NPRの人気番組Fresh Airに、"Let It Go"を書いたソングライタークリステン・アンダーソン-ロペス、ロバート・ロペス夫妻が訪れました。その内容の書き起こしです。(一部省略あり)
音源はFresh Air ウェブサイト上で聞くことができます。クリステンが軽やかな生歌も披露しているので、おすすめ。
テリー・グロス (TG):
お子さんのいる家では「アナと雪の女王」の歌の数々はもうおなじみでしょう。子どもたちが繰り返し口ずさんでいますね。そのうちの1曲"Let It Go"は、本年度アカデミー最優秀主題歌賞を受賞しました。
今日のゲストは「アナ雪」の歌を作ったふたりです。ロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン-ロペスは夫婦で、お子さん二人もサウンドトラックに参加しています。ロバートはブロードウェイミュージカル"Avenue Q"と"The Book of Mormon"にも楽曲を提供しました。さらに彼はEGOT4冠(エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞)を達成した数少ない作家の1人です。クリステンとロバート連名では、「くまのプーさん」(2011)の歌も手がけています。
お二人ともようこそ、オスカーおめでとうございます。"Let It Go"は、まさに物語のターニングポイントで歌われますね。エルサが何の邪魔も入らない場所で、自分の力を解き放つシーンです。この歌を作ったときのことを聞かせてください。
クリステン(K):
"Let It Go"は、エルサがずっと秘めていたパワーを解放し、「自分のマスターになる」場面のために書きました。村から追われ、山をめざし、雪の女王に変貌をとげます。実はこの時点で、エルサはほとんど悪役扱いだったのよ。
ロバート(R):
そうそう、エルサは悪役だったんだよ。青い肌に、ツンツンヘア、街に降りるときは邪悪なスノーマン兵士を連れて行くんだ。最終形は全く違うものになったけど、それまでにかなりの紆余曲折があった。
「悪役エルサ」が変わり始めたのは、"Let It Go"ができてからなんだ。でも歌の中には悪役時代の詞が残っているよ。
K:Let the storm rage on(嵐よ、巻き起これ)ね。
R:Let the storm rage on、そしてthe cold never bothered me anyway(少しも寒くないわ)のくだりは、悪役エルサの言葉そのものだよ。でも、この歌を作ることになったとき、近所のブルックリンのプロスペクトパークをちょっと散歩したんだ。で、二人でエルサがどんな気持ちか、即興で歌い、アイデアを出し合い始めた。ピクニックテーブルの上に立ち上がって…
K:
二人とも胸がいっぱいになったの。私たちはエルサの声を聞いた…。 それで、この歌は伝統的なディズニーのお姫様ソングにはしない、と決めたんです。それでシンガーソングライターのエミー・マンやトリ・アモス、サラ・バレリーズの歌を聞き込みました。この歌には何かそれまでとは別の方法でアプローチしたかったから。
ボビー(ロバートの愛称)がずっと言い続けてたのは、「遊びに行かないで必死で勉強したのに、テストで悲惨な点をとった高校生の気分だよね」。それはいったいどんな気分?そのまま彼はフレイズを作り上げました。
だから、ドラッグクイーンが歌ってるように聞こえる部分は、全部ボビー作よ(笑)。
TG:あら、どのフレーズかしら?
K:ほら、あそこよ。
R:僕が歌ったら全部ドラッグクイーンだよ。
K:そうね、彼が歌うと何でもドラッグクイーンだわ。
(歌う)The kingdom of isolation, and it looks like I'm the queen.(人里離れた王国、私はまるで女王)、ここを書いたのはボビーよ。私はもう少しフェミニストらしい詞を書いたから。
R:女性のエンパワーメント。
K:Be the good girl you always have to be.(いつも大人しい女の子でいなきゃ)は私が書いたところ。私のラインにはもう少し女性の目線が入っているわね。それに…
R:一度アイデアをつかんだら、あとはすぐに出てきたよ。そう、1日半くらいで。
TG:では、"Let It Go"はガール・パワーや女性のエンパワーメントを歌っているんですね。作曲中から「よし、このミュージカルにはエンパワーメント・バラード、パワー・バラードが必要だ」と考えていたんですか?
R:いいえ、初期段階の曲目依頼リストから上がってきたアイデアではありません。僕らはそのリストを「物語の中で何が起こっているか」という観点から見ていたんだ。"Let It Go"のシーンは、シャイで、いつもありのままいることを恐れてきた抑圧された少女が変貌をとげる瞬間だと思った。歌の終わりには、自分自身のパワーを受け入れた「誰か」に変わるだけではなく、肉体的にも変身し、自分の宮殿、そう、比喩的にも「彼女自身の宮殿」を山の中に建て上げるんだ。
それで、OK、歌のシーンとしてパーフェクトだ、と思った。カットはさせないぞ、と。
TG: 親御さんたちは、子どもたちが hold it in, hold it in(おさえろ、おさえろ)と歌ってくれるほうがよかったんじゃないですか。(笑)
おさえろ、なぜなら、子どもたち - かれらの本来の姿はクレイジーですから、ありのままでいてほしくないと思うときもあるでしょ。お分かりいただけるでしょうけど、規律は守ってほしいですよね。
K: そのとおりです。でも1日の終わりには、「自分のあるべき姿を恐れたり、恥じたりするな」というメッセージを伝えたい。世界中の子どもたちに、早いうちに知っておいてほしいですよ。かれらが恐れや恥を感じて生きているなら、きっと良くない影響が出てきます。
TG: あなたはオスカーを受け取ったとき、同じことを端的におっしゃっていましたね。二人のお子さんへの謝辞で、「スペシャルな自分でいることを恐れないで、恥じないで」と。それを聞いて思ったんです、あなたも子どもの頃、恐れや恥と闘ったことがあるのかしら、と。
K:ソングライターは「キャラクターの性格になりきって書いている」と言い張るものですが、ミュージカル化して歌詞に落とし込むと、自分自身の中の小さな何かがにじみ出てきます。私が思うに、"Let It Go" で、ボビーと私は、恐れや恥をもたない生き方を表現しなきゃいけない、という気持ちがあったのよ。
小学生の女の子にとって、教室の隅にちぢこまって、ただただ「今日は悪いことが起こりませんように、からかいの標的になりませんように」と祈るような日々はどんなにつらいか。
今も女性ライターとして、母として妻としてたくさんの時間を注ぎ込み - 少なくとも私はたくさんの時間を使っています - すべてのこと、すべての付き合いが良いものになるよう努力し、良き母、良い市民であろうとし、レッドカーペットですっきりジーンズをはきこなせるよう心がけています。そこで、「あれ?」と思うわけ。でも私、フレンチフライが食べたいわ、って。
(その2につづく)
ingoditrust.hatenablog.com
西海岸のアニメ業界で仕事したい!と思ったら、まずこの本。
「まずは現地を見る」など、ディズニーとピクサーのやり方にはそもそも共通点が多々あったことが分かります。
<追記>
Creativity Inc.の和訳本。
2014年4月10日放送 NPR Fresh Air
Songwriters Behind 'Frozen' Let Go Of The Princess Mythology
http://www.npr.org/2014/04/10/301420227/songwriters-behind-frozen-let-go-of-the-princess-mythology
こちらもどうぞ。
ingoditrust.hatenablog.com