とんでもなく面白かった。
瞬く間に今年の暫定マイベストを更新。
ちょっと座頭市っぽい。
最新兵器を繰り出しまくるナチス。
ツルハシ(引っ掛けたり、飛行機に穴を開けたりするのにも便利)、選鉱鍋(弾除けに便利)、ナイフで応戦する金の探鉱者。
ゴリアテとダビデだ。
とはいえ、厳密に言えばアータムはなんでも武器にできるというデス・スクワッドのスキルの一環として使い慣れた道具を使っただけなのだが。
最後にダビデに応じて素手で挑んだゴリアテが勝てるわけがないのであった。
主に赤い州の頑なにライフル所有にこだわる奴らを見ればわかるように、銃身というのは陰茎のメタファーである。
本作では奴隷慰安婦たちを乗せたトラックの幌の後ろから戦車砲が突っ込まれる絵があって、あまりに直接的なtoxic masculinityにドキッとした。
男が銃を奪われた途端にタマを抜かれたみたいになるのもまた。
『プロジェクト・ランウェイ』で、コンテスタントが金ピカの作品を出してきて審査員の中でハイジ・クルムだけが評価したとき、次の会話があって微妙な空気が流れたのを思い出した。
ハイジ:だって私、ゴールド好きなんだもん。
マイケル・コース:それは君がドイツ人だからだよ。
アータムの怒りの肉体が素晴らしい。愛犬はかわいい。
7部にチャプターを切っているのもとても効果的だ。
フィンランド魂Sisuにあたる英語はない、というのがこの物語の主張だが、日本語ではどうだろうか。
胆力とか不屈なら近い?
『かもめ食堂』にも頻出した普段着の言葉Kiitosを最後にやっとアータムの口から聞くことができた。
こんな本が。
トレーラー。