英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Brad's Status を見た。ベン・スティラー『47歳 人生のステータス』

注:ネタバレあります
面白かった!
なんという分かりやすさ。クリシェと素っ気なさのさじ加減が絶妙。
つまり、ブラッドのミッドライフ・クライシスの描写は相当ベタベタなのだが、泣かせるセリフは「ハイ、ココ!」を感じさせないさりげなさ。
終始流れるモノローグも、(フォレスト・ガンプと違い)不思議と気にならなかった。

分かりやすいついでに、英語も実にクリア。一応、学が高めの人びとという設定ゆえか、妙な単語が出てこないし、長ゼリフもビックリするほど聞きやすい。
急にリスニング力がアップしたような気になること請け合い。

うまい細部はたくさんあったが、最近『脳はこんなに悩ましい』を読んだばかりなので、成功を羨んでいた友人が意外にも不遇の中にあるのを知ってブラッドの意気が上がったところには、思わず「分かるわ〜」
それも、ニヤリとする、とかいう直接的な表現ではなく、思い切り振れる感情の幅と、息子くんとの掛け合いの変化でそれが分かるのだ!
何より息子くん(オースティン・アブラムス)の芸巧みなことと言ったら。ミレニアル脇役も実に層が厚いなあ。

もちろん、ロードムービー in マサチューセッツとしても楽しい。

ベン・スティラー主演のコメディドラマということしか知らずに観に行ったら、PLAN Bのロゴが現れたので期待が高まった。それは裏切られなかった。
本当にいい名声の使い方をしている、ぶらぴ。
私が結局ブランジェリーナを尊敬してやまないのは、かれらが与える人たちだからだ。
同じく封切られたばかりのアンジーの監督作First They Killed My Father『最初に父が殺された』も高い評価を得ている。
離婚だ、アル中だ、手術だ、といろんなことが聞こえてくるけれど、かれらは決してつくり出すこと、伝えることをやめない。どんだけ生産性高いんだ… 

ブラッドのステイタスはstill alive。
ある友人にご両親の様子伺いをした時、答えが"They exist"で笑ってしまったことがあるが、ブラッドはそれよりは高等(?)なステイタスだ。
ラジオで、ある料理人のおばあさんも、"I love to live, not just to exist"と言っていたもの。

(18年2月追記)スティラーが母校のキャンパスツアーに参加する息子を眺めながら妻に電話をかけるシーンを何度も思い返している。
ひとつでも心に残るセリフがあるだけでその映画は特別だ。

関連:PLAN B 製作作品『ムーンライト』

トレーラー。

TIFFでの質疑応答、"laid-back director” マイク・ホワイト監督(成功者役として出演もしている。夫役はDOPとのこと)の冴えない奴感がすごい。
ちょい役も揃ってとっても良い雰囲気。