英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 She Said を見た。『SHE SAID / シー・セッド』

とても面白かった。PLAN B作品にハズレなし。
2016年からの背景、記者たちのプライベート(というか彼女たちに完全なプライベート時間はなきに等しいのだが)を織り込んだ構成に拍手。

冒頭の「声をあげたのに大統領選はあの結果かよ」の呆然。
私もあの日は、それまでに出た性暴行報道を受けてもなお、アレに投票する人たち、特に女性がいるという事実をどうしても受け入れられなかった。
でも、取材に応じたあの彼女たちは決して捨て駒になったのではなく、後のこの記事とMeToo movementの下地を確かに敷いたのだ。

報道の説得力を強化するため、実名を記したいとの記者の要望に、「娘たちの未来のために」、あるいは「クリスチャンとして」GOサインを出す女性たち。
アシュレイ・ジャッドの本人役もよかった。
日本にも伊藤詩織さんや五ノ井里奈さんらがいる。
ありがとう。そしてI'm so so so sorry.
私は彼女たちが言ったことを一言一句、彼女たちの真実だと信じる。

それにね、語っても意味ないじゃん、と思った人がいる一方で、私は2016年のあの日、メディアを買い支えないと社会が崩壊する、と身にしみて知り、ニューヨークタイムズとロサンゼルスタイムズの購読だけはともかく始めたんです。
個人が発信できる時代だからこそ、この映画で描かれたような記事に起こすまでの取材と裏どりのノウハウを守ってもらわないといけない!!!と思ったの。

邦題についてはDenialのそれと同じくらい不誠実で、腹を立てているので引用しない。
このラストシーンを見てもまだ邦訳書の邦題を引き継ぐんかい。

斉藤正美氏が挙げていた邦訳の問題点も、すごく身につまされる。
たとえば、翻訳者に「冤罪ガー」に多少なりとも共感するバイアスがあることで、このような誤訳どころか歪曲が発生してしまうわけだ。
#MeToo運動を歪曲し、性暴力被害者を貶める ――『その名を暴け』の誤訳・改変と木村嘉代子氏の書評

原作。

トレーラー。