英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 The Woman King を見た。ヴィオラ・デイヴィス is『ウーマン・キング 無敵の女戦士たち』

ダホメ王国のAgojie(女性兵士集団)、奴隷貿易の歴史への関心を開く作品。
すばらしいパフォーマンスだけれど、いろいろなところがちょっとずつ寸止めで歯がゆかった。
それからこれは完全に個人的な問題なのだが、ファンタジー以外の屋外セットというのがどうも醒めるのだ。
『沈黙』とか、『ギルデッド・エイジ』とか)

ジョージ・フロイド事件に絶望して、ジャマイカに移住してしまったLAの元公務員の黒人女性のことをずっと思い出していた。
アメリカは見切りをつけられたのだ。
US does't deserve her.

それから、米国の軍人は帰還後かなりの確率で精神を病むが、この戦士たちはPTSDにならないのだろうかと考えた。

人が人を殴ることは、ましてや命を奪うことは高いハードルがあるように思えるが、突如として隣人同士で殺し合いが始まったルワンダ、関東大震災朝鮮人虐殺事件、最近では日本の入管で大勢が見殺しにされていることを考えると、そうでもないんだよな。

トレーラー。

映画 God's Country を見た。ジュリアン・ヒギンズ『ゴッズカントリー』

再びモンタナが舞台のスリラー。
寒々しくて絶品。

これまでも何度か書いたが、私は私有地というシステムを疑問に思っている。
本作は、土地を自分のもんにしたがった人間の罪の帰結の物語。
サンドラもその罪からは自由になれないでいる。

土地は地球のものよ。
神の、と言いたいところだが、冒頭から示唆されているように、聖書がアメリカ史の陣取りをよしとする思想に相当影響を与えているので...。

警察呼びたきゃ町に住めと言われる彼女を見て、居住移転の自由についても考えた。
人間の減っている日本でもよく議論になる、インフラのコスト削減のためにまとまって住もう問題。

ジェイムズ・リー・バークの原作 "Winter's Light"を収めた短編集。
この作家は、本作の主人公と同じくモンタナとルイジアナにベースを置いている。

トレーラー。

映画 Don't Make Me Go を家で見た。『パパに教えられたこと』

Speak No Evilを見た直後だったのもあって、余計にかるっかるのプラスチック脚本に見えた。
ナメた邦題がこの上なくぴったりだ。
ジョン・チョーを楽しむだけの映画。

私は彼が出ている作品に興味をひかれるけど、どうも血の気の多いおっさん役ばかりではないか。
キレてけんかした父親を見た娘が「あんなお父さん見たことない」というのを聞いて、「いや、前からこうやったで」と思ってしまった。
一番好きなのは『コロンバス』のおっさん。

いくらアメリカのロードムービー好きでも、もし主演ふたりが白人の俳優だったら見ようと思わなかったかも。
Representation mattersよ。

トレーラー。

映画 Speak No Evil / Gæsterne (2022) を見た。クリスチャン・タフドルップ『胸騒ぎ』

苦しい。すごくきつい。(ほめてます)

これはフィクションだ!悪に魅入られるアダムとイブのメタファーなのだ!と自分に言い聞かせなければならないほど。
救いを求めて、ビョルン&ルイーセ役の普段の笑顔の写真とか探してしまった(サンダンスでチョケてる動画とかあったら随分慰められたと思うけど監督しか見当たらない。Wikipediaにはまだ立項されていない程度のふたりだが、この作品で飛躍してほしい泣)。

事前に「カタルシスがある」という一行レビューをチラッと見かけたのがよくなかった。
いずれ逆襲があるのだろう...と期待してしまったので。

何がつらいって、特にルイーセが泣いたりわめいたりせず、粛々とイーブルに従っていくことよ。

この切ない感情、知ってるぞ、何だっけ...とずっと考えていたのだが、もう10年以上前に見たトム・シックスの『ムカデ人間』だ。
もう涙も枯れ果ててムカデのケツにつながったまま死んでいった女性の目を思い出したのだ。

それから、「旅先でなくし物をすると無事に帰宅できる」という迷信がこの映画では真だったね。
私は普段落とし物、忘れ物の類はまずしないのだが、なぜかラスベガス旅行でのみ過去3度もなくし物をしているのだ。
帰途や帰宅後に気づいてすごーくがっかりするのだけど、そのたびに、でもあれが身代わりに取られたから私は無事に帰ってこられたじゃないか、と納得できるのでかなり精神衛生上効果の高い迷信である。
今後、この映画のおかげでさらにその効果が強まりそうである。

先のレビュワーが何を指してカタルシスといったのか揺さぶってやりたい気分だが、ウサちゃんで小さき人間の善は引き継がれた、なんなら彼女がこれから裁きを下すということでよろしいでしょうか...。
あのUターンが文字通りターニングポイントでしたからね...。

だれをもそしらず、争わず、柔和で、すべての人に優しい態度を示す者とならせなさい。(テトス3:2)

グループの中で、一部の人が解さない言葉を使わない、というのは多言語社会でわりと共有されているマナーだと思うのだけど、かれらは平気でそれをやりまくり、挙句にはそもそもそしることもできないようにしてしまった。
やべえよー。

トレーラー。

映画 Three Thousand Years of Longing を見た。ジョージ・ミラー『アラビアンナイト 三千年の願い』

映画体験としては退屈だった。『シェイプ・オブ・ウォーター』みたいな後味の作品。
上映前の挨拶映像でミラー監督が、映画館で見てくれてありがとう、シアター上映を想定して作った作品だから...と言うのだが、シアターで見なくてもいい。なんならpodcastで音声のみでいい。

モチーフはものすごく面白いし、各地のジンと3つの願い話を知りたくなる刺激はあるのだが、設定説明に終始して映像的興奮はなし。「実は願いにはこういう条件が...」と後出しされるたび、知らんがな!と突っ込みたくなる。

実は私は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を見ていないのだ。
家や飛行機で見るのはなんだか億劫で。
シアター再上映の機会があればたぶんそのときが見るとき。

原作のおとぎ話集。

トレーラー。