ロペス夫妻インタビューの書き起こしの続きです。
その1:
Let it Goは1日半で書き上げた!「アナ雪」ソングライター ロペス夫妻インタビュー その1
テリー・グロス(TG): 子どもの頃からインスピレーションを受けた楽曲にはどんなものがありますか?あるいはそうでないものは?
クリステン(K): この歌(訳注:Let it go)に関してはありませんが、For the first time in forever「生まれてはじめて」なら。
For the first time in foreverには、はっきりとお姫さま物語の伝統が盛り込まれています。
つまり、女の子たちが小さな椅子を引っ張り出してきて、観客に自分の心のうちを明かすの。(歌う)"ご覧なさい、ステキでしょ、何もかも持ってる女の子だと思わない?..."(訳注:「リトルマーメイド」のA part of your worldの一節)みたいなフィーリング、分かるでしょ?
ロバート(R): そうだね、Let it goでは何かの歌のインスピレーションの形跡はない。
インスピレーション半分、ちょっと超自然現象的にできた部分が半分、というところかな。
「誰にも分かってもらえなくて結構」みたいな歌だから。
K: 私たちは、「超アヴリル・ラヴィーン風」のLet it goも書いたのよ。
ほら(歌う)「あんたの彼女サイテー、新品と取っ替えない?」みたいな。
エルサが悪役の設定だったとき、そういうヴァージョンもあったわね。
R: うん、でもあのライン、(歌う)the cold never bothered me anyway…(少しも寒くないわ)
K: そこはアヴリル・ラヴィーン調が残ったところね。
R: ふたりで、歌の終わりには、エルサが宮殿のドアを鼻の先でピシャリと閉めるようにしたい、って言った。
このキャラクターに我々は必要ないんだ、というのを見せる要素だね。
TG: スウィーニー・トッドそのものでしたよね。
彼のことは頭にありましたか?
R: ああいうの好きなんだよ、キャラクターが意地悪そうに自分を見て、目の前でドアを閉ざす。
まあ、彼女は映画の中でちょっと微笑んでたけどね。
K: ええ、もちろんスウィーニー・トッドはイメージしていたわ。
スウィーニー・トッドがずーっと私たちの頭の中を泳いでたの。
TG: 話は変わりますが、「アナ雪」ではふたりのプリンセスがいて一人が女王になります。
母親の多くは、ええ、父親も同じじゃないかと思いますが、子どもたちが「女らしく」お姫さまファンタジーにのめり込むと戸惑います。
たとえば、キラキラキレイなものにたっぷり囲まれて、キスされてハンサムな王子に助けられるとか、そういう幻想。
クリステン、あなたはプリンセス・ミュージカルを書いていて、「これは避けよう」と決めていたことはありますか。
K: もちろん。デラックス版のCDで、私はプリンセス神話の歴史に強く抵抗しているのが分かりますよ。
We know betterというカットされた楽曲の中に、世間が期待し望むことを超えた、ふたりのプリンセスの連帯が描かれています。
世間は彼女たちはパーフェクトでかわいくて女らしくて良い子だと思っているんです。
でも、お行儀悪いことや、良いことも悪いこともするし、豊かな想像力やいたずら心ももっている、そんなまるのまんまの子どもなのが彼女たちだし、うちの娘たちもそういう自然の姿を咎められないことが本当に重要だと思っています。
だから、この曲はカットされましたけど、ジェニファー・リー(監督)と私は、映画全体にこの視点をふんだんに盛り込んでいます。私たちはふたりとも、パークスロープ・ママなので。
私たちが生きてきたのは90年代で、ふたりとも女性学のコースをとっていました。
もし私が、女の子がヒラヒラのドレスを着て、自分の行動によってでなく、ただかわいいというだけで王子にキスされ守られる、というような映画を作った日には、子どもたちを外遊びに連れていけなくなります。
TG: カットされた歌詞を聞いてみたいわ。
K: そうね、たとえば、(歌う)「みんなが言うの、王子さまはハンサムで優しいって。みんなが言うの、お姫さまらしくしなさいって。
みんなが言うの、お姫さまっていうのは…」
R:(歌う)「ピンク色のフリフリを着るものよ。」
K: (歌う)「フリフリのドレス。みんなが言うの、お姫さまは笑わない、鼻から牛乳を噴いたりしない。みんなが言うの、お姫さまはおだやかで、親切だって。
お姫さまは思っていることを言わないし、ナニーを背中からヒヤリとさせたりしないって。」
そこで、エルサはナニーのお尻を凍らせるの。
(笑)
R:(歌う)「でもあなたと私。私たち。私たちのほうが分かってるわ」
(笑)
TG: ステキ。おふたりにはふたりの娘さんたちがいます。お姫さまに夢中になった時期はありましたか?
K: テリー、聞いて。うちにはコスチューム専用ラックがあるのよ、50着のお姫さまドレスが入ってるわ。
でもうちのプリンセスたちは、矢を飛ばしてみたり、数学をやったりするわね。
私は「私たちは白雪姫にも、アフリカの孤児を守るドクターにもなれる」なんて言ってる。
TG: それはおかしいですね。娘さんたちには、伝統的なお姫さま物語にどっぷり浸かってほしくないわけでしょう。でも、あなたはお姫さまの歌を書き、映画にも彼女たちをキャスティングして、おひとりはアナの子ども時代を演じています。
娘さんたちには混ぜこぜのメッセージを送っているのかしら?
K: そうでないといいのだけど。この世に混ぜこぜでないメッセージを送っている親なんているのかしら?
(笑)
K: もちろん子どもたちには一貫したメッセージを送るよう最大限努めるべきです。でも、鏡を見て「あ、ドレスの下にストッキングをはかないと」と言えば、それは既に矛盾したメッセージなのです。女性が物語の主役になるという意味で、お姫さまの伝統にも美点があると思いますが、その伝統そのものは今日のハリウッドでは危険物です。
このときはふたりの女性を物語の主役にすえたので、その関係性について話し合いました。要するに、ハリウッドの全作品の1%しかまともに取り上げていないと言われる「女性ふたりの関係」をどう描くかですね。
TG: ええ。ディズニーの人たちは心配しませんでしたか?それは男の子が見ても面白いの?とか。
R: はい。男の子たちが見ても、映画の始まりから「これは自分たち向けだ」と必ず分かるようにしたいと思いました。「お姫さまミュージカル」で彼らを置いてけぼりにしたくはなかったので、オープニングには鉄道工のシークエンスを持ってきました。「ダンボ」の乗組員が働くシーンへのオマージュと言ってもいいでしょう。
ここで、観客に伝えようとしているのはこういうことです。
これから始まるのは氷がもつ美と危険なパワーを描いた物語である。
一方でそれは歌あり、冒険ありの世界なのだ、と。
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ここで放送ではCMとニュース。「その3」に続きます。
実は18禁?「生まれてはじめて」 「アナ雪」ソングライター ロペス夫妻インタビュー その3
日本では、May J.さんが松たか子さんの出渋りとの対比もあり、お手頃カラオケシンガー扱いになっている由。
彼女が抗弁していたとおり、本家もラストは別の人のアレンジが流れるのですが、こちらでもあまり知られてません。
ラジオで流れるのもメンゼルヴァージョンだけ。
歌い上げ系の主題歌がフィーチャーされ始めた「リトルマーメイド」にはエンドロールヴァージョンはありませんが、
後続の「美女と野獣」「アラジン」「ライオンキング」はそれぞれ有名歌手が歌って挿入歌よりもずっとヒットしました。
(私はセリーヌ・ディオンが歌う"Beauty and the Beast"が本当に好きです)
でも「アナ雪」は作中の歌シーンがそもそもソロで印象的すぎるためか、これまでとは違う評価に。気の毒ですね。
カラオケシンガーといえば、「徳永英明レリゴーカバー」というニュースには失笑を通り越して悲しくなりました。
一体誰が買うんだろう。。。彼のオリジナル「夢を信じて」とか好きだったんですけどね。
西海岸のアニメ業界で仕事したい!と思ったら、まずこの本。
「まずは現地を見る」など、ディズニーとピクサーのやり方にはそもそも共通点が多々あったことが分かります。
<追記>
Creativity Inc.の和訳本。
音源:2014年4月10日放送 NPR Fresh Air
Songwriters Behind 'Frozen' Let Go Of The Princess Mythology
http://www.npr.org/2014/04/10/301420227/songwriters-behind-frozen-let-go-of-the-princess-mythology
こちらもどうぞ。
ジェニファー・リー「アナと雪の女王」監督に聞く