英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Marshall (2017) を見た。サーグッド・マーシャルの法廷『マーシャル 法廷を変えた男』

見に行ってよかった。An architect of the civil rightsに、みんなで盛大な拍手を送った。
でも実際は、マーシャルというより、サム・フリードマンの映画だった。
中の人に特に華がなく(知らない役者さん)、マーシャルが法廷で発言できないという役どころで、弁論に立ったのがサムだったというのもあるが、サムの肉付けのほうがプライベートも含めて充実していたと思う。
暴漢に襲われて満身創痍で帰って「最初の1発は僕がかましたんだ!」と泣いていたお連れ合いを笑わせるとか、相手方弁護士との最後のディールとかね。

マーシャルとサムがパペットマペットの合意をする聖句。そう、ユダヤ教徒とクリスチャンは同じ神を信じるのです。

You shall speak to him and put words in his mouth; I will help both of you speak and will teach you what to do. He will speak to the people for you, and it will be as if he were your mouth and as if you were God to him. (Exodus 4:15, 16)

マーシャルは生涯3回しか敗訴していないというので、たくさん選択肢はあったろうに、随分とまた複雑なケースを取り上げたなあと思う。
単なる人種のバイアスだけでなく、(このケースの場合の)正しい側にセカンドレイプ、ミソジニスト疑惑が付随してくる案件。
本件は女性側に人種というパワーがあるので特殊だが、現場にいたら、私は告訴側に立って怒ってしまってたかもしれない。
レイプ事件のたびに、善人たちから男女問わず湧いて来る「被害者も悪い」「美人局」ディフェンスにしょっちゅう憤慨しているので。

被告が、その夜、原告とは関わっていないとウソをついた理由、それは

Because the truth gets me killed.

ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラが20年以上、公然の秘密であり続けたのも、まさにそれが理由です。
話それるが、見てみぬふりだった野郎たちだけじゃなく、笑顔で彼と写真に収まり続けたパルトローに対する株は下がったわー。一切関わりを絶った、という女性たちもいるだけに。
今年の受賞シーズン、プレゼンターと受賞者としてやたらかちあってしまったケイシー・アフレックに一切触れず、冷たい視線を送り続けたブリー・ラーソンを見よ。

それにしても、大統領選で知ってしまったgropingという単語が実によく覚えられて悲しい。

法が守ってくれる、と被告を励ましたマーシャル。私もシチズンの1人として、諦めませんよ〜。

英語について。
サムがトイレで兄弟から応援をもらうシーン、
Don't mention it.
の意味が二段落としになっているのに注目。
言葉どおりに訳出しても意味は通るかな。
でも、日本語では「言わないで」は、お礼に対する決まり言葉ではないからねえ...

在米長くなるにつれ聞かれることもなくなったけど、映画を字幕なしで見て楽しめるかという話が出るたび、「モノによって理解度はかなり違う、法廷モノは厳しい」とよく言っていた。
でも、改めて気づいたのは、法廷モノにおける法廷シーンでの英語は非常に分かりやすいということだ。
何しろ陪審にアピールしないといけないので、ゆっくりで、端的で、筋が通っていて、なまりの激しい弁護士はいない。
本作でも、法廷シーンとそれ以外のシーンを比べれば、その耳への入り方の違いが歴然としているのが分かると思う。

歴史修正主義者と争うDenialも面白かったし、
『アリーMyラブ』のアリーの最終弁論にも、1度見ただけなのに覚えてるのがいくつかある。

法廷モノで、言葉の格闘技を楽しみましょう!

マーシャル 法廷を変えた男

マーシャル 法廷を変えた男

  • チャドウィック・ボーズマン
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