英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

哀しい誤訳

翻訳は私の仕事のひとつだが、翻訳書を出したことはない。ほとんどが長く顧みられることのない書類であり、また内容も間違いようのない実務的なものが多い。
でも将来は、間違いようのある?ノンフィクション翻訳書に関わるのが夢である。
そのためというか何というか、先輩方の誤訳がしっかり製本されて残されているとドキーっとする。

翻訳書を読んでいて、文の流れが「?」なところは、たいてい誤訳である。
勉強のため、気づいてしまった誤訳をメモしていこうと思う。

●「ゆったりと生きるセラピー」
ライナス・マンディ 目黒摩天雄訳

自らは絶対手にとらない類いの本だが、日本国外にいると、和書が手に入ればなんでも読むのである。
これは友人から借りたもの。
痛いことに、この本はページ内に英文が併記してあるので、読者の皆様には誤訳が見つけやすいようになっております。

うちやっておきましょう。
手が出せないほど困難なことは何もないのがふつうです。
けれども、何もしないのが
一番いいことがよくあるのです。

ハァ???

原文は下記のとおりでモヤモヤスッキリ。
論理破綻しているのは原文でなく訳文であることが分かる。
itはnothingを受けるのが正解。

Let go.
Nothing is usually the hardest thing to do - but often it is the best.

●『農場の少年』
ローラ・インガルス・ワイルダー、こだま ともこ、渡辺 南都子訳

方々で誤訳列伝を読んでいると、仮定法の読解ミスが圧倒的に多いなと思う。
仮定なのに、勝手に過去形、事実にしちゃうというやつ。

この本は私の愛読書の1冊。少年アルマンゾが両親の留守にストーブ磨きで壁紙を汚してしまい、いつバレるかと心配するくだりに誤訳あり。

「両親にバレてしまえばこんな心配もうしなくてすむのに、いっそ早くバレてくれ!」という彼の心の声を、
「心配するのはやめにした」としてしまっている。
これは前後を読んでもつながりがおかしくて、誰でも「アレ?」と思うはず。