings を見た。ジェニファー・ローレンス『マディのおしごと 恋の手ほどき始めます』

くだらないと評判(?)の夏休み映画だが、ジェニファー・ローレンスのファンなので見に行く。 まあ、くだらなかったのだが、トレーラーから想像していたのよりずっといい話だと思った。 長く土地に縛られていた人がついに移動しようとする物語が好きなので…

映画 Asteroid City を見た。ウェス・アンダーソン『アステロイド・シティ』

Wokeの時代の風刺激。俳優をコマのように配置するこの監督の作風は好きではない。 宮沢章夫の舞台を思い出す。でも本作は、同じマスゲーム的演出でもまあまあ面白かった。 たぶん、私にとっては俳優が楽しそうに演じているように見えることがポイントなのだ…

映画 The Blackening を見た。3Peat x ティム・ストーリー『ザ・ブラックニング』

面白かった。 ジューンティーンスにふさわしい(?)ブラックコメディホラー。 配信が始まったら、とても全部は捕捉できなかった「ブラックジョーク」をチェックしたい。 私はホラー映画はほとんど見ないが、ホラー映画に登場するアフリカ系キャラクターのス…

映画 Past Lives を見た。セリーヌ・ソン『パスト ライブス/再会』

21世紀の縁(인연)のかたち。 でもね〜、このふたりなら、来世まで待たずとも12年先は何が起こるかわからんよ。バーで3人で過ごしているのに2人だけの世界に入っちゃうやつ、まるで私もその場にいるみたいに除け者になった夫が気になっていたたまれなかった…

映画 You Hurt My Feelings を見た。ニコール・ホロフセナー『地球は優しいウソでまわってる』

ごく浅漬けのコメディだが、同監督の『ある女流作家の罪と罰』や『セックス・アンド・マネー』に続き、設定の勝利で楽しく見た。 ニュースクールの創作クラスで、教員の著作を読んでいないどころかその存在さえろくに知らずに集まってきた学生たちに教えてい…

映画 The Little Mermaid (2023) を見た。ハリー・ベイリー is『リトル・マーメイド』

ションダランド的ユートピアが舞台の人魚姫。ハリー・ベイリーのPart of Your Worldはとてつもなく素晴らしかった。 ハワード・アシュマンは、当時まだ生まれてもいないベイリーの声を通して自分の言葉が受肉することを知っていたんじゃないかと思うほど。 T…

映画 Master Gardener を見た。ポール・シュレイダー『マスター・ガーデナー』

『魂のゆくえ』『カード・カウンター』に続くシュレイダーのMan In A Room三部作の完結編。 前2作の要素を足して割ったような話だが、トリロジーの中では一番好きだ。 「過去」の仕込みは甘めだったので、ルイジアナの緑と邸宅、朝の雨の匂いに負うところが…

映画 BlackBerry を見た。マット・ジョンソン『ブラックベリー』

ギークワールドで言うところのフォースの何たるかが描かれていて大変面白かった。 これ2000年以降なのがビックリだよ。映像のデザインのせいもあるだろうけどもっと古い時代に見える。冒頭、カメラワークの主張が強すぎて(不要な「臨場感」)、これで2時間…

A Life to Serve 天皇皇后両陛下

先週、YouTubeのオススメをきっかけに天皇皇后両陛下や愛子さまの動画を次々と見ていたらサーッと涙が出てきた。それも、弱い人、苦しむ人に心を寄せるシーンや、ほほえましいハプニングのカットよりも、恒例のセレモニーにお出ましになり、型どおりのスピー…

映画 Polite Society を見た。ニーダ・マンズール『ポライト・ソサエティ』

なかなかくだらなくてよかった。 どこにでも行ける的バッドガールのジュブナイルかな〜と想像して見に行き、「ふむふむ、若草物語のジョーとメグみたいな...」と思っていたら、いきなりSFサイコになってビックリした。節操なくてグー。ちょっと残念なのは、…

映画 Everything Went Fine / Tout s'est bien passé (2021) を見た。フランソワ・オゾン『すべてうまくいきますように』

佳い時間だった。 この一家は家族をやることに対して力が抜けてていいなー。 上映前に『Book Club』の続編の予告が流れて、高齢女性4人が妙に口角の上がったパンパンの顔でイタリアに繰り出してキャッキャするのを見た後だったので、どちらも虚像なのは分か…

映画 Sisu を見た。ヤルマリ・ヘランダー x ヨルマ・トンミラ『SISU/シス 不死身の男』

とんでもなく面白かった。 瞬く間に今年の暫定マイベストを更新。 ちょっと座頭市っぽい。最新兵器を繰り出しまくるナチス。 ツルハシ(引っ掛けたり、飛行機に穴を開けたりするのにも便利)、選鉱鍋(弾除けに便利)、ナイフで応戦する金の探鉱者。 ゴリア…

映画 Are You There God? It’s Me, Margaret.を見た。ジュディ・ブルーム『神さま、わたしマーガレットです』

ジュディ・ブルームの1970年刊の同名小説の映画化。 先日アマプラでドキュメンタリー『ジュディ・ブルームよ永遠に』も公開されたばかり。テンプレなシーンの連続。 全体的にどのエピソードもピンボケ、フォーカスが決まっていない。 脚色としては成功してい…

映画 Chevalier を見た。ジョゼフ・ブローニュ is『シュヴァリエ』

フランス革命前夜。 大味の「自由・平等・博愛」入門。数は力。 あのまま、One Day Moreが聞こえてきそう。セットとフランス王妃の扱いに突っ込みたいところが多々あるが、そこは肝ではないということで...。私はパンデミックのロックダウンの間に自分が生き…

映画 Beau Is Afraid を見た。アリ・アスター『ボーはおそれている』

アリ・アスターのトゥルーマン・ショー。 一人で見にきていた前列のマダムが終映するなり言わずにおれんとばかり"The stupidest thing I've ever seen"と声をかけてきた。 I couldn't agree more. 病みすぎ。Act 3なんか超冗長で、10ドル払って一体3時間も何…

映画 A Thousand and One を見た。サンダンス審査員大賞『ア・サウザンド・アンド・ワン』

今朝、ソーシャルセキュリティオフィスの前の公衆電話で怒鳴る女性を見た。 4車線またいだ反対側からでもF--king B--tchと連呼しているのが聞こえた。先週はラジオで、キング牧師の親族がかなりの割合で心臓疾患で早死にしているという話を聞いた。 解剖結果…

映画 Air を見た。ベン・アフレックが切り取った1984年『AIR/エア』

面白かった。今年の暫定ベスト。お仕事ものは鉄板。そしてまた1984年という年が、私が南部で過ごした子ども時代ど真ん中なので冒頭からノスタルジー。 ところどころプロップのカットが変に意味ありげだったのは(なんかの伏線か、といぶかしむくらい)、開発…

映画 Rye Lane を家で見た。『ライ・レーン』

ペッカム、ブリクストンからサウス・バンクの空気をビビッドに味わえるサウスロンドン・オサレ映画。Straight Upを思い出させる会話劇が面白い。 だが、ちょうど半分の地点で鍵を盗みに行くところからネタじみてつまらなくなる。ちょいちょい街角のちょっと…

映画 Full River Red を見た。チャン・イーモウ『満江紅』

今年の春節に大成功を収めたCCPお墨付きのヒストリカルブラックコメディ。 ドラクエ3みたいでなかなか面白かった。目に見えるものに忠義を尽くすのはきついよね。女性の被疑者のボディチェックにわざわざ女性を呼ぶところ進んでるやん、と思ったが、実際には…

映画 The Quiet Girl / An Cailín Ciúin (2022) を見た。キャサリン・クリンチ is『コット、はじまりの夏』

注:ネタばれあり。 よかった。 ずーっとハグを画面外で処理してきてからの最初にして最後のビッグベアハグは圧倒的なカタルシス。 みごとに涙が噴き出した。ある抱きしめられたことのない子どもと、二度と子どもを愛しすぎまいと無意識に誓っていた親父の魂…

映画 Return to Seoul / Retour à Séoul を見た。『ソウルに帰る』

カンボジアンフレンチのDavy Chou監督による『ロスト・イン・トランスレーション』以上にLost in translationが歯がゆい逸品。それこそ同じ言語の話者同士であっても誰もがすれ違いまくる。 あまりに理解を超えてくる相手に、一言で消されるマキシムと一緒に…

映画 Emily (2022) を見た。嵐が丘物語『エミリー』

ブロンテ姉妹のインスピレーションの源泉を探る。 荒野の豪雨が快かった。チャリ通の生徒は走行しながらハンドルの上でジャンプを読んでいたような時代、私は通学の電車内で『嵐が丘』と『ジェーン・エア』を苦痛のうちに読み上げた。だが、女性が自分の名前…

映画 Living (2022)を見た。ビル・ナイ × イシグロ『生きる LIVING』

イギリス語の愉悦に浸れる作品。 当然イシグロ脚本だという先入観のせいなのだが、『日の名残り』を見ているようであった。パ〜っと楽しくやってみようぜチャプターはほんっとに楽しくなさそうで、ミス・ハリスとの午後の輝きが映える。 上映前に寄ったピザ…

映画 Till を家で見た。メイミー・ティルモブリーのレガシー『ティル』

昨年成立したエメット・ティル反リンチ法の発端の物語。 1955年にはこのようなリンチ事件が大きく報道される程度には進歩していたのだなと思ってしまった。 そしてこの時代でも、人種差別をメディアの中だけの人ごとだと思いながら育ち、そのノリで他州に行…

映画 Women Talking を見た。『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

関心のある題材だったのだが、映画は退屈だった。 最初と最後のキャプションが余計すぎたと思う。あれのせいで一気に説教くさくなった。 この内容だったら、一幕劇に脚色したほうが面白そう。たぶん、敬虔なキリスト者こそ、「天国に入れないぞ〜」という脅…

映画 TÁR を家で見た。ケイト・ブランシェット is 『TAR/ター』

言語としての音楽に関心を持つひとりとして大変情報量が多く面白かった。 プロットを読んで『ブラック・スワン』みたいな話だったらめんどくせえな〜と思ったのだが、幻聴・幻覚は最小限、わりと地に足のついた骨太のサイコスリラーだった。 特にコロニアリ…

映画 Aftersun を家で見た。シャーロット・ウェルズ x ポール・メスカル『アフターサン』

何も起こらない映画を久しぶりに見て新鮮だ。30 somethingのつらみギンギンのメスカル、いい。共感した。 こんな素敵な子どもの父親になれても苦しいのはすごく理解できる。 祝・アカデミー主演男優賞ノミネート。ポラロイド写真やブラウン管の像のギミック…

映画 Saint Omer を見た。ベネチア審査員特別賞 『サントメール ある被告』

エウリピデスの『メディア』を下敷きに、実際にあった子殺し事件の解釈を試みるインテンスな女性論。 舞台で見たい感じ。 白人様が「洗練されている」「教養がある」と異様に絶賛するローレンスのフランス語に浸ることができる。ローレンスの母親、ごくわず…