英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 The Donut King (2020) を家で見た。カリフォルニアのドーナツ史『ドーナツキング』

カラフルなカリフォルニア移民のドキュメンタリー。アメリカのドーナツの歴史をカンボジアまで遡る。
ユニークな成功だけでなく、失敗の派手さも含めて、『RBG』と同じく「アメリカでなければ起こり得なかった」アメリカ人史である。

実は、大学の卒論のテーマを「ユダヤ系と映画業界」、「韓国系アメリカ人とニューヨークの青果業界」、そして「カンボジア系アメリカ人とドーナツ店」のいずれかにしたいと考えていたのだった。諸々あって結局全然異なるものを選んだのだが、アメリカであるコミュニティが特定の市場で覇権を握った歴史に関心があったのだろう。

で、ドーナツの件に関しては、この映画で十分知りたい欲が満たされた。
あのアイコニックなピンクの箱、既存チェーン店が使っていた白色の箱よりも10セント以上安かったので採用したんだって!
今は製紙、印刷技術も変わっているだろうけど、紙の漂白って、コストかかるんやな。

食べ物を作って売る商売は実にいいな。まさに「実業」という感じがする。

この映画に出てくるテッドクランのお店のひとつが、うちから20分の場所にあることが分かったので明日行く。
ダンキンのほうが近いけどあえて行く。
一度はテッドのチェーンに阻まれて西海岸から撤収したものの最近再度猛襲をかけているダンキン。
ダンキン開店の日に、むしろ長蛇の列が途切れなかった、お客さんも「ダンキンもクリスピークリームもパスしてこっちに来たの。だって美味しいもの」と言ってくれるなんて、素敵な話じゃないですか。
みんなで買い支えないとね。

本編を貫くのは、移民の国アメリカのバイタルとしての移民政策礼賛である。
渡米直後には多方面から支援を得て(教会がスポンサーに)、成功してからは「アメリカに恩返ししていきたい」と情熱を燃やす人たち。

ちなみに、テッドさんは故国カンボジアでも政治に関わっているほか、米国では一貫して共和党支持で、上層部ともおつながりがある様子。
渡米の機会を得たのがフォード大統領のときだったからでしょうか。
今年はどうしたんだろうな...。

ていうか、本来は共和党もこのアメリカン・バリューだけは死守してたはずなんだけどね。

今月、日本の知人たちが口をそろえて「トランPが良いとは言わないけど、民主党政権になると(以下苦情)」と言ってくるのでうんざりしている。
たぶん、日本のメディアがそういう論調なんだろう。

今回は特殊だったんだよ、良い治世以前に、とにかくアメリカの建前を取り戻す闘いだったの。
私は真っ青な州でも特に濃紺のエリアに住んでいるので(投票所が閉じるのと同時に青勝利ゼロ打ちになる)、ある意味サンクチュアリにいて、4年間しんどかった、とかおこがましくて言えないけど、それでも心からホッとした。
だから、台湾やヨーロッパの友人や、各国首脳からの「おめでとう、アメリカ」の言葉がとても嬉しかった。
ま、パリ市長の「おかえり、アメリカ」というのは心象にピッタリながら公人がすげーこと言うな、と思ったけどね。

ところで本編では、テッドさんはじめ、第二言語として英語を話す人たちの英語にはキャプションがつくんだけど、同じくカンボジア生まれで英語を身につけたっぽいのにキャプションがつかない人もいるんだよ。
私が聞くと、どちらも変わりないように聞こえるけど、英語が第一言語の人が見て、キャプションがつかない人の英語のほうが聞き取りやすいということなのだろうか...。

◆12/2021追記◆
日本で戦時中に配布された赤紙が赤くなった所以もドーナツの箱と同じくコスト削減(染料不足)だったと知った。
目を引くためのデザインじゃなかったのね...。

キング・テッドの著書。

トレーラー。