英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

2020年アカデミー短編ドキュメンタリー映画賞ノミネート作5本を一気見した。

一気に見ると面白いことがいろいろあった。
まず、いろんな言語を一度に楽しめたこと(St. Louis Superman以外は全編ないしは一部分を英語字幕で鑑賞)。
それぞれの編集のしかたの違いが相対的に見えやすくなったこと。

印象に残った順に。
■ In The Absence『不在の記憶』
セウォル号沈没事故を扱う。ただただ記録映像が圧巻。
「難民、ファーガソンについての作品がある」という前知識だけで行ったので、こんなテーマの作品もあったのかというインパクトも個人的には大きかった。

ようやく船が引き上げられたものの、近寄らせてもらえない遺族たち。
「まだ何か隠してんのか!」「子どももこうして上から言われるままに従って死んだんだ!」という金網越しの絶叫に、涙を拭う体制側の警官の姿もこたえた。
それから、海中での遺体・遺品回収作業に携わり、数年後にPTSDを乗り越えられず亡くなったダイバーの残した声も。

■ Life Overtakes Me『眠りに生きる子供たち』
Resignation syndrome(生存放棄症候群)の特徴が非常に興味深い。
スウェーデンでのみ起きている、というのは単に自殺の連鎖や集団ヒステリーと同じで、無意識で「そういう方法もあるんだ」と認識したことによるサイキの影響だと思う。
実際、妹に続いて姉まで同じ症状を示すようになってしまった...という例が紹介されていた。

あとは、スウェーデンの避難環境が少なくとも他地域と比べてマシなこと、「意識を失っても身の危険はない」と子どもも分かっていることも大きいのではないか。
在留ステータスは不安定だが、まともな住宅で医師の往診を受けられ、筋肉を動かしたり、無反応でも一緒に食卓につかせたり、散歩に出たりと必死に世話をしてくれる家族がいる。
もし、米国の移民拘留センターなんかで眠りに逃げたら、放置されて死ぬだけである。
だから米国で強制送還に怯える子どもたちにはこの症状は発生しない。
東京の入管に親をとられた子どもたちも似たようなものではないかと思う。

それにしても、親御さんたちはタフだ。自分自身、故国であれほどの地獄を見ているのに...。
セウォルのダイバーさんみたいにならないように、しっかり自分もいたわってほしい。

Netflixで公開中。
https://www.netflix.com/title/81034980

■ St. Louis Superman『セントルイス・スーパーマン』
アクティビストでラッパーのBruce Franksの闘争。
彼もまた、本編の撮影後にも次々と知人が銃弾に倒れてしまったことでうつ症状が出て休みをとっているという。
引っ越しちゃう、という選択肢は彼らは取らない。悲痛だ。

■ Walk Run Cha-Cha『ウォーク・ラン・チャチャ』
「パフォーミングアーツに目覚める中年」を追った短編ドキュメンタリーって定期的に作られてるよね...。
学生の作品を含めて、覚えてるだけでも4本目である。
今回はここロサンゼルスに住むベトナム系の夫婦が主人公。
最後の本番パフォーマンスは良かった。後ろの座席のおっさんもしきりにsweetと絶賛していた。

■ Learning to Skateboard in a Warzone (If You're a Girl)『ラーニング・トゥ・スケートボード・インナ・ウォーゾーン』
ハリウッドのリアリティ番組みたいな体裁でちょっと編集がうるさかった。
もちろん、女の子たちには勉強もスケボも続けて夢をかなえてほしいと心から願いました。

2/9/2020追記、
とはいえ、Learning to Skateboard in a Warzone (If You're a Girl) が受賞。

In The Absenceは、YouTubeで公開中。
人間として、私はこの船長を責められません...。ただ悲しい。