『リメンバー・ミー』に続いて、2つの場面でザーっと涙が出てきた。
年の瀬になって初めて、思わぬ作品に泣かされている。
「障害を負った子どもが家族の支えで学校へ行き始める」と聞けば、okay, another cheesy one…としか思わないし、普通なら観に行かない。
でもジュリア・ロバーツの映画には『ノッティングヒルの恋人』で良い意味で裏切られた経験があったのだ。
今でもあの脇役たちのパーリーの会話は大好きなシーンである。
『ワンダー』も、サイドストーリーと脇役が良い。
校長先生の威厳と、教師の懐の深さ、ヴィアのBFの優しさが最高。完全にオーギー君のほうが脇です。
『レディ・バード』同様、この映画にもアメリカの学校の良さが詰まっています。
で、ブワっと涙出た場面。
ヴィアが主役を務めた劇中劇、『わが町 Our Town』の「エミリー」のセリフ。
あれは1にも2にも、ソーントン・ワイルダーの元の台本(ビューリッツァー賞受賞)の良さにつきます。
Our Townのト書きには「through her tears」と確かに書いてあるんですが、ヴィアは泣かないほうがよかった。
なぜなら… やっぱり役としてでなく、他者としてその状況に泣いている、つまり「別のことで泣いてる」から。
芸人が自分のネタに笑うと寒いように、自分の芝居に泣いちゃうのは寒いのです。
そして不思議とそれは観客に分かるものです。
もちろん、これは劇中劇なので、ヴィアはそこまで達者な役者じゃなかったという設定で、ジュリアも実際エミリーでなくそのセリフに「娘」を重ねて見て泣いてるし、ということでいいのですが。
もうひとつは、クライマックス、オーギーがメダル受賞者に選ばれるところ。
はっきり言って、この映画の中身だけでは彼の受賞理由を説明する説得力には欠けるんですが、先生方や友人たちが全力で誇りに思って熱狂しているのを見て、いやもう何でもいいです、みんなが喜んでいるなら、という気持ちに。
やっぱりね、学校という集団においても個人を全力でほめるほうが、どの子どもたちにとってよい、と私は思います。
中学の頃、「行動賞」という賞がありました。模範になる生徒に対して年に1人か2人に授与されるなんだかスゴイ賞だったのですが、途中で「教師が全生徒のすべてを見ているわけではないから」という理由でなくなったのです。
その時は、まあそうだよね、と納得してしまったけど、いや、贔屓だろうがなんだろうが、賞はジャンジャンあげて、周りはその子だけのタラントを喜んでcelebrateすべきだと今は思う。
聖書には創世記、ルカの放蕩息子はじめ、人間の目で見れば「神様、贔屓じゃね?」と言いたくなるエピソードが多々出てくるので、その影響もアメリカの土台にあると思う。
タラントは個人のものじゃなくて、人々にサーブして神に栄光を返すためのもの。
神様にとっては誰もが1番なのだし、その発露をみんながイェーイと喜んだらいいのです。
そういうわけで、まばらな客席ながら皆で思い切り拍手して、クリスマスの町を楽しく帰ってきました。
第2幕のViaまではお父さん役とか結構ひどく、間も悪くて心配になりますが、そこを耐えてください。
とりあえず、Viaからです。
Our Townのスクリプトはネット上にたくさん転がっています。邦訳はこちら。
原作はベストセラー小説。
師走です。2017年に見た映画ベスト5はこちら。