英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

ドキュメンタリー The Inventor: Out for Blood in Silicon Valley を見た。エリザベス・ホームズのセラノス狂詩曲

本編でインタビューに答えたエンジニアさんの言葉を借りる。
I "want it to be true so badly."
いやだって、初めて彼女の事業を知ったとき、素晴らしい王様のアイディア!と思ったもの。

私はサニーとつるんだのが彼女に悪影響を及ぼしたと思う。
従業員のメール監視を始めちゃうメンタリティね。
もっとビジョンを重視するパートナーだったら違ったんじゃないかな...
あまりに急激に資金を集め過ぎたけど、正直にゆっくりやったら良かったんだ。

彼女は10年事業に関われないペナルティを受けていますが、また戻ってきてほしい。
こまごま実害はあったけど、幸い健康被害を受けた人はいないようだし、富豪の投資が溶けただけでしょ。
あの若さで優秀な従業員800人牛耳って、権力者を動かしてるのはすごいぞ。
FDAの認可を下ろさせて!しまったほど。

再起不能のオボ事件と比べても、こっちは望みがあると思う。
家族の死や東南アジアでのインターンを経て、人を助けたい、その思いが「エジソン」という形で展開していっているのは感謝だ、"gift from God"だ、と表現したのはウソじゃなかったと思うのよ。
オボの「ありまぁす」は病気だったけど、エリザベスの「できます」は、必ず作って見せるという信仰だったんだよ。
冒頭で紹介されたエジソンの電球のように、ジョブズの現実歪曲空間のように、四次元では、あるいは彼女の霊の世界では既に見えていたの。
ただ、現実化までにはタイムラグがあるのが普通で(そこに信仰発動の余地がある)、それが今回の場合はマーケティングと周囲の狂騒に追いつかなかっただけで...。
生きたものを扱うのは、ウェブプロダクトや電気機器のようにはいかなかったんですね。

そう思うと、Fake it till you make it というのはある意味、聖書的だな。
「光よ、あれ」と言葉を発して、光が既にあると信じて疑わなければ光はできる。
ハタから見ればfakeな態度に見えるでしょう。

だれでも、この山に向かって、「動いて、海にはいれ」と言って、心の中で疑わず、ただ、自分の言ったとおりになると信じるなら、そのとおりになります(マルコ 11:23)

話としてはオボ事件と比べるとからっとしてますね。
あっちは、論文に関わった博士たちが途中まで本当に信じていたようですごく気の毒だった。1人は命まで落とした。
でもセラノスは、ラボの人たちが「これあかんやつ」って自覚してて、どんどん消えたり造反したりしてる。

Bad Bloodは去年、私の周囲で一番話題に上ったノンフィクションでした。
アダム・マッケイ監督、ジェニファー・ローレンス主演で映画化されるらしいけど、また『バイス』かよと思うと今からウンザリ感。見るけど。

まあでもこっちのほうが面白い。もう4回も読み返したバイオスリラー。

トレーラー。今、街に彼女の瞬きしない目をフィーチャーした怖いビルボードが乱立してるんですけど、インパクトがすごいです。
美人だよねえ。なんちゃってタートルネックで着るものを選ぶ手間は省いても、金髪にはこだわる(ブロンドまでウソだった、とか書かれる始末)。
プリンにならないように手入れするの結構な手間だと思う。
もう何年前になるか、初めてインタビューを聞いたとき「あれ、ビデオが低速になってる?」と思ったのは私だけではあるまい。