英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

自分を語れ ランディさんが語る29歳変動説

学生のころ、田口ランディさんの書かれたものをたて続けに読んだ。

「したい、したい」と言ってる人は死体だ、
「なぜ人を殺してはいけないの?」という質問のシャラクささ、
などが、彼女が夜の仕事やライター生活で会った色鮮やかな人たちの邂逅とともに、
愛をもって描かれていた。

なぜ今それを話すかというと、「馬鹿な男ほどいとおしい」所収の、29歳変動説を思い出したから。

ええと、私は10年間、編集者をやってきて、数多くの文化人、名士、タレントさん、学者さんなどなどに、取材という名目で会ってきた。で、その経験を通して、とても不思議に思うことがあったのだ、それを私は「人生29歳変動説」と呼んでいる。

 いろんな人の話を聞くと、かなりの確率で……というか、びっくりするような確率で、29歳で人生の転機を迎える人が多いのである。29歳には何かある、とつねづね思ってきた。そういえば、ブッダが出家したのだって29歳だった。

 この29歳の転機というのは、その人の天職というものと非常に深く関わっている。29歳で、自分の価値観や、携わっている行為に対して疑問を持ち、そして疑問を解決すべく行動した人はその後、32歳の時に別の転機と遭遇するのだ。

 で、この32歳の時の転機が、自分の天職を決めていく。その後、35歳、38歳と順調に自分の人生の意味を見いだし、42歳前後で迷いが出る。

私の29歳。転機?あった。
新卒で入った広告会社を辞めて、小さなデザイン会社に転職した。それも2回笑
ひと月仕事を休んで、5年ぶりに海外に行った。

私の32歳。転機、大あり。
渡米した。
クリスチャンになった。
ウェブ業界に足を踏み入れた。(また転職笑)
天使に会った。
ビザが下りてさらに神を知った。

感謝!

そしてランディさんは言う。

さて、あなたの人生の転機はいつでした? それはどのように起こって、今のあなたがここにいるのですか。語ったことありますか。

 私も実は、こうして語ることで、日々の淡々とした生活を支えている。ともすれば埋没しちゃいそうになる日常を「良き日」として再認識するために、日々書き続けている。私は自分のことしか書けない不器用な書き手だ。他には何もできない。語るのは、まず、自分のためだ。

 自分について語るとき、人は自分に優しくなれる。自分についてしゃべる時は、けっこう自分に冷たい。ダメな奴だと謙遜し、人生ロクなことなかったよなあ……としゃべる人が多い。それはしゃべってしまうからだ。人生はしゃべっちゃいけない。語らないと。

 人生について語る時、なぜか人は自分を愛するように語る。そして自分を愛するように語れた時、自分が自分を好きだったことに気がつく。語ることは、自分が自分を憎んでいないこと、愛してることを教えてくれるからいいんだ。

 だから、語るほど元気になる。人生は語らないとあかん。必死で語っていると、自分のために泣けてくる。ああ、あたしって、こんなにがんばって今まで来たんだな、って。そういう自浄の力を「語り」はもっている。

 とほほのとほほだと思ったら、語りましょう、しゃべらず。多くの人は、しゃべりすぎて自分を傷つけている。語ることは自分を傷つけないのに。だってそれは祈りだから。祈りだから、つぶやくだけだっていいのだ。書くだけだっていいのだ。誰かに語ることを前提に、頭のなかで考えてみるだけでも、効果はある。

 さて、質問。人生の転機はいつでしたか。もしかして29歳でしたか。それはどんな転機でしたか。そして、その時に何を選択しましたか?

このエッセイには、「9は物事を転換させる力をもっている」「29歳の時には、どんな人にも数霊が開くんですよ」という音楽家の宮下富実夫さんの「数霊」説や、「自分大好き」な石原都知事の語りに魅せられたエピソードなどを通じて、話すこと語ることのたのしさが存分に書かれているので、ぜひ読んでみてください。彼女が言うように、私もいろんな人の「転機」を聞いてみたい。