英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Montana Story を見た。スコット・マクギー x デビッド・シーゲル『モンタナストーリー』

大変よかった。
こんな茫漠とした土地に、ニューヨークから来たモヒカン族をはじめとするネイティブとヨーロッパルーツの人々、ケニア出身のおそらく出稼ぎの人が交わって根を張って、さらには争いまでしているのだった。

モンタナ・ストーリー

モンタナ・ストーリー

  • ヘイリー・ルー・リチャードソン
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メインの6人、それぞれに強い印象を残す。家族3人はもちろん、看護師エース、ジョーイ、ムッキのバランス感。
エリンがfarm to tableレストランのシェフという設定も暗喩に富んで実にいい。

タイトルロールだからそうでないと困るが、しっかりモンタナで撮影されているのがよかった。
同じくモンタナが舞台の『The Power of the Dog』はその点少し残念だったので。
『Certain Women』を見返したくなった。

スーパーも空港もほどほどの距離にあるということでそこまで辺境ではないと思うが、「ここにリフト呼べるんだ」「こんなところでシグナル入るんだ」「ここで医者を呼ぶ選択肢があるんだ」と都会目線で驚くこといろいろ。

エリンがダンテの地獄篇を持ち出したところ、隣人のあり方について唐突に説明しすぎでは...と思ったが、終映後にボッティチェリの地獄絵を見たらまさにあの風景と完全一致で驚いた。
でもあの場所はパラダイスバレーと呼ばれる土地なのですね。

トレーラー。

TIFF Q&A

映画 Happening / L'événement を見た。アニー・エルノー原作『あのこと』

あまりにもタイムリーな全米公開。
1960年代のフランスで望まぬ妊娠をした学生が地下で中絶を遂げるまでを描く。

あのこと(字幕版)

あのこと(字幕版)

  • アナマリア・ヴァルトロメイ
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昨今の状況に限らず、男性システムによる女性の体の支配についてもう次々と思い起こされて100分間ずっと腹の中で怒っていた。

全米の赤い州で実質中絶ができなくなっても中絶件数は大幅には減らない、むしろ死ぬ妊婦が増えるだけ、という試算をしている研究者がいて、「だろうね」と思っていたのだが、この物語を見るとその帰結が確からしいことがよく分かるのではないだろうか。

先週土曜日は私の町でもプロチョイスとプロライフ両方のデモがあった。群青州の地元では今そこにある危機を感じにくいけれど、原理原則の問題としてワシントンで後退してはならないと思う。カバノー怒バレット怒。

プロライフの運動団体の人は普段からクリニック前にいつもいる(『愛しのグランマ』のように、ビジターが来たら止めに入る)。あれはあれですごい。でも当然だけど、誰も中絶したくてするんじゃないことを分かってくれ。

私の直接の知人で知っている限りで中絶を経験しているのは3人。うち1人は2度。そして「4人目は無理だと思っておろしてもらった」と公言している男が顧客に1人いた。

産もうが産むまいが体に負担はかかるし、全米の60万人、日本の10万人全員が、みんな命を守る最後の手段として決断したんだよ。
プロライフあるいはとりあえず女性に罰を課したい人が言う「好きに遊んでもし妊娠したら堕ろせばいいと思ってる女性」というイメージは藁人形です。

腹立つわ。

最近『富士日記』を読んで武田百合子氏のことを調べてたら、何度も中絶して最後には倒れたと書いてあって連れ合い(知らん小説家)にめちゃくちゃムカついてる。

本作、Wikipediaでは「ドラマスリラー」に分類されてて的確すぎた。

原作はアニー・エルノーの小説『事件』。

トレーラー。

すごいことが起きたので聞いてほしい(シリーズ献金 その19)

タイザー歴7年、自分史上一番すごいことが起きたので聞いてほしい。

要旨:

  • 追徴に構えていたタックスリターン(確定申告)で、取られるどころか15,000ドル戻ってきた。今の円安レートなら200万円相当。
  • それは渡米以来初めて税理士を変えたことで起きた。
  • 過払い分を取り戻せる絶妙のタイミングだったことを考えると、聖霊さまがイラっとして去年から計画してくれたとしか考えられない。ハレルヤ。

私は渡米当初は何の資産も扶養の義務もない勤め人だったので、日本の年末調整と同じくらいの感覚でタックスリターンをしてきた。同僚に紹介された税理士に丸投げ。数十ドル戻ればラッキー、たまに「おお、UCの学費が戻ってきた!」とか、申告して初めて控除制度を知ったりして、とにかく何も調べようとせず節税意識ゼロ。

ちょうど十分の一献金を始めた頃から副業を始め、勤務先外の収入が増えるにつれ、申告でドドンと後払いすることが多くなった。特に最初の会社を辞めてからは、収入が年々増えたために、いくら予定納税をしても追徴されていた。

そして、2019年、2020年は心臓がドキドキするくらい多額の後払いをすることになった。ショックだったが、ともかく耳を揃えて払えたことに感謝し、税理士さんを疑うことはなかった。そういうものなんだ、パンデミック中も職を失わずに済んだのだからコミュニティに貢献すべきだと納得し、人にセカンドオピニオンを聞いてみようとさえ思わなかった。

それまで税理士さんを変えようと思わなかったのは、そうして特に問題を感じていなかったからである。ずっと同じ事務所にお願いしていれば過去のデータも保存してくれているのでラクだ。

こうして10年以上、惰性で言われるままに納税をしてきたわけだが、去年の申告時に事件が起きた。税理士事務所からボンクラさん※をアサインされてしまい、ひどい目にあったのだ。

私は前述のようにおとなし~い客なので、さっさと仕事をしてくれれば追徴額にギョッとしたとしても何も言わない。でもそやつは、そもそも時間を守らなかった。3度約束を破られた挙句、2月には申請していたのに、期日を延長する羽目になってしまった。しかも、そのときに「一般の期日が過ぎて落ち着いたのでこれからは取りかかれます」とのたまう始末。小口クライアントの優先度が低いのは理解するけど、それ口に出しちゃだめでしょ。だったら小口の仕事受けるなよ...。

そこで初めて「絶対来年は違う事務所に変えよう」と思った。

とはいえ、まともな税理士さん、会計士さんに巡り合うのはそう簡単ではない。周りの人にどう処理しているか聞き始めて、私と同じような業態の人が長くお願いしているという人に頼むことにした。「事務所に超かわいいイヌがいるから」と紹介してもらったのもポイント高かった。

で、今年、zoomでもいいと言われたが、初めてなので事務所に出かけていった。犬かわいかった。そのニュー税理士Aさんからは聞かれたことがない質問をたくさんされ、いかに以前の税理士が仕事をしてくれていなかったのかがよく分かって驚愕した。Aさんは私の話を聞き商機と思ったのだろう、2019、2020の申告もレビューしてくれるという。で、一目見るなり"Gosh, you paid so much..."

こうして3年分の申告をしてもらったところ、州連邦合わせて総額15,000ドルのリターンになったのだった。
ちなみに申告の修正は3年までということで、超払い過ぎ期がギリギリカバーされた。絶妙のタイミングであった。

過去の申告をamendできることすら知らなかったのんびり納税者の私は、去年ボンクラ(ヒツジクライアントな私でも動かざるを得なくなるくらい強烈な)に当たらなかったら、今年も同じ税理士事務所に依頼をし、「うう、高い...でもコミュニティのためだ...」を繰り返していただろう。税金に対する意識も高まらなかったと思う。

もしもっと後になって「払い過ぎだった」と気づいたらどうだったか。たぶんあまり気にしなかったと思う。少なくともお金が無駄になったわけではないので。この財産に対するおっとり姿勢に聖霊さまはイラっとしたのではないかと...。

考えてみれば、長期寝かせる系の各種投資も兄弟姉妹に後押しされない限りやっていなかったと思う。聖書には与えられた財産をため込むな、回せ、増やせ、と書いてある。これからも財テクに興味がないのは変わらないが、自分のお金ではないからこそ、守ること、増やすことを考えなければならないことは肝に銘じたい。

ただね、財テク商法の代名詞「金持ち父さん」でさえ、何かひとつだけやるなら十分の一献金だ、と言っているのだ。

とりあえず今回の臨時収入で米国債を買った。数年間ほっとく。

※ちなみに、このボンクラ税理士は日本出身者である。日本人は時間を守る、多少高くてもサービスが良い、という説は個人の経験では2013年頃には幻になったと感じている。どれだけ納期を破られたことか。日本語の参入障壁が残っているので需要はまだしばらくはあるだろうけど、日本語が必要ない人に高額の日本企業のサービスを勧めることはまずない。

【7/2022追記】 バラバラと州と連邦からチェックがきたのだが、全部で300ドル程度の利子がついていた。これがlegitなのは分かったけどrightなのかはちょっとわからん。
3年間税収が確定しなくても世の中が回るって、一体どういう仕組みなのだ。

映画 Hit the Road を見た。パナー・パナヒ『君は行く先を知らない』

大変いい映画だった。「いつ始まるのかなあ」と思ってるうちに終わった。そう思わせるシーンの積み重ねだった。
ずっと引きの別れの場面は影絵劇のよう。息を切らしながら息子と車の間を往復するお母さん、しばりつけられて暴れる弟。

家族4人それぞれにすばらしかった。しきりに大地に口づけをしている暴れん坊のボン(Rayan Sarlak)いいなあ。
自意識の薄膜が皆無に見えるんだよね。
最近、ドラマA Million Little Thingsを見て、今どき珍しいくらい子役が下手っぴーで気が散ったこともあり、とりわけ新鮮だった。

旅だちの朝にいつメンのひとりが「私は無理...ここに残る...」みたいなニュアンスで死んでしまうモチーフ、『怒りの葡萄』『大草原の小さな家』に加え、うちの教会でも現実にあって(教会堂が移転する直前に天に召された兄弟がいた)、どうしてもいろいろな意味を感じ取ってしまう。旅の安全のための犠牲とか、選抜に落ちた奴は約束の地がけがれるから同行できないとか。
聖書にいかにもありそうな話だが、はっきりと類似のエピソードには出会えていない。

ちなみに私はhit the roadとかhit the shelvesという表現が好きです。

トレーラー。

映画 Petite Maman を見た。セリーヌ・シアマ『秘密の森の、その向こう』

子どもが主人公のファンタジーながら一貫した突き放し感がひんやりするグリ―フケアの佳作。
『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督作品。

双子、ガニマタの角度まで同じで本当にDNAは驚異だよ。

鑑賞中、退屈したわけではないが、70分で終わるという事実に何度か安らぎを感じた。あんまり集中できてなかったということですね。

冒頭、ケアホームからの車の中で後部座席から母親にスナックを分けるシーケンスがすごくいいのだけど、チャイルドシートに座ってるのになんでそんなに手が伸びるの、と疑問。

秘密の森の、その向こう(字幕版)

秘密の森の、その向こう(字幕版)

  • ジョセフィーヌ&ガブリエル・サンス
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