英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 The Cave (2019) を見た。シリア空爆下の医療現場から『ザ・ケーブ』

命がけの作品。事実、撮影中に4人もの関係者が命を落としたという。

アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞はオバマ肝入りの『アメリカン・ファクトリー』が有力らしいけど、それよりもこの作品に受賞してほしい。少しでもたくさんの人に見てもらえるように。

取り上げられている問題は、空しい戦時下で人助けを続ける苦しみと、この地域における女性の自立の困難の2本柱。

後者について少し。
冒頭、Dr. Amaniがマネジャーだと聞いて「男を出せ。女は家にいるものだ」とつっかかる男性に劇場内爆笑。
確かにあまりに絵に描いたような言説で、やらせなんじゃないかと思うほど。
しかも戦時下で選択は贅沢、な状況で。
Dr. Amaniはしっかり怒ってたけど、それでも医大時代の話なんかを聞いていると、女性が医師として立つには日本よりマシなのでは?と思わざるを得なかった。

最近、女性の一律80点引きが報道された聖マリアンナ医大はじめ、医学を志す女性に対する差別には怒りに震えている。
人の人生をふみにじっていることはもちろん、医療界やもっとその上の人たちの10年先すら考えようとしない態度に猛烈に腹が立つ。
現状、男性が多いにしても既に回ってないんですよね?(誰かが当直明けて続けて働いてるのは「回っている」とは言いません)
今後、そもそも人間の母数が激減していくのも分かってますよね?
だったら男女かかわらず人間的な条件で働けるように、どこかで痛みをこらえても体制を変えるしかないじゃないですか。

話を本作に戻すと、男性が女性差別に宗教を利用している、という嘆きも、どの宗教かにかかわらず共通しているよな、と思った。
男性は聖典の都合のよいところだけつまんでいると。

私は旧約・新約の神がつくった男女の秩序「夫に従え」は、男女に優劣があるという意味ではなく、けがれた人間の社会を少しでもうまく機能させるための神の妥協策にすぎない、という解釈を飲み込んでいるんですけど、残念ながらこの記述を盾に、つまり神の名をかたってヘンな押し付けをする人は確かにいます。
『大草原の小さな家』を書いたワイルダーは敬虔なキリスト者でしたが、結婚式で「夫に従う」と誓わないことを選びました。

それから、学生時代のバイト先にエジプトからの国費留学生で、Amaniさんという女性がいたなあと思い出した。
なんと大学院で源氏物語を研究していた。そんな研究テーマなのに「日本で学ぶメリットはない」とも言っていたなぁ...。

「神さまは本当に見守ってくれているのだろうか」と何度も疑問を投げかけるDr. Amaniや医療スタッフたち。
それでも信仰を捨てないらしい。
世界中のDr. Amaniが十全に神から与えられた賜物を生かすことができますように。

トレーラー。