ドキュメンタリー、アニメ以外の短編映画を腰を据えて見るのは12年ぶりである。友人の映画学校卒業式で数本卒業制作を見たのが最後だ。
これからも目にする機会はほとんどないと思うが、これはすごい世界だ。先の卒業制作短編は長く感じた上、何も覚えていないのだが、今回はどの作品も強烈なグリップ力で、長編1本見る時間(ちょうど120分)で5話分もトリップできてしまう。そもそもフィーチャーフィルムの長さは必要なのか?といきなりwokeしてしまう。
ドキュメンタリーやアニメと違って大手作品が1作もないところがこの部門の特殊さ。
ディズニー映画やライブのときみたいにオープニングアクト上映したらいいのにね。
どれもよかったが、夢に出てきそうな順に。
■ The Dress 『ザ・ドレス』
すさまじい。なんという残酷な脚本。演者の率直さ。あの幕切れ。あの幕切れ!(2回言った)
主人公を同僚がありきたりなことを言って慰めるシーン、「日本の俳優はこういうシーンがすごく下手なんだよなー」と思いながら見ていた。最近、日本のテレビ局のドラマを数本久しぶりに見てあ然としたので。
トレーラー。
■ The Long Goodbye 『ザ・ロンググッバイ』
『サウンド・オブ・メタル』のラッパー、リズ・アーメッドの内臓をえぐる叫びを聞け。
アーメッドのチャンネルで公開中。
■ Please Hold 『プリーズ・ホールド』
ドローン警察に逮捕され、AI拘置所に入れられたマテオの地獄。
こういう「話が通じねえ!出口がねえ!」という環境、状況、ロボット監獄でなくても今現在もあちこちにある。
とてもありそうな設定で面白かったし、「砂の女」のようにうっかりその環境に馴染んで快適にすらなってしまう瞬間が短い時間のうちによく描かれていた。適応しちゃうんだよね、人間は...。
トレーラー。
■ On My Mind 『オン・マイ・マインド』
ψυχήに始まりψυχήに終わる。5作の中では一番定石どおり。細かいところは突っ込んだらあかんやつ。
カラオケってどうしてもトホホ感がにじみ出るいいアイテムだよね。
ニューヨーカー誌のチャンネルで公開中。
■ Ala Kachuu - Take and Run 『アラ・カチュー テイク・アンド・ラン』
タイトルどおり、誘拐婚を描く。他の4本と同様前知識なしだったので冒頭、青春ものかなー、と思いながら見ていたら突然の展開に何が起きているのか分からなかった。
あくまでWikiの記述だが、日浅い「伝統」をかたる人たちのせいでまだこの風習を撲滅できていないらしい。いや、たとえ字義どおり伝統だとしても今生きている人間が幸せでなければ変えるべきなのだが。なんか聞いたことある話~。
システム、男性性、自分が受けた苦しみを次世代に引き継がせようとする先代の女性集団にも憤怒。
ただ、妹は「絶対に不条理を受け入れるな、幸せになれ」という主人公の願いを受け止めた。彼女はガソリンを消費しても、つかまる危険があってもそれだけは後進に伝えなければならなかったのだ。もうきっと繰り返されるまい。ビバ国際女性デー。ビバシスターフッド。
トレーラー。
ところで、今回は上映前になんと『愛国女子—紅武士道』の予告が流れてドン引きした。もちろん存在も知らなかった作品。日本語のセリフが分かってしまうこと以外、自分に何の関係もないのに妙に恥ずかしくなった。すいません、こんなもん輸出して...。20年前に参加した米国のツアー旅行中、バスの中で日本人客が持って来たアムロちゃんのテープが流れたときと同じくらい恥ずかしかった。
この映画館で上映するのだろうか。製作者の宗教団体がある程度、米国でも力を持っているとうことなんだろうな...。超残念だ。