映画
スティーヴン・スピルバーグの8ミリカメラを携えたComing-of-ageストーリー。小学生のときに読んだスピルバーグのゆるい伝記の内容が頭にあったのと、各誌絶賛レビューの雰囲気から、『リコリス・ピザ』『ラ・ラ・ランド』みたいな内輪受けかなぁ...と萎える…
とても面白かった。PLAN B作品にハズレなし。 2016年からの背景、記者たちのプライベート(というか彼女たちに完全なプライベート時間はなきに等しいのだが)を織り込んだ構成に拍手。冒頭の「声をあげたのに大統領選はあの結果かよ」の呆然。 私もあの日は…
アイルランド、架空の辺境の地のマッドネスな人間模様。 照明明るめの『ライトハウス』。荒波に現れる架空の集落の生活を眺めながら、社会は複雑になりすぎたよなあと考えていた。 屋根の下で暮らすためだけに稼がないといけなくなったなんて。視線の定まら…
当たりクジを飲み尽くしてしまったレスリーがささやかな夢を取り戻すまで。 ひなびたアメリカの町のスケッチが緻密で、好きな物語だ。ダレンがジェームスに疑いを告げたと思われる工事現場の遠景のシーン、大変スマートでよかった。スウィーニー、ナンシー、…
いかにもCVSで売ってるペーパーバック(装丁にストックフォト使ってるやつ)にありそうな話。 眠っているような海辺の街を楽しむ映画。去年から知人のパートナーがアル中でリハブに入っている。 アルコールはいつでもどこでも買える分、一番闘いにくいと聞い…
よかった。 ケン・ローチみたいな作風なのだが、希望があって。 ニュージーランドの児童福祉の介入方法が垣間見られるのも興味深い。と言ってもカリフォルニアとそんなに設計思想は変わらないようだが。八方塞がりの中でどこに光を感じたかというと、最後に…
ダホメ王国のAgojie(女性兵士集団)、奴隷貿易の歴史への関心を開く作品。 すばらしいパフォーマンスだけれど、いろいろなところがちょっとずつ寸止めで歯がゆかった。 それからこれは完全に個人的な問題なのだが、ファンタジー以外の屋外セットというのが…
再びモンタナが舞台のスリラー。 寒々しくて絶品。これまでも何度か書いたが、私は私有地というシステムを疑問に思っている。 本作は、土地を自分のもんにしたがった人間の罪の帰結の物語。 サンドラもその罪からは自由になれないでいる。土地は地球のものよ…
Speak No Evilを見た直後だったのもあって、余計にかるっかるのプラスチック脚本に見えた。 ナメた邦題がこの上なくぴったりだ。 ジョン・チョーを楽しむだけの映画。私は彼が出ている作品に興味をひかれるけど、どうも血の気の多いおっさん役ばかりではない…
苦しい。すごくきつい。(ほめてます)これはフィクションだ!悪に魅入られるアダムとイブのメタファーなのだ!と自分に言い聞かせなければならないほど。 救いを求めて、ビョルン&ルイーセ役の普段の笑顔の写真とか探してしまった(サンダンスでチョケてる…
映画体験としては退屈だった。『シェイプ・オブ・ウォーター』みたいな後味の作品。 上映前の挨拶映像でミラー監督が、映画館で見てくれてありがとう、シアター上映を想定して作った作品だから...と言うのだが、シアターで見なくてもいい。なんならpodcastで…
大変面白かった。 久しぶりに劇場で拍手が起こるのを聞いた。冒頭、オーブリーの小鼻芸で一気につかまれ、シュールなエンディングまでもう「知ってる」風景ばかりで...。 エミリーもユセフもすぐ隣りにいるんだよね。モチーフになっているのがどう見ても割に…
これまでダイアナ妃や英国王室に材を取ったフィクションをいろいろ見てきた。 The Crown、The Queen、Spencer... 比べられるものではないが、そのどれよりもはるかに面白かった。夫妻の姿だけでなく、「そのとき」の一般市民の様子が多数盛り込まれ(スマホ…
South by Southwestで好評を博したコメディ。 面白かった。好き。21世紀のミセス・ダウトは物理的な制約が少なく、妄想をいくらでもかき立てられるので危険度が高い...。 テキストの向こうの人物の表現、The Girl From Plainvilleも似たようなことをしていた…
信頼するレビュワーたちが揃って「悪くはないけど、監督の過去の秀作(Get Out、Us)に比べると...」と言葉を濁す。 確かに1度見ただけで鮮明にキーのせりふを(ルピタ・ニョンゴの"We are Americans"!)、恐怖の感情を記憶している2作に比べると、とっ散ら…
『ショコラ』『ハイ・ライフ』などに続く、クレール・ドニ x ジュリエット・ビノシュのコンビ作品。 マメシャトルの『ハイ・ライフ』はとにかく後味が悪かったのだが、本作はレビュワーの評価が異常に高かったのと、現代劇だということで(みんなマスクをし…
素敵な拾い物だった。 マンガのようなヴィランズにいいひとたち、そして魔法のドレスが続々登場するディズニーアニメのようなプロットが楽しい。 ただ、パリの風景を楽しめる映画ではなく、あくまでハリスおばさんが夢みるところの「パリ」を箱庭内で撮影し…
『トイ・ストーリー』はろくに見ていないのだが、クリエイターがかなり闘った作品だと聞いて3D上映館に行く。 おもしろかった。 先週見たばかりだったせいもあるが、新『トップガン』と同じ話やんと思った。 失った同志の子孫の助けを得て過去の失敗を乗り越…
よかった。 これは見といたほうがいいのかも?と思わせてくれた多くのプロアマ批評家の人たちにありがとうと言いたい。 1作目の公開時には生まれていなかったであろうわっかい観客たちが興奮しているのも素敵だった。ちょっと『アポロ13』みたいだったよね。…
1970年前後、Roe v. Wadeの判決が下るまで中絶を支援した活動家グループJaneの記録。 Happeningに続いてタイムリーな公開。 (母親に生まれる前の子を殺す権利などあるものか、と説教する神父の動画に続いて) It's not a theological argument. It's a put-…
反戦詩人シーグフリード・サスーンのリレーションシップと死生観のコラージュ。 かなりクセのある作品だが、良い観客陣(諧謔に大いに笑い、今的にあり得ない一言には思わずOh Goshと声に出す)に当たったおかげでとても楽しめた。ラストの、ものの哀れを他…
オースティンの『高慢と偏見』を下敷きに(?)ロングアイランド沖の島でのクィアな1週間を追うロマコメ。 モタモタしてるし、モノローグうっとうしいし、何よりgaynessに欠ける。 ただ、Happeningと同様、自分ごとを思いめぐらす時間になった。国籍にこだわ…
大変よかった。 こんな茫漠とした土地に、ニューヨークから来たモヒカン族をはじめとするネイティブとヨーロッパルーツの人々、ケニア出身のおそらく出稼ぎの人が交わって根を張って、さらには争いまでしているのだった。モンタナ・ストーリーヘイリー・ルー…
あまりにもタイムリーな全米公開。 1960年代のフランスで望まぬ妊娠をした学生が地下で中絶を遂げるまでを描く。あのこと(字幕版)アナマリア・ヴァルトロメイAmazon昨今の状況に限らず、男性システムによる女性の体の支配についてもう次々と思い起こされて…
大変いい映画だった。「いつ始まるのかなあ」と思ってるうちに終わった。そう思わせるシーンの積み重ねだった。 ずっと引きの別れの場面は影絵劇のよう。息を切らしながら息子と車の間を往復するお母さん、しばりつけられて暴れる弟。家族4人それぞれにすば…
子どもが主人公のファンタジーながら一貫した突き放し感がひんやりするグリ―フケアの佳作。 『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督作品。双子、ガニマタの角度まで同じで本当にDNAは驚異だよ。鑑賞中、退屈したわけではないが、70分で終わるという事実に…
まあまあ面白かった。 ただ、これがたとえばシカゴが舞台で全編英語だったら不思議と退屈になったと思う。 パリ13区である必然性は言語だけ。実に魅力的なヴォイスだった。フランス語を勉強するときには教材に使いたい。パリ13区 R-18版(字幕版)ルーシー・…
暴力やハラスメントを許す環境で作られた作品は見ればわかる、という話がある。 映画は監督のメディアなのだから当然と言えば当然だろう。 いくつか、鑑賞中に「現場で搾取が行われてそう」と感じた作品を思いだしたのでメモしておく。後で追加する。『ダン…
あの『アメリカン・ハニー』を撮ったアンドレア・アーノルド監督が乳牛の生涯を追ったドキュメンタリー。各所で配信しているが、イースター前の断食中でもあり、これは家では集中できないやつ、と思って劇場で瞑想してきた。出産時、人間3人がかりで子牛を引…
レジェンド、ミシェル・ヨーとジョナサン・キー(ショート・ラウンド!)の粘り強いキャリアを寿ぎに。作品は苦痛に近いほど苦手なやつだった。 「2 Everywhere」とキャプションが出たとき、え......まだ......半分......と軽く絶望した。これを楽しめるほど…