英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 One Child Nation を見た。一人っ子政策の地獄『一人っ子の国 ワン・チャイルド・ネイション』

The Farewell を見た日の日記にも書いたが、中国共産党のやり方が現在進行中の宗教迫害と同じでえぐすぎ。
街のいたるところでプロパガンダのスローガンが目に入るようにする、一人っ子推進歌を京劇で披露する。
検閲が入っているとはいえ、家族の1人や2人は外国に移住しているはず。
多少は自分たちを外から見られるだろうに、いやもうなんであれで洗脳されるのか。

当時、人減らしに関わった人たちの「上からの指示でどうしようもなかった」っていうセリフも、最近キリスト教会を破壊した当局の言い訳と全く同じ!

怒りポイントは数あれど、最後の監督のこの指摘に尽きる。

「子どもに弟妹ができたらいいと思っているが、それについては自分自身で決めたい。
私は(中絶を強制されたり、頭数を合わせるために子どもの人身売買が行われたりするような)中国から、アメリカへ移住した。
皮肉なことに、ここでは中絶が禁止されている。(ここで観客から苦笑が漏れる)
共通しているのは、権力が女性の体をコントロールしようとしていること」

先日、ジャック・マーとイーロン・マスクが「これからの問題は人口減少だ」と言い合っていたが、
うるさいよ。
だから何?どうしようっていうの?である。

とにかく、体のことをあれやこれや指図されるのが許せないのはもちろん、
報告書にあらわれる日米の中絶数のおびただしさに溜め息をつきつつも、アラバマのような厳しい禁止にも賛同できないのは女は1人では妊娠しないからだ。
男はどこへいった、といつも思う。
なぜ女だけが人殺し!と悪者にされ、体をめちゃくちゃにされるのか。

だから、この中国の一人っ子政策時代も、2人以上産めば殺されるような状況を「どうしようもない」と言うなら、男も自制すべきだったでしょう。
たとえ女性が「それでもほしい、こっそりつくろう」と懇願したんだとしても。

マスクとマーが語る少子化問題。これからの20年の人口減少は大問題を引き起こすんだとさ。知らんがな。
Elon Musk and Jack Ma agree: The biggest problem the world will face is population collapse

10月追記、
大学の「戦時のプロパガンダ」をテーマにした授業で木下版の『二十四の瞳』を見た。
生徒の貧乏子沢山で夫がダラダラしている家庭が出てきて苛立ち、コメントシートに「妻に子どもを大量に産ませて何もしない貧乏おやじが理解できない、許せない気持ちが抑えきれない」と書いたら、教授から「時代なので仕方ないでしょう」という返信が。

11月追記、
「多産DV」という用語を知った。上述の問題をクリアに言い表せる。

トレーラー。

映画 Brittany Runs a Marathon を見た。『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』

サンダンス米国ドラマ部門観客賞受賞作。
地面に近い目線でニューヨーク・ニューヨークを満喫できてよい。

ブリタニーが心身にたまった毒素をそぎ落すにつれ、体つきも顔つきも変わっていくジリアン・ベルに拍手。
メイクさんのわざだよなー、と思わないでもなかったけど。
彼女がヘルスメーターに載ってFxxk、と嘆いたときの体重が私の過去最高体重と同じで、超親近感。

ランニング友達のさりげない存在感も良かったです。

それにしても、NYCマラソンコースを見ると、マンハッタンって狭いんだなあ、とつくづく。
私もニューヨークに行くとアッパーからバッテリーパークまで歩いちゃうけど、26マイルだとブルックリンはもちろん、クイーンズまで回れちゃうのね。

だからやっぱり、マラソン大会ほど町おこしに有効なイベントはないと思う。
町のええとこを足で見て回れるだけでなく、本作でも描かれているように、ボランティアや応援で関わっている市民と交流できる。
旅が思い出に残るか否かって、人に会えるかどうかにかかっているから。
ランナーファーストでない要らんものは排除して、最低限のインフラだけ用意するなら、費用対効果は無限大なのではないか。

私も那覇マラソンを走ったことがあるが、美しい島をほぼ1周できただけでなく、要所要所で琉球音楽の演奏があり、沿道に住む人たちからシークワサー(効く!)、黒砂糖(効く!)、ソーキそばをふるまわれ、最後には琉球ガラスのメダルを首にかけてもらい、琉球和紙の賞状をもらい、本当に楽しかった。もちろん沖縄は大好きだ。海に走り込んでいくようなルートを思い出したら涙でてきた。

走らなくてももちろん楽しい。
LAマラソンも、10年くらい前から、それまでの往復コースから、よりLAを概観できるドジャースタジアムからビーチへのコースに変わった。
毎年日曜だが、礼拝の前に車いすレース(超高速)と先頭集団くらいまでは応援できる。
You can make it! と声をかけると、何も配ってあげなくても Thank you for being here. と言ってもらえて感激したり。

ブリタニーだけでなく、決意して日々挑戦を続けるみんなに、You're already awesome!

トレーラー。

映画 Good Boys を見た。MeToo時代の『グッド・ボーイズ』

妙な間が多く、1人で行っていたら途中で出るような出来だったが、結局は最後まで見てよかったと思う。
モバイルのある時代に、『スタンド・バイ・ミー』みたいな意識的な別れは大げさだけどね。

『ドラえもん』の各種ハラスメント、性暴力がいかにひどいかを、今になってそこに光が当てられたように気づかされている。
子どものころ、のび太たちがしずかちゃんの入浴中に押し入ることを何とも思わなかった、それこそ「いたずら」視していた自分が恐ろしい。

で、初キスを成功させるべく奮闘するといういかにもなComing-of-age storyのプロットを、今はどう「正しく」見せるのかに興味があった。

マックス君は、お姉さんたちの教育のもと、きっちり相手の「同意」を得ていましたよ。
リスペクトしろ、とかフェミニズムとかいう言葉も生のまま飛び交っていました。

ここからですよね。

でも、ペドファイルのステロタイプを出して茶化しているのには、ちょっと驚いたかも。
なんというか、少なくともこの街では子どもの性的虐待はすごく深刻な問題なので、ああ、こういうギャグは"funny"で通るのか、と。

グッド・ボーイズ (字幕版)

グッド・ボーイズ (字幕版)

  • ジェイコブ・トレンブレイ
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そういえば、ときどき考えていた、日本人に好きな映画を尋ねると異常な確率で『スタンド・バイ・ミー』と答える問題について(アメリカ人に何でなん?と聞かれた)。
最近思いついたのだけど、単純にある年齢層の日本人で見た人の分母が大きかっただけではないだろうか。
好きな小説を聞かれて(教科書にのってた)漱石の「こころ」と答える人が多い、というのと同じ。
テレビ、学校以外に洋画にふれる機会って、ネットなき田舎の子どもの頃はなかったですから。

テレビで洋画劇場が放映されていた頃までの世代の人は、圧倒的に「テレビでやってた子どもも見ていい映画」を答えるのでは。
親に見ていいと言われる作品の中では、『グーニーズ』とか『スターウォーズ』ばかりが何度も放映されていたような。
『スタンド・バイ・ミー』、私は中学校で先生が持ってきてくれたビデオで見たのが最初。もう魂を揺さぶられまくってオレゴン州のロケ地にも行ってしまった。

原作が本当にいいんだよね~。ザ・キングで。つらくて。

トレーラー。

映画 Jawline を見た。ソーシャルネットワーク製アイドルたち『ジョーライン』

Huluオリジナルドキュメンタリー作品。サンダンスで米国新人ドキュメンタリー審査員特別賞受賞。
現代の『誘う女』事情が垣間見られるのではないかと思ったこと、そしてオースティン君の本拠地?がテネシーということで興味を持った。

本筋と関係ないが、南部の田舎町の寂寥感と潤沢な自然が印象に残った。
毎日あんな豊かな緑の中を歩いて、いつでもパンツ一丁で川に遊びに行き、ハンモックでお昼寝して。
かわいい子猫もいっぱいいて。
めちゃ幸せじゃないですか。
L.A.に来なくてもスターになれるのが彼の「やりたいこと」のいいところでしょ。

若いってつらいよね...
オースティン君は16歳にしては大人だと思う。私はその頃はみんなと一緒に当然のように高校行っただけだから。

彼のような悩みを持ったのはちょうど20歳前後だったなあ。
とにかく打ち込めるものがないと辛い。
で、夢中になっていた期間がふっと終わると、脱力感でまた辛い。
堺雅人が、きついことがやりたかった、出家のつもりで学生劇団に入った、という話にとても共感した。当時はそういう人が一番羨ましかった。
大学4年間必死で勉強すればいいのに、東京の喧騒の中にいる上に、文系大学のゆるさも手伝って、それじゃヤとか思っちゃうのね。
(すみません)
二度とあの頃に戻らなくていいのはありがたい。

ソーシャルメディアの会ってハグできるプチスター、私には縁のない世界だけど、それぞれにすごいプロデュース能力だと思う。
みんな、生身の人間に対する敬意だけは忘れず、大いに楽しんで稼いでください。
今、そのプラットフォームがあるうちに。

東京のAWS落ちてたね~。だからスマートキーとか使いたくないんだよ...。

トレーラー。

映画 American Factory を見た。『アメリカン・ファクトリー』Steven Bognar 監督を迎えて。

オハイオ州の労働市場グローバル化問題を扱ったドキュメンタリー。
今日からNetflixで公開。
Netflix会員の方はすぐに見られるはず。
アメリカン・ファクトリー | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

オバマ大統領夫妻が設立したプロダクション Higher Ground Productions の配給第1作で、特にミシェルがかなり心血を注いだと聞いたので、夫妻に敬意を示したくあえて映画館へ。

何も考えずに行ったら、なんとSteven Bognar監督、音響さん、作曲家さんが来場しており、上映後にQ&Aセッションがあった。L.A.たのしー。
ちなみにもう1人の監督、Julia ReichertさんはNYの上映会に登壇とのこと。2人だと手分けできていいですね。

映画は面白かった。
私がとても関心を持っている働き方の未来もテーマだったので。
なんと分かりやすい文化の衝突。グローバルとローカルの対決。
それだけではとらえ切れない、米中の1人1人の労働者、雇用者のそれぞれの生活と胸のうち。
ああ時給12ドル。ああ家賃450ドル。ああ実働12時間、月休2日。週休ではない。

私はアメリカ側、労働者側目線に立ち(後の質疑にも出てくるように、本作もどちらかというとオハイオ目線だったと思う)、自分の肖像画を描かせちゃうトップってあかんやろと思ってしまったけど...。
最後には、大企業に頼らざるを得ない地方だけの問題ではないという示唆も。

せっかく思いがけず監督の話が聞けたので、覚えていることをメモしておく。
但し、録音したわけではないので、誤りもあるはず。

200程度の観客席の1/3くらいは微妙に関係者だったっぽい。オハイオから駆けつけた当事者の人もいた。
こういう内容なので、映画の製作過程について以外にも、取り上げられた問題についての質問も多かった。

Q. どのように現場にアクセスしたか。
A. 労働者の信頼を得るまでには数か月間かかった。先入観や仮定はドア先に捨て、オープンマインドで1人1人に敬意を持って接した。

Q. 中国人が研修でアメリカ人の特徴についてアレコレ説明する場面があるが(自信過剰だとか、見た目を気にしないとか、大統領を批判できる、とかね。めちゃウケていた)、撮っていてどう思ったのか。
A. 当時は中国語の分かるクルーがおらず、リアクションは見ていたが、実際に何を言っているのかは全然知らなかった(!)。
随分後になって翻訳が入って、「おお、こんなことを言っていたのか」と膝を打った(!!)。
中国人の製作者2人が入ってくれたのは後半であり、彼らのおかげで、社長らにもアクセスできるようになった。感謝している。

Q. GMなど大手工場がつぶれたのはユニオンのせいだと聞いている。本作はプロユニオンに偏っている気がしたが、その点どう考えたのか。
A. まず、GM工場がつぶれたのは必ずしもユニオンのせいではないと言っておきたい(respectfully dispute、と言っていた。私が美しいと思う表現です)。たくさんの複雑な原因があった(地元の人が言うと説得力あるわ)。
製作時に必ずしも経営者側、労働者側についたということはない。両方の言っていることを丁寧に聞き、どちらかに偏り過ぎないよう注意した。

Q. 何百回も工場に通い、3年以上カメラを回して、カットしたシーンの中で1つベストを上げるなら?
A. それは、めっちゃたくさんある!でもカットせざるを得ないからね〜。天才エディターの Lindsay を讃えたい。

Q. Netflix、Higher Ground Productionsと組むまでの経緯を聞かせて。
A. サンダンス映画祭のエライ人が大勢集まっている場所でNetflixに紹介された。で、Higher Ground Productionsも興味を持っていると聞かされた。
Higher Ground Productionsって何者ぞ?と尋ねたら、「あなたも知ってる2人の人物が始めた会社で〜」と言われた。
彼らの配給第1作に選ばれて光栄だ。

Q. 地元のアメリカ人と中国人駐在員が銃を介して遊ぶ場面があったが、ああいうふうに銃を扱うことについて懸念しなかったか。
A. あれはあくまで彼らが楽しい時間を過ごした、という事実に過ぎない。
デイトン(監督はこの工場から30分の場所にお住まい)では、孫2人が小学校に通っており、先日の襲撃事件では子どもたちの友人の母親が犠牲になった。そのくらい銃の問題は身近であり、複雑な思いはあるが、消すことはしなかった。

Q. カメラは何を使ったのか。(玄人なのかド素人のイキリなのか判断つきかねる質問。SONYだったようです)

ちなみに、NetflixとHigher Ground Productionsの取引はこれからも続くそうです。

ところで。
Netflixのあの日本オリジナル作品に、私は非常に腹を立てています。
人権を蹂躙し、ただそっとしておいてほしいとささやかに願う人を搾取する作品。

Netflixは2012年に退会しており、日本にいるわけでもないやや外野の私でも本当に怒りが湧くのは、「日本の地上波で見られないやつ〜、日本人を惹きつけるやつ〜」を目指してマーケティングをした結果がコレ???!!!
ダイバーシティ、インクルージョンに大貢献しているNetflixがなぜ日本ではそうなる?という悲しみです。

そんなローカライズいりません。

追いかけている作家やブロガーが無邪気に「面白かった」と評価してるのも悲しさ倍増です。
無理に日本オリジナル作らんでいいよ。優れたアメリカ作品に、金かけた翻訳をつけて配信してくれるだけでいい。
ちらっと日本語ページを見たら微妙な日本語だったので。字幕翻訳者さんて、時間的にも量的にも要求きついのに賃金低いんだよね...。
最近ネトフリ廃人化した関西の友人は、専ら日本のドラマを見ているようだけど。

オバマ夫妻はこのプロジェクトの何に魅せられたのか。みんなリラックスして、監督2人も嬉しそうですね。

トレーラー。