英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 The Quiet Girl / An Cailín Ciúin (2022) を見た。キャサリン・クリンチ is『コット、はじまりの夏』

注:ネタばれあり。
よかった。
ずーっとハグを画面外で処理してきてからの最初にして最後のビッグベアハグは圧倒的なカタルシス。
みごとに涙が噴き出した。

ある抱きしめられたことのない子どもと、二度と子どもを愛しすぎまいと無意識に誓っていた親父の魂がむき出しになった瞬間だった。
Dadと囁かせる仕掛けも嫌味がなくて最高。

無口アゲの物語なので、内向型ジャパンでは好まれると思う。
『「静かな人」の戦略書』がヒットしたように。

私も不気味なだんまりジャパニーズの一人としてボイスを上げる訓練ができていないことによく劣等感を覚えるので、Seánの言葉に悪い気持ちはしない。
ただ、彼と同じように気のいいアメリカ人は"Still waters run deep"ということにしてくれるけど、実際のところ、ろくに何も言わない人は単に何も考えてないだけの場合が多いと思う。私もそうだし...。

Cáitは口数は少ないけどシャイではないな。
環境によってはおしゃべりさんになるはず。
ウシに粉ミルクをあげるシュールなシーンにそれが現れていたではないですか。
幸いフィクションだけど、彼女の福祉が優先されてほしいと切に願ってしまった。

ひとつだけ残念だったのはラストランの回想カット。ないほうが絶対よかった。

来世紀には消滅していそうなアイルランド語、不思議な言葉ですね。
ドイツ語系語彙が濃い目の英語みたいに聞こえるのに、少なくとも英語字幕の示す内容とは大きな乖離があるの。
ちょいちょい英語のせりふも混じっているゆえの混乱もあるが、何度か「字幕が飛んでないか?」と思ったほど。

【2023年7月追記】
図書館の動画配信プラットフォームKanopy(貸出カードがあれば無料です)に降りてきたのを発見して早速ラスト10分を再生。これはドライアイに効きすぎる。

内向型をありのーままでーと慰めてくれるクワイエット・ポルノの数々。

【2024年3月追記】もっと直球なやつ出てきた。また「選ばれし」ってウヘー。隠れて読まないとね。

原作。

トレーラー。