英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 A Quiet Place を見た。『ア・クワイエット・プレイス』

注:ネタバレあります。

いろんな人が褒めていたけれど、全く見る予定のなかった作品。
トレーラーにも惹かれないどころか、ややイラッとさせられていた。
なぜなら、『デスノート』『あずみ』系の「xxしたらデス」という安易なシチュエーションものが嫌いだから。
物語の障害のセンスがない。
そして、私は映画では喋り言葉の対話を楽しみたいから。クワイエットなんですよ、これ。

でもこの記事読んで、そうか見ておこう、と思った。
John Krasinski Pushed to Cast a Deaf Actress for 'A Quiet Place'

『ペンタゴン・ペーパーズ』と同様、2018年という文脈があってこそ、物語のレイヤーが増しました。
音を立てるのも、ましてや声を出すのもダメ。
ちょっと前に警官の暴力に対して起こった抵抗運動のスローガン、"I can't breathe"がありありと体感できる。

上述の記事で完全にばらしてありますが、その最中であえて妊娠、出産したるーーー!という勇気。
希望のシンボルとしてよく理解できます。
権力は、あずかり知らんとこで人が笑ったり泣いたり、愛し合ったりするのを嫌いますから((c)小倉千加子)

でも一方でやっぱり『デスノート』だった。もうとにかくシチュエーションがウソなのです。
秒殺される音と、聞き逃してもらえる音の区別に一貫性がありません。
遠方の室内でランタンが倒れた音は聞こえるくせに、至近距離の足音や呼吸音に反応しないのはなぜだ。
どんだけ都合の悪い聴覚なのか。
滝壺でのホワイトノイズの説明も白々しかったぞ。

またモンスターの設定も、「生き物の出す音を頼りに獲物を見つけるヤツ」なのか「生き物の出す音がイヤなのでとりあえず音を出すものを殺すヤツ」なのか、微妙なんですよ。
感動のはずの父親殉職シーンで、「獲物の子どもたちを見つけて追い回してるのに(前者設定)、あえてそっちいくか(後者設定)」ってモヤるんですよ。
どっちでもいいっちゃいいんだけど、父親の「アイラブユー」の静かな絶叫がいまいちだったせいで、引っかかってしまいました。

もうひとつ拙かったウソは、プロップ。
地下室に父上の研究過程メモが残されるんですけど、"SURVIVE"とか"WEAKNESS"とか書いてあるんだよ。
(お子様入室禁止だったはずなのに)お子様に分かりやすくなっております。

先の記事にも特筆されていたミリセント・シモンズは熱演だった。
手話にも一番切実さ、つまり真実があった。("Just Stop it")
実際には、耳の聞こえない人が音を立てないで生活するのは聞こえる人以上に困難だと思う。
礼拝中や映画上映中に時々場違いなほど大声でささやいている(つもりの)年配者がいるが、あれは自分と相手の声がよく聞こえてないからですよね。

他にめぼしい映画のない時期、大入りでした。

トレーラー。

だまらされる社会を「おかしい」と思ったら、この本を。
息苦しさの理解につながる言葉を与えてくれます。