英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Crazy Rich Asians を見た。エイジャン・プライド発動『クレイジー・リッチ!』

めっちゃ幸せになれるシンガポール・プロモーションフィルム。
母の思いが一瞬にして伝わるプロポーズでは興奮のあまり、「友人のウェディング」から泣き始めた隣りの知らん人とハイファイブしてしまった。

さらに自分しがない日本人なのに、アジア系コスモポリタンたちのアチーブメントに勝手に乗っかって「私も漢字読めるもん」「私も麻雀わかるもん」と、エイジャン・プライドまで高揚させてしまった。

このMonica Castilloのレビューの一文を読んで、何これ見たい、と思わない移民1世はいないと思う。

Very few films have ever captured the pains of being first-generation American quite like “Crazy Rich Asians.”

既に封切り週末のBox Officeでも予想以上の成果を叩き出していますが、この劇場の盛り上がりぶり、ロングランヒットしそうです。私も早速、「見ろ見ろ」言ったし。

とにかく!最高の饗宴だった!

気になりポイントをメモ。

●「プリティ・ウーマン」シーンが残念!!
レイチェルがメイクオーバーして、彼友の結婚式に乗り付けリベンジを図るところ。
あれは車からバーンと降りてきたところで「他を圧倒する華やかさ」でなきゃカタルシスがないでしょ!!!
ジュリア・ロバーツが赤ドレスで登場したみたいに!!!
あの着慣れてない感満載の半端なドレスじゃダメだってば!!!
「そこどけオラ」が説得力ないって!!!

●どうやらリッチの彼女たち、形だけでもクリスチャンらしい。
ミシェル・ヨーらがバイブルスタディでエペソを読むシーンが出てくる。
英国で教育を受けた影響もあるかもしれないが、東南アジアの金持ちがクリスチャンなのはちょっと意外な感じ。
ところで食事だ麻雀だ、と卓を囲んで集まるのが大好きな中国系の隣人たちだが、あんなふうに女性たちで集まって本を読んでいる姿もよく見かける。まさにジョイ・ラック・クラブの世界。

●日本ももっとロケ地提供できればいいのになぁ。
調理場でパーリー料理の采配をふるうミシェル・ヨー、家族での肉まん作り、雀荘、屋台の喧騒、そしてマリーナベイサンズにはやっぱり目を奪われた。
「沈黙」さえ誘致できなかった日本。クールジャパン笑の予算ってどこに消えてるんですか...。

●脚本的に、俳優2人のシャツを脱がせた意味がよく分からない。
ニックの着替えシーンと、アストリッドの旦那のシャワーシーンね。意味ありげでしたが。

●そういえば、世界に広まっている日本の寿司とかラーメンって、「みんなで食べよう!」な宴会料理じゃないな。
みんなで食べる料理にこそ、最後の晩餐から連なる礼拝だったり、収穫の祭りだったり、文化が濃ゆく息づいていると思うのだけど、日本が発信してるのは個食向けっぽくてソンしてるかもなー、と。
しゃぶしゃぶ屋はあるが、知られてないし。
大皿が並ぶ台所や、屋台のスパイシー料理を賑やかに楽しむ人たちのシーンを見ていると、単純に「ああ、ステキなカルチャーだなあ」と思っちゃうんですよね。

(8/20追記)パリス・ジャクソンの「ハーパース・バザー」シンガポール版登場炎上で、シンガポールがゲイに厳しいことを知った。移民選別や市民生活の法律がいろいろシワいことはよく聞くけれど、ゲイに冷たくても金持ちが集まるのは意外。先のクリスチャンの脈絡も含め、シンガポールという国のpeculiarの実態に俄然興味が湧いてきた。

(8/21追記)原作小説の著者、Kevin Kwanのインタビューは「アメリカ移民ものがたり」要素がたっぷりのこれが一番面白かった。
彼は制作総指揮としても大きな(実に大きな)役割を果たしている。
'It's Taken On A Whole Other Life,' Says 'Crazy Rich Asians' Author Kevin Kwan

で、そこはテリー・グロスなので、シンガポールがゲイを裁いていることや、極端な貧富の差をどう思うかについてもしっかり押さえております。
また、キャスティングに関する一連の批判もこのインタビューが一番網羅してるかも。それくらい、いろーんな種類の批判と紆余曲折があったのです。

「ヒーローは魅力的でなければならない(当然)」→バタくさい顔の起用、ってどうよ? たとえばマシオカじゃないのはなぜか?という批判は、私も映画を見たときについ思ってしまったことだったのですが、中の人ヘンリー・ゴールディングが自分のIDについて真摯に答えているのを見て、Not Asian enough、というのもまた無理筋な偏見だと気づいた。私が間違っていました。

(8/23追記)麻雀シーンについていろんな人が解説を書いています。単に麻雀の勝敗だけじゃなくて、牌の意味とか、座る位置が東と西で〜という分析には、驚いた。やっぱりもう1回見たい。
1Aを聞いていたら、「麻雀は全然わかんないんだけど、だからこそあの場面に深く感動した」というコメントがあって同意。内田先生が、こまごま日本の風俗が書き込んである「細雪」をたとえばフランス人が好んで読む意味について書かれていたのと似ている。自分にとって「ないもの」に普遍性、言い換えれば真理を見出すんだと思う。

(8/25追記)ロマンチックコメディとしても2015年のTrainwreck以来の好調な出だし。ロマコメ愛好家によると、「興収的にもこれからのロマコメを盛り上げるのは多様性だ。Netflixがその鍵になるだろう」とのこと。

(8/28追記)池上さんと佐藤さんの対談を読んだら、あのラストにまた感激できるかどうか、複雑な気持ちになった...。ウチの現大統領は多様性やハリウッドとはウマが合わないんですけど、やっぱり唸るような大富豪とは緊密につながってるんだよね。

池上 金正恩は会談の前日、シンガポールのカジノホテル「マリーナベイ・サンズ」に行きました。これはトランプに恩を売ったのですよ。金正恩が行ったおかげで、三つのビルの屋上にまたがって船が載っかっている、あの特徴的な建物が、世界中のニュースで流された。視聴者は当然、「あのホテルは何だ?」「マリーナベイ・サンズって何だ?」と思うはずで、大宣伝です。
このホテルの経営者が、シェルドン・アデルソンといって、ラスベガスのカジノ王であり、トランプの支援者なんですね。(中略)2017年、トランプの大統領就任式に費用として500万ドルを提供しています。また、18年11月の中間選挙用の資金として共和党に莫大な政治献金をすると発表した直後、首脳会談の場所がシンガポールに決まっていますから、その関係は推して知るべしです。(中略)
2011年にシンガポールの「マリーナベイ・サンズ」を取材したことがあります。経営を任されている人物が頻繁に日本に行っていると言うので、なぜかと聞くと、「日本にカジノ法を作らせるための根回しと、法律ができたあと、サンズがカジノを作るべき場所を選定しているのだ」と。ですから、法律ができたら間違いなくサンズは日本に進出してきます。

池上彰、佐藤優著「知らなきゃよかった 予測不能時代の新・情報術」から。

原作。

邦訳。

ウェディング行進曲に女声のプレスリーを入れてきたのはとってもセンスがよかった。涙を誘われた。

シンガーご本人が出演。

トレーラー。