英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 TÁR を家で見た。ケイト・ブランシェット is 『TAR/ター』

言語としての音楽に関心を持つひとりとして大変情報量が多く面白かった。
プロットを読んで『ブラック・スワン』みたいな話だったらめんどくせえな〜と思ったのだが、幻聴・幻覚は最小限、わりと地に足のついた骨太のサイコスリラーだった。
特にコロニアリズムの風刺も混じった最後の20分からエンドクレジットまでは人を食ったようなところがあって愉快。
女性蔑視発言でヨーロッパのアカデミーでは干されたのに日本の大学には教授として招聘されちゃった学者とかいたよね。
セクハラもワニも輸出するほうもするほうだけど、情報が瞬時に広まる今の時代は受ける側にも問題ありだよ。

「クリエイターの人となりと作品は別ものとして受容されるべきか問題」についても材料が与えられる。
作者の下衆ぶりが表れている成果物もあれば、本作で例示されたバッハのように霊感によって書かれて時の流れに耐えているものもある。
とはいえ、いったん作者の言動を知ると作品に雑音が混じって聞こえてくるのも確か。
真理の通り道・器としてのばっちい人間をどれだけ見ないことにできるか。

おや、彼女もマエストロと呼ばれるのか、と思ったところですぐに答えが出てきてナイス。

「音楽は時間の芸術」だという小澤征爾の指摘を補完するようなダイアログも興味深かった。
この本を読み返したくなるよ。ただ、この2人もミソジニストよね...。

TAR/ター ブルーレイ+DVD [Blu-ray]

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