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在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

ジェニファー・リー『アナと雪の女王』監督に聞く その2

「アナと雪の女王」に命をふきこんだジェニファー・リーと仲間たち、その制作過程について。
Fast Company誌インタビューから抜粋。
HOW "FROZEN" DIRECTOR JENNIFER LEE REINVENTED THE STORY OF THE SNOW QUEEN

Fast Company(FC):
「アナ雪」への参加が決まったとき、既にその制作は進んでおり、作品としての着地点を探している状況でした。どのように新たな方向づけを行ないましたか。

Jennifer Lee(JL):
元はアクションアドベンチャーの要素が強かったのですが、私たちはもっとミュージカル、コメディを盛り込みたいと考えました。私はソングライターたちと脚本作りに取り組み、ああでもないこうでもないと議論を尽くしました。同じフェイズに立ち、ビジョンを共有するところから始めたのです。ボビーとクリステン(ソングライティングチーム、ロバート&クリステン・アンダーソン・ロペス夫妻)のアイデアには興奮しましたし、彼らも私のアイデアを気に入りました。
パワフルで感動的な物語であるだけでなく、楽しくて壮大な叙事詩のような、何か大きな作品にしたいと思いました。

FC:アニメのプロダクションにおいて、脚本家が監督よりも発言力を持つのは珍しいこと。それにあなたは実写映画の出身です。その経験は、たとえばアニメ映画一筋の監督たちとは異なる、新たな視点で作品にアプローチするのに役立ったのでしょうか。

JL:脚本家として、私はキャラクターたちについて誰よりも熟知していました。たとえば、彼らの行動の動機や、あるシーンがもつ意味を説明できるわけです。それに、スタジオのアーティストたちがなすべきことを教えてくれるのが面白かったです。つまり、私の言いたいことのエッセンスを彼らが抽出してくれる感じ、それで結果的にすばらしくバランスがとれました。
技術的な面でいえば、私はキャメラとスコープをどう使いたいか分かっていました。実写で培った、アニメとはちょっと違うやり方で物語をつづる方法です。どう違うか?そうですね、私は、アニメよりももう少し、広い視野で撮るトレーニングを受けてきました。

FC:たくさんの意見があふれるスタジオで、アニメ映画の脚本家兼監督としてどうやって自分のビジョンを展開したのでしょう。

JL:なかなか難しい局面があったのは確かです。プロセスのどこにいるかによってそれは変わります。
まさに始まりの時点で、何もないところからスタートして作品を構築していこうとするときは、ビジョンを押し通すのはかなり大変です。自分が固執しているアイデアがあるなら、常に皆にそれを思い出させなければなりません。オープンになって、自分が、いい!と思うことを示し続けることです。

FC: つまり、10の選択肢を見せるより、最重要アイデアのロビー活動をするという方法をとった?

10のアイデア全ての実現がムリというわけではありませんが、映画の基盤というのはたいてい、ひとつの偉大なアイデアでできているものです。明確に語れないものはビジョンではないと常々思っています。そしてまだビジョンを持っていないのであれば、たくさんの意見を聞いて、アイデアを研ぎ出す過程を経るべきです。

「アナと雪の女王」の場合、真実の愛のふるまいに関係する物語にしたい、と私たちは考えました。それも、愛をこれまでにない角度から照らし出したい、と。そこに姉妹を置くことも決めていましたが、どう物語を転がすかは未知数でした。

それが明確になったのは、原作に戻り、「私にとって最もエキサイティングなのは、恐れを超えた愛の力というコンセプトなのだ」と気づいたときです。アナは愛の体現、エルサは恐れの体現として物語を演出する、と私は説明しました。全員がそれを理解し、やっと同じ場所に立ちました。
私がこのコンセプトをはっきり言語化するまでは、数多くの「じゃあ、これは?」がスタジオに飛び交っていました。でも、いったん決定を行って制作を開始した後は、二度とそこから離れませんでした。グレーな混沌状態にまかせ、全ての色を失ったときに、改めて本当の色を見出した、というところです。

FC:生み出したものを捨てたことは? つまり、周囲の賛同を得られずにあきらめたアイデアはありますか?

JL:ちょっとあきらめたこと、流れるに任せたことはたくさんあったと思います。でもそれは全て、「もうちょっと良い説明のしかたがあったのかも」という教訓でもありました。
分かりやすい例はアナでしょう。私は、成熟への旅をする少女をイメージしていました。寂しい幼少期を通じて、人生と愛に対してナイーブな期待をしていた女の子が、自分が犠牲になるという究極の愛を形にして、洗練された大人に成長する、という筋書きです。私がアナに求めたのはそれだけでした。けれどチームは、彼女をもっとハチャメチャで甘えん坊の『シュガー・ラッシュ』のヴァネロペみたいなキャラクターにしたがったのです。私にはそれに対してノーを言えるだけの理論はありませんでした。

でも、あるアイデアに対して、適切でないと決断すべきときもあります。それは大勢に影響しますし、簡単なことではありません。それでも「そのアイデアは尚早、この映画にはフィットしない」と言わなければならないのです。

FC:実際にそう言ったことがある?

JL:ええ、大きなことではありませんが。ティーン時代の姉妹をおどけた楽しい調子で表現したくて、ひとつの化粧室を共有するシーンができないか考えました。でも物語上、ふたりを隔離させる必要があったので、使えませんでした。エルサはアナとの間のドアを閉め切ると決めたので、私たちは彼女の決意を変えることはできなかったのです。それでそのシーンはカットしました。

FC:2014年にディズニー長篇アニメの最初の女性監督になれたのはなぜでしょう? あなたがブレイクスルーになった要因は何だと思いますか?

難しい質問ですね。ひとつ言えるのは、アニメ業界において、いま現在と、共同監督であるクリス・バックが参入した時点とでは大きな違いがあるということです。彼がキャルアーツに在学中、女性のクラスメートはひとりだけでした。ジョン・ラセター(ウォルト・ディズニー/ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサー)も彼の同期です。全ての学科において、女性の監督はほぼゼロだったのです。現在、キャルアーツの半分は女性が占めていると思います。

私は今多くの女性と一緒に仕事をしていますので、女性の割合がどう、というようなことに気づきませんでした。新世代なんでしょうね。けれど、通常は監督として認められるまでには長い年月がかかります。ここに他にもふたりの女性監督がいるのは、次の時代のきざしだと思います。短篇『ミッキーのミニー救出大作戦』を作ったローレン・マクマランと、『ウェイン&ラニー クリスマスを守れ!』のスティーヴィー・ワーマーズです。女性の活躍は珍しいことではなくなりました。

FC:ふたりとも、ディズニーのベテランで長くアニメ畑にいますが、あなたは…

JL:(笑)私が割り込みしたなんて言わないで。

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<追記>
Creativity Inc.の和訳本が出ました。翻訳家の方がうらやましい!
それにしても、いい加減、電子版を同時に出すようにしていただきたいですね...
出版社にとっても大きな機会損失だと思います。

元記事:
HOW "FROZEN" DIRECTOR JENNIFER LEE REINVENTED THE STORY OF THE SNOW QUEEN
http://www.fastcompany.com/3027019/most-creative-people/how-frozen-director-jennifer-lee-reinvented-the-story-of-the-snow-queen

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