英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Emma. (2020) を見た。アニャ・テイラー=ジョイ is 『EMMA エマ』

少々調子に乗りすぎた部分もあったけれど、面白かった。
公開時に見たはずのグウィネス・パルトロー版の記憶が全くないのだが、テイラー=ジョイのイノセンス、ファニーフェイスのはまりぶりを見るに、たぶん、何の新鮮味もなかったのだろうな。

EMMA エマ (字幕版)

EMMA エマ (字幕版)

  • アニャ・テイラー=ジョイ
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彼女は、『サラブレッド』の役柄が感じ悪すぎて勝手に良くないイメージを持っていた。すみませんでした。
いつか、ジャッキー・ケネディとか演じてほしい。
ポートマンが『ジャッキー』でファーストレディ時代から晩年を演ったから、若いころのブーヴィエ姉妹に光を当てるのはどう?

ショックな知らせを聞いて、すぐに顔色を変え、涙を流せるって、すごいこと。
訃報とかじゃなく、にくからず思っていた人が知らん間に婚約、的な苦々しい知らせね。
私は絶対に顔に出せないので...。動揺すればするほど隠そうとしてしまうわ。
実際、「あれ、知ってた?」とよく言われるので、渾身のポーカーフェイスは成功しているものと思われる。

「転」のクライマックス、エマの失言の場面で、劇場のどよめきが異常に大きくて長くてびっくりした。
ウォーっほっほっほーい、みたいな。
効果音?と思うほどだった。
意外と原作を知らずに見に来ている人が多かったのかも。

それにしても、エマはじめ、この舞台の働かなくていい人たち、すごーく退屈そうだなぁと思う。
結婚後、醒めた後が長そう...。

音楽がとてもよかった。どれも、「もう少し聞いていたい」と思うピースばかりだった。
ミュージシャンでもあるナイトリー(ジョニー・フリン)がじゃんじゃん歌います。

トレーラー。

映画 Portrait of a Lady on Fire を見た。2019 カンヌ・クィア・パルム『燃ゆる女の肖像』

英語字幕で鑑賞。
長いし、蛇足てんこもりだが、絵の美しい作品。

最近読んだ、同じく肖像画家が主人公の村上春樹『騎士団長殺し』と、これも最近美術館で見たレンブラントの作品を重ねながら見た。
だって薄暗い台所のパン、チーズ、ワインが、まさにオランダ黄金時代の静物画 !!!
しかも実際にナイフを入れてかじっている !!!
フリントストーンの「マンガの肉」を実写で目にしたような感激 !!!
(但し、映画の設定はフランス革命の頃らしいので、レンブラントの時代より100年ほどあとです)

光と影が素晴らしかった。

「親のいぬ間に友達同士でヒャッハー in 18世紀ブルターニュ」もよかった。

それから、蛇足第1弾でマリアンヌが着ていた紺碧のケープがすごーく素敵だった!

ソフィが刺繍をしている姿もかわいらしいが、針仕事 = 無意識下ではセックスをしているのと同じ説を耳にして以来、「手芸するひと」の表象に対して、多少の屈託を見てしまう。
刺繍とかパッチワークとかは、服を縫ったり、靴下を繕ったりする家事とは違うしね。
キルトなんて、昔はほんとに端切れを無駄にしないための工夫だったのが、今、趣味でやってる人はわざわざ端切れを買ってるし。
百恵さんも最近、ご本を出されてましたね。

もちろん、飄々と妊娠させられている彼女の刺繍シーンが2度もクローズアップされるのだから、監督は何らかの意味を込めたのだろう。
世界中の主に女性たちが、編んだり、縫ったり、織ったり、黙々と出したり入れたりしているのを想像すると壮観である。

針仕事メタファー説はたぶんこの本だったかと。読み返したいのだが、電書版がない。

トレーラー。

映画 Ordinary Love (2019) を見た。レスリー・マンヴィル ♥ リーアム・ニーソン『オーディナリー・ラブ ありふれた愛の物語』

バレンタインムービー第2弾。
病めるときも手を携えて旅をする仲良し夫婦の物語。粋な気持ちのよい映画だった。

子どもを亡くした後に離婚する夫婦、結構多いように思う。
その10年を乗り越えたふたりの次なる試練。

この作品で描かれたクリニックは、ほぼ解脱しているピーターというキャラクターがいたこともあるが、なんだかすがすがしく聖かった。
天国行きの待合室のような清廉な明るさ。
それに院内でジャムバターつきのスコーンが楽しめる!UK!

そして、夫婦それぞれがそれぞれの試練をくぐり抜けて、他の苦しむ人たちに力を貸す。
髪を失ったジョーンの目の輝き。

わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りました。だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。(ルカ22:32)

エンディングはもちろんあれ以外にないんだけど、新しい友人を迎えた3人でのクリスマスディナーの風景をちょっと見たかった。

何度も読み返した乳がん闘病記。

ジョーンも怖がっていたように、映画でのがん治療の描かれ方といえばいつもキーモの副作用。
症状にはかなりの個人差があるらしいけど、直近にサバイブした友人も吐き気と闘っていたし、30年前とあまり変わっていないようだ。さくら先生も副作用が辛くてキーモを中断したと報道されていたなぁ…。

トレーラー。

映画 The Photograph (2020) を見た。ステラ・メギーの『ザ・フォトグラフ』

バレンタインデームービー第1弾(この連休中にもう1本見る予定)。
いわゆる退屈な映画を久しぶりに見た。

嵐の日に大事な人たちと暖かいおうちでヌクヌクするところと、部下に辞職を告げられる上長のショックに共感したくらい。

このレビューを読んで笑ってしまったのだが、

Watching "The Photograph" is like looking through a friend's old photo album - it's not as exciting as your friend thinks it is.
Johnny Oleksinski - New York Post

確かにそのとおりな一方で、引き込まれる物語といえばいつだって人物伝だ。有名無名問わず。
しかもメイさんのお母さんは80年代に写真家になろうとニューヨークに出たわけで、本来なら一番面白いはずなのだ。

脚本がいまいっちーなのはもちろんのこと、音楽がうるさい、アートワークが物語の雰囲気に合っていないのが気になった。
主役2人は華やかなだけ、お笑いパート(兄弟の家とオフィス)も、出てる人たちが一生懸命頑張ってるものの不発だった。
先述のボスは少ない出番ながら、地に足ついた存在感でよかった。

トレーラー。

映画 The Assistant を見た。キティ・グリーン × ジュリア・ガーナー『アシスタント』

あるニューヨークルーキーの1日を綴った不思議な佳品。

アシスタント

アシスタント

  • ジュリア・ガーナー
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ミネラルウォーターの封を切って冷蔵庫に入れるとか、詰まったコピー用紙を取り除くとか、彼女の手元は自分の手元かと思うくらい既視感でいっぱいなのに、人形の家をのぞき込んでいるかのような現実離れした感触がある。
上着を机の一番下の大きな引き出しに丸め込むとか、リアル・オブ・リアルだよ。
入れ替わり激しい & 要職ではないポジションの引き出しはカラなんだよね。
他のエグゼクティブは、ちゃんとコートかけを使ってるわけ。

舞台っぽくもあるのは、ボスが一切顔を見せないからだろうか。
実はポスターを見てヨーロッパ映画だと思い込んでいたのだが、その広告表現が適切だったことが分かった。

スケジュールをプリントアウトし、小切手を手書きしているのはなぜだ。
スマホがなければ、いつの時代の話なのか考え込むとこだった。
でも、残念ながら舞台は今このときなのだ。

彼女の場合、日の出前出勤、日没後退勤なので、8時間を超えていると思われるけど、それにしても1日の労働時間て長いね。
ひたすら振り回されている彼女を見ているだけでくたびれた。

オフィスの外が再び暗くなると、すごくイヤな終り方をするのではないかという不安がわいてきた。
明朝もまた早いのだろうか。

入場時、もぎりのお姉さんに「はい、パラサイトね...あ、ちゃうわ...」と言われるなど。
今回の作品賞は、ちゃんと街の一般ムービーゴーアーの気分が反映された感があって嬉しかった。
少なくとも、アンジェリーノは1917じゃないぜ!と思っていた。
既にロングラン、ますますヒットしそうです。

2/17/2020追記、
『騎士団長殺し』(単行本の装丁がへぼい...ドロップシャドウ...)を読み終わったので、『みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る』を再読している。
以下の記述は優れた芸術作品の共通要件だと思うが、この映画を想起させた。

本当のリアリティっていうのは、リアリティを超えたものなんです。事実をリアルに書いただけでは、本当のリアリティにはならない。もう一段差し込みのあるリアリティにしなくちゃいけない。それがフィクションです。
(中略)
フィクショナルなリアリティじゃないです。あえて言うなら、より生き生きとしたパラフレーズされたリアリティというのかな。リアリティの肝を抜き出して、新しい身体に移し替える。生きたままの新鮮な肝を抜き出すことが大事なんです。
(中略)
僕はただその人のボイスを、より他者と共鳴しやすいボイスに変えているだけです。そうすることによって、その人の伝えたいリアリティは、よりリアルになります。そういうのはいわば、小説家が日常的にやっている作業なんです。
―村上春樹

トレーラー。