英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Marry Me を見た。J. Lo × オーウェン・ウィルソン『マリー・ミー』

ゴージャスなバレンタインムービー2022。
一昨年のスーパーボウルのハーフタイムショーを見たときと同じ印象。
J. Loは一緒に仕事をすると妙なエネルギーが湧いてきそう。
一度、West LAで見かけた彼女はかなり小柄だったのだが。

ところで、ポップスター業界の描写を見ながら、私がヒットチャートを気にすることはもう二度とないのだろうなと不思議な感じがする。
日本にいたときは結構音源を買ってライブにも行っていたほうだと思うのだが、渡米して音楽再生機なし、テレビなし生活になると、とんと流行歌自体に興味がなくなってしまった。
さらにパンデミックで車のラジオまで聞かなくなると、「私、音楽なくて全然平気じゃん」と気づいてしまった。
娯楽が今よりはるかに限られていたとはいえ、深夜のカウントダウンTVや、週末のラジオのカウントダウンを必死で聞いていたあの頃は一体。

事務処理能力に欠けるという意味でやや世間知らずのスターをマネジャーが心温かく支える王道に、松嶋菜々子の『やまとなでしこ』の柳の下を狙った藤原紀香の『スタアの恋』がすごーくショボかったのを思い出したよね。古いだろう。

これ、人のブースで買いたくないなと思ったら1機しかない券売機が故障中〜。
あえなく言いましたよ、Marry meと。

トレーラー。

映画 Brighton 4th を見た。トライベッカ映画祭最優秀国際作品賞『ブライトン4番街』

ごくシンプルな物語。
イエス・キリストの生涯を端的に知りたいと思ったら、本作を見ればいい。
イエスの業績はこのお父さんのしたことと全く同じ。
自分の命とひきかえに私の借金を返してくれたわけ。

闘いの後、お父さんは「これで借金は帳消しだな?」と確かめてから倒れる。

イエスは、酸いぶどう酒を受けられると、「完了した」と言われた。そして、頭をたれて、霊をお渡しになった。(ヨハネ19:30)

この「完了した」(NIVやKJVでは"It is finished.")は、ギリシャ語の原書ではまさに完済を意味する言葉。

ただ、この息子さん、このあと立ち直ってまともに生きていくかというと、無理な気がする。
ついでに、このダメ男が父親の餞別をすってしまうのを見ても離れようとしなかったグリーンカード偽装業女性も、ダメンズ脱出できないままなんじゃないかな。
イエスの話を直に聞いた二千年前の人たちでさえ、大半は目覚めなかったのだから。

ブルックリンが舞台だが、全然アメリカっぽくなくて不思議だ。
もちろん、ここ西海岸にも英語以外の言葉で完結するコミュニティがたくさんあるわけだが、彼らはギャンブルソサエティを擁していてディープさが違う。

偶然ながら、リモートでパソコン越しに遺体と対面するのはシュールだけど非常に今的。

トレーラー。

映画 The Worst Person in the World を見た。ヨアキム・トリアーのオスロ三部作『わたしは最悪。』

去年、宣伝のスチールを見て「シャツが素敵!」と思って注目した作品。
↓これな。

Neon

主人公のモラトリアムに共感したし、2時間楽しめたけど、ここまで絶賛されている理由は分からず。
『WAVES/ウェイブス』でも感じたことだが、このプロットでがんを発症させるのは禁じ手ではないかと。

娘の誘いを断るとか、メールで送った記事を見てないと言うときの父親の言い訳、罪に満ちててドキドキした。その部屋の空気だけでなく、見ているだけの私にも毒が回った。
「行かない、見たくない」だけでいいんだよ(怒)
それから、そもそもこういう奴だって分かったら、周囲ももう誘わない、督促しないこと。悪が積み重なるばかりなので。
あのペ~ラペラとウソが出てくる感じといい、言い訳の内容といい、本当にうまい演出だった。

そこでイエスが言われた、「ある人が盛大な晩餐会を催して、大ぜいの人を招いた。晩餐の時刻になったので、招いておいた人たちのもとに僕を送って、『さあ、おいでください。もう準備ができましたから』と言わせた。ところが、みんな一様に断りはじめた。最初の人は、『わたしは土地を買いましたので、行って見なければなりません。どうぞ、おゆるしください』と言った。ほかの人は、『わたしは五対の牛を買いましたので、それをしらべに行くところです。どうぞ、おゆるしください』、もうひとりの人は、『わたしは妻をめとりましたので、参ることができません』と言った。僕は帰ってきて、以上の事を主人に報告した。すると家の主人はおこって僕に言った、『いますぐに、町の大通りや小道へ行って、貧しい人、体の不自由な人、目の見えない人、足の悪い人などを、ここへ連れてきなさい』。(ルカ14:16-21)

エンディングはとても品がよくて好印象。

わたしは最悪。(字幕版)

わたしは最悪。(字幕版)

  • レナーテ・レインスヴェ
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トレーラー。

映画 Compartment No. 6 を見た。ユホ・クオスマネン『コンパートメント No.6』

A Heroとカンヌ2021グランプリを分け合った作品。
ラフで生々しい筆致を堪能した。
食事をしながら喋っているローラの口元にずっとソースがついてるとか、別れに言葉がなく遠景で視線を交わすだけとか、そういうところ。
こういう映像を見ると、ハリウッド作品は概してピースとかアートというよりプロダクトに過ぎず、きれいすぎるよな〜と思う。

携帯電話が普及する直前の寒々しいモスクワ→ムルマンスクの列車の旅。
実を言うとフィンランドがスウェーデンよりはるか広範囲にロシアと接しているのを初めて知った...。
勝手ながら北欧3国は独立した房のようなイメージがあった。

これまでの自分のアムトラックの旅を重ね合わせながら見た。

虹の根元には往々にして何もないけれど、行ってみなければそれまでの過程こそが祝福なんだって気づかないものだよね。

コンパートメントNo.6

コンパートメントNo.6

  • セイディ・ハーラ
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トレーラーは本編の雰囲気と違うと思う。こういう映画ではなかった、と言いたい。

映画 Flee/Flugt を見た。ゴッサム・ドキュメンタリー賞『フリー』

緻密なデリバリーの秀作。
ストリーミングが始まっているけど、あえて劇場に見に行ってよかった。
トゥイーンを意識的に排除したアニメは照明がものすごく適切で、解像度が高いほど情報量が多いのは事実だけど、それが必ずしも真ではないことを思い知らされた。

印象深かったエピソード。ロシアから脱出した船で難破しているところをノルウェーの大型客船に見つかって難民たちは命拾いしたと喜んで声を上げたが、アミンはひどく恥ずかしかったと。老いた母とともに冷たい海の上を漂流するという極限状況でも、客船の客に珍しいドーブツを見るような目を投げかけられることになお傷つく人間という存在。(ちなみにこの客船には助けてもらえなかった)

デンマークに「身寄りのない未成年」として偽パスポートを捨てて助けを求め(その判断は正しかった)、密輸業者に教え込まれたウソの不幸をオフィサーに語っているうちに、それが事実であるかのように涙が止まらなくなってしまったこと。

彼はヨーロッパが尊厳を守ってくれると信じた。それは裏切られなかった。きちんと通訳が用意され、追い出されることもなかった。
ピルグリムの国として、「星条旗だ!もう安心だ!」と息をしてもらえる場所、Human rightsが守られる場所にしなければと思った。

疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。(マタイ11:28)

Give me your tired, your poor,
Your huddled masses yearning to breathe free,
The wretched refuse of your teeming shore.
Send these, the homeless, tempest-tost to me,
I lift my lamp beside the golden door!
Emma Lazarus, The New Colossus(自由の女神の台座に刻まれたソネット。前大統領の就任時からこれに「国に迷惑かけない奴に限る」などと付け足すセコイ富豪政治家が出てきてムカついている)

トレーラー。