初めて血小板献血をしたのでメモ。
私の献血歴。日本では、出先や仕事先に献血バスがくると全血献血、センターではほぼ成分献血をしていた。成分を選んだのは、全血よりも頻繁に献血できたからである(月1回)。それに、成分のほうが活用しやすいので時間がゆるすなら成分でお願いします、というのが当時のセンターが出していたメッセージだった。
渡米してからは、献血後に運転して帰るのが少々不安で、一度だけ友人と遊びのついでにOCのセンターに行った後は足が遠のいてしまった。
パンデミックの前に引っ越して、徒歩でも行ける距離にRed Crossのセンターがあったことから、また通うようになった。
ぜひ成分をやりたいと思ったのだが、日本でいつもやっていたいわゆる血漿成分献血(plasma)は、私の地域ではAB型しかとらない。
なんとなくそれで私の血液型だと成分はできないんだーと思い込んで、全血(whole lood)しかしてこなかった。
全血は60日に1度しかできないのだが、そろそろまた行くか〜と思っていたところ、Red Crossから「あなたの血液型のplateletsがめっちゃ必要!」と通知がきた。簡単に検索してみると、ドナーの時間の負担は一番大きいけれども必要とする現場での使い勝手がかなりよさそうだ。やってみよう。
何しろ初めてなので、その後具合が悪くなる可能性も考慮し、休みの朝一に予約をとって万難を排して出かけた。モデルナワクチン接種日以来の構えっぷりである。
本筋に関係ないのだが、今回の受付のボランティアさんは高齢の女性で、二言三言かわすだけでなんだかワクワクしてくる素敵な人だった。今まででいちばん印象に残った。
検査、問診は全血のときと変わらず。ただ、「この献血は2〜3時間かかる」「あなたの血液は、医療に使えなかった場合はリサーチに回される」の2項目に同意するよう言われた。血小板製剤を使用できる期間は全血と違って数日らしい。全血なんか、1か月たってから「あなたの血液はサンディエゴの病院にストックされました!」とか通知がきたりするけどね。
採血ベッドに移動する前に、ブルーベリー味のカルシウムタブレットを3錠渡され、なんの説明もなく「今噛んで」と言われたのはビックリした。パッケージされているようなものではなく、ボトルから手のひらにガラガラと出されたのである。薬品ではなく食品ではあるが、何なのか確かめることもできずにいきなり口に入れさせられるのは、ねぇ...。へんなところでセンシティブじゃないんだよな。ちなみに血小板の止血作用とカルシウムとの関連は終わった後でググった。
さて、いちばん誤算だったのは、血小板献血は両腕に針を刺され、絶対安静!であること。左腕から採血し、右腕から戻すのである。まあ、ちゃんと調べとけよという話だし、センターで安静にしている人々の列をいつも見ていたはずなんだけど、日本でやってた成分のイメージが強かったので...。
台に横になってウキウキKindleを取り出したら、「それ読まれへんよ」と言われ、テレビのコントローラを渡された。とはいえ、手も動かせなくなるので、採血開始前に見たいものを選べという。ニュース、スポーツ中継、ネトフリ、アマプラ、Hulu、アップル TV+などひととおり揃っていて飛行機のエンターテインメントプログラムみたい。なかなか気がのらず見ないままになってたShogunにする。前の人が見ていたらしいエピ6の途中から始まった。両腕の針から血液が順調に流れ始めると、ナースさんがヘッドホンを私の頭につけ、「音量はこれでいい?」と聞いてくれる。その後、「採血中は体温が下がるから」と、2枚の毛布でていねいにtuckしてくれた。毛布がとてもあったかかったのでびっくりして聞くと、blanket warmerというマシンがあるらしい。おしぼりウォーマー的な?
ナースさんは、Enjoy your movie and save some lives!と言って去っていった。
採血中は何人ものナースさんがたびたび声をかけてくれる。あちこちジンジンしたり、頭がぼうっとしたり、ささいな違和感はあったので、Are you okay? Feeling good? と聞かれるたび、これは申告すべきなのかとちょっと迷った。
一度は機械がビービー鳴り出し、チェックしに来たナースさんから「もっと左手をスクイズしろ、ポンピングが遅くなっている」と言われた。開始時から採血側の左手にグリッパーを握らされていて、5分に1度グーパーしろ、と言われていたのだが、そんなもんリマインダーがなければ忘れますやん。
画面上のエピソードがひとつ終わる頃には、そろそろ残り時間を知りたくなってくる。「あと30分だから」と言われたときはほっとした。だが、30分たったころに、A few more minutes, okay?と2度聞かれて延び延びに。結局、今回の所用時間は2時間半であった。
針を抜いたあと、全血のときは腕を上げて反対の手で出血部をおさえろ、と言われるが、今回はそれを全部ナースさんがやってくれて、軽く腕のマッサージもしてくれた。
なんとなくボーッとするし、よろめいたりしないか不安になるが、慌てないでいいからゆっくり立ち上がってしたくしなさいと言われる。休憩場所で15分休めと言われるのは全血と同じ。
歩き出したとたん元気になったので(そう、姿勢を長時間変えないことが体に悪いのだ)、ジュースを飲んで、Cheez-itと水をもらって帰ってきた。
献血ができるというのはつくづくありがたいことである。が、この血小板献血は、また「超緊急!足りない!」通知でもこない限りもうやりたくないな、というのが今回の感想。せめて片手が使えたらいいのに......健康特権者の戯言である。
ただ、センターに来るたび思うのだけど、週一でできるこの血小板献血を生活に組み入れるレベルで続けている人がリタイア組を中心に相当数いそうなのだ。ベッドで映画1本見て人助けができるなら最高だ、と言われればそうよね。
受付で、スマホを持ってないからrapid pass(オンライン事前問診)ができない、と言っているおじさんがいて、スマホはないけど血液は出せる、という状況についてあれこれ考えてしまった。
【10/23更新】血小板を献血できる頻度を訂正。なんと7日に1回だって。Red Crossから勧誘のテキストがきた。血小板は足が早い代わりに作られるのも早いんだ。すごいね。
【10/30追記】
キャンペーンだなんだでギフトカード(アマギフ始め、数十種類から選べる)をもらえることが多いのだが、今回は通常の謝礼25ドル分に加え、血小板の3回目までの特典(!)ということで+10ドル分が送られてきた。少額とはいえ、Tシャツなどの粗品をもらうよりグレー感あるよね。もちろん、受け取りを辞退して赤十字に寄付バックすることもできる。
中西部では成分が500ドルくらいに換金できてしまうシステムもあるようだ。それなりの局のドキュメンタリーで見た。生活費の支払いに困った家族のお父さんが「じゃあこの分は献血でまかなうか」って言って1時間かけて運転して行ってて「時間コストもだけどガソリン代は...」と思った。
【11/7更新】
私の血小板の行き先について通知がきた。近隣では足りてたから、ジョージア州の2つの病院(実際には病院名も明記されている)に送られたって...。いや遠いし、しかもあれっぽっちの量を2つに分けたって...。管理輸送のコストに気が遠くなる。医療には病院からは見えないところで実に大きな労力がかけられているのですね。