英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Midsommar を見た。完成度高めのあかんやつ。『ミッドサマー』

注:ネタバレあります。
これは... 気をつけないと悪いものに取り憑かれると思う...。
物語の中で赤ちゃんがずっと夜泣きしてたのは、ヘンな霊が流れているからでしょう。
実際、この映像を赤ちゃんの前で流したらギャン泣きするんじゃないかな。

というわけで、トレーラーで分かっていたとおり、Ebertの評価が異常に高いニューエイジャー的「あかんやつ」だった。
『ア・ゴースト・ストーリー』『パーソナル・ショッパー』と同じ事態。

ミッドサマー(字幕版)

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  • フローレンス・ピュー
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でも誘ってもらったおかげで見ることができて良かった。
好きではなかったが、この某スウェーデン「文化」の完成度はとても高いと思う。
2時間半飽きずに見られたので。
もちろんフィクションのコミュニティなんだけど、民俗学、文化人類学、宗教学の面白さですね。

ただ、アーティファクトとメーキャップにちょっと予算ない感が。
Traditionalと言うわりには石碑とか象形文字とか壁画とかがしょぼいのよ。

ここの「文化」の男性性の扱いはわりとひどい。
女系で男は種馬、でも生贄には使うからケガレではないんだよね。
(かれらの生贄感は違うかもしれないが、普通は最高級のものを献上するので。ジーザスしかり)

男性たちが焼かれたことでダニに笑顔が浮かぶわけで物語上は必須の設定なんだけど、もしジェンダー役割が全部逆だったらもっと石投げられてるかもしれない。いや、投げられてる。

それよりも、私は最初の「姥捨」のほうが辛かった。
最近、安楽死の議論を読んだり、体が動かないだけでなく茫然自失状態のお年寄りがたくさんいる施設に何度か行ったこともあって。
やはりお年寄りを有り難がるコミュニティのほうがいいわ、絶対に。

各地の宗教をみていくと、太陽含めた星回りが基盤になっているものが多い(12/25がいろんな宗教の祝日だったりとか)。
白夜が人間の文化に及ぼす影響は大きいだろうね。
夜通し遊ぶお祭りが多彩とか手元の話だけでなく、夜がこないというのはたとえば三大宗教の価値観からもかけ離れてる感じがするし、神観も異質なんじゃないか。
ある意味、悪魔的に思える。

冒頭、ダニの家族に起こった悲劇ってちょっと悲惨すぎじゃない?
伏線としても、あそこまでする必要あった?
彼女はもうコミュニティから出してもらえないだろうし、あそこに元クイーンとして残るんでしょうか。

トレーラー。
何の映画の前だったか、このトレーラーが上映されて間髪入れず "No, thank you〜" とおばさんの茶々が入り、館内に失笑が漏れたときがあった。まさに同意だったわ。

7/10追記、
装置や小道具がしょぼい、と悪口を書きましたが、やっぱり「新興宗教」としてはそれでいいのだろうと思いました。
人間が霊感を受けて作ったものと、人間が自我や欲など肉の力だけで作ったものとは完全に違います。
前者は、今見ても知らぬ間に涙がこぼれてくるような「本物」。聖句や阿修羅像や法隆寺やゴッホの名画を例として挙げます。
後者で思いつくのはイタリアのダマヌールとか、我がカリフォルニアのサルベーション・マウンテンあたりですね。
「信者」は「あれは人の業じゃない」とか言うんだけど、あくまで人間が作ったニセモノであって全然心打たれない。この映画の集落のアートはこれにあたる。

2/10/2020追記、
上述の追記の件で、スポルジョン牧師がうまいこと言っているのを見つけたのでメモ。「自分のための彫刻」がすなわち、ニセモノ。

ある清教徒は「クリスチャンが自分のために彫刻するならば、必ず指を傷つける」と言ったが、これは大きな真理である。

映画 Wild Rose (2018) を見た。ジェシー・バックリー is 『ワイルド・ローズ』

よかった。うんうん、「ふるさと」へのあこがれがカントリーだよねえ。
まちや家族やジモティや、イエスが神の右の座につかれている天国や。

いみじくもローズが「ウェスタン・カントリーじゃねえよ、カントリーだっつってんだろ」と繰り返していたように。

歌はどれも素晴らしかったけれど、ラストの歌詞はちょっと説明しすぎ。
日本人から目線だが、私だったらグラスゴーの良さを活写するに留める。
カントリーの歌詞ってそういう特徴ありませんか?
ホッパーやワイエスみたいな描き方なの。
間違ってもズバリ ain't no place like home とは言わせない。

ナッシュビルに行くお金くれたお母さんの気持ち、痛いほど分かるなあ。
どれだけそれが現実的な家族思いの選択であっても、愛する人が夢を諦めて元気をなくしてるのはつらいよ。

ナッシュビルをフィーチャーした映画を見たのは初めてかもしれない。
ローズの滞在時間は短かったけどね、モーテルのお姉さん良かったです。
ひなびたグラスゴーも郷愁を誘った。

ワイルド・ローズ [DVD]

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  • ジェシー・バックリー
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サウンドトラック。

Wild Rose

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トレーラー。

ところで、私が一番好きなカントリーアルバム。

当然、アメリカを讃える歌はカントリーシンガーの十八番。
私は通学、バイト通勤でリアン・ライムス版を毎日聞いてアメリカに焦がれていました。

映画 Yesterday (2019) を見た。ダニー・ボイル監督『イエスタデイ』

結構楽しみにしていた作品だけど、企画負けかな。
脚本がとっ散らかって、しっちゃかめっちゃか。
喜劇に欠かせない脇が心もとないくせに、いらん人が多すぎる。
『ボヘミアン〜』は物語はいまいちでも音楽のレガシーとパフォーマンスを体感する喜びがあったけれど、本作はそのへんも中途半端。
妙にエド・シーランの宣伝を見せられただけのような気もするし。

マチネで$5で見られたのだが、ちょうどそのくらいが適正価格かな。

全編ウソをつくしんどさに貫かれているが、Help! がジャックの言葉そのものになって吐き出されるのは興味深かった。

ところで、ジャックにお礼を言いに来たファン2人のように、ビートルズはほんとに1人1人感謝のハグをしたいよね。
ペニーレイン、ストロベリーフィールズ、そしてこの私の記憶も鮮明に書き残してくれてありがとう、と。
もちろんリヴァプール行ったことないよ。でも In my life なんか聞くと彼の地の郷愁が全く人ごととは思えない。
関西人やのに「中央フリーウェイ」の車窓に感情移入するのと同じかも。

イエスタデイ (字幕版)

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  • ヒメーシュ・パテル
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トレーラー。

リンゴが一番長生きしそう。105歳くらいまで。

映画 The Last Black Man in San Francisco を見た。『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』

PLAN B 製作作品。安定の高品質。

足、バス、そしてスケボーの上から愛しては憎むサンフランシスコの街。

停留所を間に挟んだ『ゴドーを待ちながら』を思わせる構成も巧み。

古い不動産や土地を私人が所有するという近代の人間のアイデアにしばしばくすぶる思いがある。
なぜあなたに所有権を主張したり、建物を壊したりする権利があるわけ?と。
京都の町家を売り払ってマンションにする土地持ちとか。
生まれながらに継がされた家をどうしようが自由であり、「自治体から買い取りの話もあったが折り合いつかず」「公開して知らない人が入り込むのも」などという貧乏くさい理由で歴史的建造物を壊す考え方にはついていけない。

昔の人が決めたルールで人類の一部の人だけに「土地」からお金が転がり込む状況は意味不明。
その土地と家は本当~にあなたに属する財産なのか?と疑問に思う。

新参者に土地を「奪われた」アメリカ先住民の不条理な苦しみはいかほどのものだったか。神のものでしょ、土地は?
地質学の教授は言っていた、「土地は誰のモンでもないで、地球のモンや」。

だからね、ジミーのおじいちゃんも、ジミーも決して悪いとは言えないと思うの。
不動産屋のほうがよほど正当な所有の根拠に欠ける。

ところで、自宅屋根裏で上演する劇(『若草物語』みたいね)にあれほど人が来てくれるというのは、めちゃくちゃコミュニティの意識高くないですか。

個人的に興味深かったのは、白人(不動産エージェントやビクトリア建築の隣人、観光客等々)が出てくると急にジミーとジョナサンの言葉が分かりやすくなること。
白人ズがそれぞれ主役の身内ではない→お互い大人語で喋ってるせいもあるが。
私の英語力もまだまだである。

トレーラー。

余談、我が大阪が大いに迷惑を被ったG20で、ホストである我が国の首相がすっかりカヤの外、時には素無視された状況が伝わってきています。
やっぱり、国際政治業界の公用語ができないのも一因でしょう...。
大阪城エスカレーターのスピーチなんて、なぜ日本語でやってるのかナゾだった。
一体誰に向けて話してるわけ?

習主席と金委員長も少なくとも表向きは英語を話さないようですが、彼らはいいのです。殿様商売できる国だから。
でも日本の場合は「あっちが合わせてくれる」ことは二度とない。
AI通訳・翻訳を使うのを前提とした英語教育~などまだまだ論外。
極端な話、英語じゃなくてもいい、自由に自分の言葉をコントロールできるようになるために、何か1つ外国語を学ぶのが必須だと思う。

Anyone that doesn't know foreign languages knows nothing of his own.
--- Johann Wolfgang von Goethe

ついでに、大統領と金委員長の板門店対面、1人北朝鮮に向かって歩を進める大統領の背後で韓国側から目立たないように見守る文大統領の姿に泣けた。(後で金氏が韓国に入ってからは迎えに出てきましたが)
結婚式会場に入場する新郎新婦を背後でお辞儀して送り出すウェディングプランナーさんの姿を思い出した。
形だけかもしれないけどね、見えないところで誠意を尽くす裏方の姿が尊く見えるのです。

映画 Late Night を見た。エマ・トンプソンの『レイトナイト 私の素敵なボス』

喜劇の才媛、ベストセラー自叙伝、Is Everyone Hanging Out Without Me? を書いたミンディ・カリング脚本・出演作品。

驚きは一切なかったけれど、ライター業界モノの側面もあり、まあまあ面白かった。
最近だと『グリーン・ブック』で盛んに指摘されたwhite saviorをむしろネタにぶっ込んできた(ちょっと笑っちゃったけどあまり成功していたとは思えない)。
まだまだ、ハリウッドのdiversityの試行錯誤は続きます。

ミンディ・カリングは物語の中の役割も演技も薄味すぎた。

エマ・トンプソンの人物設定に無理な負荷がかかり過ぎ。
素で考えて、スタッフを番号で呼ぶような人物の番組が10年以上も続くわけがないでしょう。
でも彼女はステージの去り際の残心が宝塚スターみたいでカッコいいですね。

Honesty works. たとえ、ウソ八百を弾丸で吐き出すコメディであっても。

トレーラー。