英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。Python、Ruby、JavaScript、神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

谷崎潤一郎『細雪』を楽しむ。The Makioka Sisters

内田先生の文章を読んだきっかけもあって、東海岸へ往復する機内で、以前上巻途中で投げ出していた『細雪』をずっと読んでいた。

もう、エピソードごとにみっちりと面白くて感激した。

そして、ラストは衝撃過ぎてたまげた。というか、文豪自らあとがき(新潮文庫版の下巻所収)に「長かったから何と云っても肉体的には疲れた。最後の方になって殊に疲れを感じたように思う」と書いているように、最後のほうは駆け足で事件が大振りになる上、前半のようなしつこいくらいの書き込みを欠く。

単行本で読むと終盤のバタバタぶり、「影から目撃しちゃった」の連続に『ベルばら』と同じ人が作ったとは思えないほど粗雑な『オルフェウスの窓』を彷彿とさせた。

一文一文がすんごく長いのが特徴的。前回読んだときはちょっと読みにくい...と思ったが、今回は意識の流れにぴったりに感じた。

見よ、これで一文なんやで。

幸子は又、身分とか階級とか云うことは別にしても、板倉と云う人間はどうも私には信用出来ない、それは丁稚から写真館の主にまでなったのだから、啓ちゃんのような坊々とは違うだろうけれども、それだけに、そう云っては悪いが、世間擦れのした狡猾さを持っているような気がする、頭の程度も、こいさんはそう云うけれども、私達が話して見た工合では、詰まらないことを偉がったり自慢したりする癖があって、非常に単純で、低級のように思われるし、趣味とか教養とか云う方面も、成っていないように感じられる、ああして見ると、あれぐらいな写真の技術は、職業的な才能と器用さがあれば出来ることなのではないか、今のこいさんにはあの男の欠点が眼に付かないのであろうが、ほんとうによく考えて見る必要がありはしないか、私の見るところでは、生活の水準が全然違っている同士結婚して、永続きする訳がない、正直のところ、こいさんのような分別のある人があんな程度の低い人間を、どうして夫に持つ気になったのか、私には不思議で仕様がないが、ああ云う相手では直きに食い足りなくなって後悔することは、分り切っているように思う、私なんぞには、ああ云う騒々しいガラガラした人間は、ちょっとは面白いけれども一二時間も一緒にいたら辛抱がならない、と、そんな風にも云って見たが、妙子に言わせると、少青年時代から奉公に出たり移民になったりして世間を渡り歩いたのだから、多少擦れているような点もあるか知れないが、それは境遇上を已むを得ないことである、あれで案外純真な、正直なところもあって、お腹の中はそう狡っ辛い人間ではない、つまらぬことを自慢する癖があるのは事実で、そのために人に嫌われることもあるけれども、それも見ようでは、無邪気で子供らしいところのある証拠ではないか、教養が足りないとか、程度が低いとか云うことは、或いはそうであろうけれども、それは承知の上なのだから構わないで置いて欲しい、うちは高尚な趣味だの理屈だのが分る人ではなくてもよいし、ガラガラした粗雑な人間でも差支えない、却って自分より低級な相手の方が、扱い易くて、気を遣わない、と云うのであった。

句点の置かれた箇所がものすごく重要な意味を持つように思えてくるではないか。(実際にはこの後、こいさんの板倉擁護が続くだけである)

何より、公私問わずよくもらう要領を得ないEメールに似ていてすごくおかしい。
頭を整理せず、あーで、こーでと喋るように書き連ね、私に何を伝えたいのか、まるきり分からないEメール。
まず日本語クライアントと日本語おばちゃんのEメールを思い出すので、「日本語話者に多い」と言いたいところだが、日英どちらかに限らない。

私は英語で教育を受けた人は、「お世話になっております」もナシでいいし、結論>サポートのきっちり構成でものを書くのだろう、と思っていたのだが、そうでもない。
医師の英語メールさえ細雪メールだった時は、若干ガッカリさえした。

いいんですよ、友達同士はダラダラメールで。電話の長話と同じだから。
でも、依頼や連絡は要点を先に短文で書いてほしいと思う。

「旅行中に上巻を読み終わってしまい、続き読みたさに家にもある下巻を旅先でもう1回買う」という苦渋の選択をしなくてよくなった。Kindle万歳。

早速この映画も見たんだけど、4人の化粧が下品。。。船場のええとこの姉妹、ってこんなんちゃうんちゃう?(泣)
さらに貞之助と雪子の不倫風味も加わって話も原作とは別モンの下品な仕上がり。

「細雪」のダラダラ文をこの物語に合ったリズムで心地よい、と褒めていたのはこの本だったと思うのだが...
Kindle版が無いので確かめられないよー。

ドイツ語翻訳者の人から超熱中した、と聞き、それほど「ドイツみ」があるなら、とKindleで全巻購入した。後悔。