(元)依存症患者の心象風景を追った作品の中では今までに見た中で一番面白かった。
そもそも、Lost and found in translationの物語は、私が常に惹かれるテーマ。
ローマに根を下ろしかけのアメリカ人デフォーが、イタリア語のレッスンを受け、英語話者のAAに通い、イタリア語通訳を立ててストレートプレイを教える日常に耳を傾けるだけで楽しくなった。
立ち飲みカフェで、八百屋で、そして初々しい家庭で彼がイタリア語を使うさまは、Eat, Pray, Loveですよ。
現実と妄想・幻想が入り混じる構成はよくあるけど、妄想部分(曖昧だが)がめんどくさくなく、さらりと見られるのも良かった。
私はその片鱗を知っているだけだが、過去の充実と栄光の記憶にからめとられて抜けられなくなったら、ほんとうに苦しい。いま持っているものにどうあがいても安住できないのは、この世の地獄ではないだろうか。
デフォーはThe Lighthouseにつづいて「トマス」役で意味深(TommasoはThomasのイタリア語名)。ちなみに私は聖書の中にトマスがいてくれてよかったと思ってる。
地元映画館のオンライン配信プラットフォームで鑑賞。
トレーラー。