英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Loving を見た。ジェフ・ニコラス脚本・監督『ラビング 愛という名前のふたり』

最後の最高裁の判決(キャプションが出るだけです)にジンワリと涙があふれた。

個人的に、リチャード役のJoel Edgertonに、今年度最優秀主演賞を差し上げたい。
ただただシンプルで、自分にも他人にも正直な人物像をチャーミングにクラフトした功績(オージー訛りの克服を含む)に対して。

リチャードとミルドレッドの2人はご近所さん同士、幼なじみで一目惚れ。当然のように結婚した。
気に入った土地に家を建て、体を使って働き、家族で食事をとり、夜は静かに眠る日常を送りたい。
そんな簡単なことが、なぜかなわないのか。

家族たちはYou knew betterと言うけれど、ことを複雑にしているのは夫妻ではなく、その周囲なのだ。

素朴な表情と肉体に、リチャードという人のすべてが表れていた。
彼を見ていると、"Love is a verb"という言葉が腑に落ちる。

脚本、演出も抑えが効いていて素晴らしい。(これ、「クイーン・オブ・キャトウィ」みたいに料理されてたらと思うとゾッとする)
私はこの作品の中でLoving夫妻が一度も口論をしなかったことに感謝する。
ドラマ構成的に中腹で一度は「やっぱこんな結婚やめときゃよかったじゃん!」みたいな修羅場がありそうなのに、疲れたり倦んだりすることはあっても、2人が声を荒げることはなかった。結婚を疑うことはなかった。
自分たちにrighteousnessがあることを、知っていた。それを言語化できなかったとしても。

「あ、怒鳴り出しそう...」という流れでも、リチャードは抑えた声でミルドレッドに意見した。
ミルドレッドはきっぱりと希望を述べ、リチャードは受け入れた。

思い返せば、警察やワルめ枠の人たちも一貫して静かだったな。
暴力的だったのは、警察が夜間にドアを破った音が最初で最後だったかもしれない。

リチャードのような真面目なブルーワーカー、もしかするとその子ども、孫の世代が今のト**プの支持基盤なわけだが、その意味でもト**プを許せないと思う。
彼らを食い物にしてるんだからね。
来週いよいよhistoric week。神の意思のとおりになるのを喜ぶ。

近ごろ、こればかり言ってるような気がするが、
最後のホンモノの2人の写真、胸打たれたわ…でも本作の場合は、フィクションの2人も同じくらいhonestで良かった。
ホンモノのミルドレッドさんはオードリー・ヘプバーンみたいな雰囲気の可憐な人。
リチャードもジョエルに劣らずいけめん。

演出で解せなかったのは、2人の女性の出産シーンに対して、どちらにも赤ちゃんの泣き声をかぶせなかったこと。
特にLoving夫妻の初子のほうなんて、普通ならここでホギャーだろう、というところで静かだったのでアレ?と思った。
むしろ初出のほうは大泣き、シドニーは沈黙、なら意味が分からなくもないのだが。
いろんな深読みができそう。

でも、折々の静止カットはとても印象的だった。
法廷で弁護士の機転に助けられたものの、「2度目はないからな」と言われ、立ち尽くす2人。最高過ぎた。

この作品の最重要セリフをバラしてしまう米国産トレーラー平常運転。

本作は、私の個人的な2016映画トップ3の1つです。その他2作はこちら