英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Roadrunner: A Film About Anthony Bourdain を見た。アンソニー・ボーディン is 『ロードランナー』

リアルタイムで番組や本にふれていなかった私にとって、アンソニー・ボーディンはうつに苦しんだ有名人というイメージが強い。
実は彼が亡くなる3日前に出たケイト・スペードの訃報のほうがショックで、「この2人を自死させるアメリカ社会やべえよ」、This world doesn't deserve them...という論調の2人セットの報道、オピニオンをいくつも読んだからだ。

本編では、終わりから俯瞰している視聴者(作り手も)としてはベトナムでの笑顔から遠く離れ、包丁を握るのをやめて頭が白くなってからの彼が本当につらそうに見えてしまい胸が痛んだ。

今年はバイルズ選手、大坂選手という1997年生まれのvisible minority2人が自身のメンタルヘルスを優先すると声を上げてくれた。Mental health is healthと改めて言葉にする賛同があふれた。マッチョ国アメリカをもっとしんどいときにしんどいと言いやすい環境にしようと切に思う。
(バイルズ選手の報道では「体操は常に首の骨を折らないだけで奇跡。focusできない状態での競技は死につながる」と言っているレポーターがいてものすごい説得力だった。以前、羽生選手が練習で接触転倒して脳震盪等の可能性もあるのに滑っちゃったのを思い出した。もちろん自分の体を知っている彼がいけると判断したのだろうけど、周囲の圧が無関係のはずがない。だからまわりが美談にしたら絶対あかんのだと思う。人によっては「できない」と言うのはものすごく勇気のいることなんだ)

撮影旅行先でプールサイドでくつろぐ金持ちと戦闘機の爆撃の対比に愕然として「やめるわ」と言い出すアンソニーに、五輪強行の東京を思った。
Who's benefiting from this?

人生終盤に交際相手らを通して#MeTooのインパクトを受けていたらしいことがあえて取り上げられていたのは驚いた。

タバコを手放さない若きアンソニーのマンハッタン。料理人の舌も嗅覚もニコチンフィルター込みで機能した時代だったのだろう。
あの紫煙立ち込めるキッチンで大勢で汗と唾を飛ばしまくりながら創られるひと皿はめっちゃばっちくて、その分めっちゃ美味しかったんだろうな。
二度と再現できないであろう下野の一皿。

この本、いくつも表紙のバージョンがあるがこれはカッコいいね。私が持ってるバージョンのあしらいは啓発本っぽくていまいち。邦訳版もまた全然別人みたいな装丁。

トレーラー。

映画 SUMMERTIME (2021) を見た。詠う天使の街『サマータイム』

詩で綴るLAダウンタウンの西側地区。大変dopeでよかった。
書いてパフォームするのが、アマンダ・ゴーマぢおンを含むアンジェリーノの詩のスタイル。
多面体のこの町の中でも「知っている」と思えるシーンがいくつかあった。

『エイス・グレード』と同様、原語版以外はSUMMERTIMEではない。
というか、たとえばこれに吹き替えや字幕をつける作業をしなければならないとしたらものすごい徒労感を覚えると思う。
このままライムを楽しんだほうがいい。一語一句聞き取れなくても、それぞれの詩人のセンチメントとソウルは十分伝わる。

"LA Overture"などで特に強い印象を残したMilda Cuda。彼女の"Hey, I'm Gay"の動画があった(感涙)。

トレーラー。

昨日たまたまテレビのある場所にいたので、NBCでボート予選の中継を眺めていた。開会式前の開催種目である。
そもそもボート競技など初めて見た。
ペア、フォアと漕ぎ手が増えるたびにぐいぐいスピードアップするさまに感嘆。
ヒジャブをかぶって漕いでいる女性選手も。
レポーターがbeautiful dayを連呼し、実際背景の緑が美しい。

でも何より、スタート時にうつ伏せでボートの舳先を押さえている係の人に心震えた。
時間に余裕があるからか、カメラも結構かれらの表情を押さえている。
暑いぜー。うつ伏せしんどいぜー。超責任重大だぜー。
昔、自分がいろいろな練習試合の審判で失敗したことを思い出してイヤーな気持ちに。

裏方の姿、泣けるよね...。
かれらに十分な報いがあることを願う。
さすがに彼らはボランティアじゃないよね?

映画 Zola を見た。Twitter発TikTok的バッドアス動画『ゾラ』

一言で言うとEw。
元ネタのツイートシリーズが2015年らしいが、既にうんざり感あり。
最先端のミームは高速で滅びる。

ゾラとステファニーの生々しい連れションシーンを見て思ったこと。
最近、日本のジャーナリストが男子トイレに音消し装置がないことを「ジェンダー不平等」と書いて炎上していた。
私も著書を読み、伊藤詩織さんが信頼を寄せるのもわかるわ、と思っていたジャーナリストだったので呆れたり落胆したりした。

私も日本にいたときは、音姫がついていれば使ったし、なければ水を流してマスキングを試みることはあった。
それがアメリカに来たらもうみんな盛大にジョボジョボブリブリやってて、ああこれでいいんじゃん、お互い聞こえないふりをすればすごくラクじゃん、と思った。
たいてい仕切りの下部がオープンになってるのも掃除しやすいし、ブラインドスポットが減るし合理的。

上京したばかりの女の子が音消しをせずに連れションして、ええとこの女の子から小声で「その最中は水を流したほうがいいと思う」と指摘され顔から火が出る、というシーンがあったのは昔の林真理子の小説だったか。
心底くだらないと思うが、TOTOが日本のその需要をとらえて随分たった今、音消し習慣が変わることはないのだろう。

背景のフロリダの海が美しくて、エンドクレジットを最後まで見てしまった。初めてかも。

トレーラー。

映画 In the Heights を見た。『イン・ザ・ハイツ』

なぜAfro-Latinxがいないことにされてる?との論争ひとしきり、さめた目で鑑賞。
楽しかった。
よくこの長さで押し切った。マーケティングのプロセスにパンデミックが影響した?
プロットは少々理屈っぽい。

子どもが親の目なしにフラフラできない社会では、communityはできてもneighborhoodはできないかもなぁ、と考えていた。
つまり、全米もうダメ。
10年前にブルックリンに行ったとき、暗くなるまで子どもたちが路上で遊ぶ声が聞こえてきて、いいなあ、セサミストリートだなあ、と思いつつ、大人はいるのだろうかと懸念した。
2年前、大阪は淀川区に行ったとき、子どもたちが自分ち以外の場所に出入りしているのが通りかかるだけでも目に見えて、まだまだneighborhoodがイキイキしてるなあ、と思った。
ただ、だからといって安全なわけではないんだよね。日本で子どもを1人にしてはいけない法律はできなさそうだけど。

出先で時間を調べて都合のよかったシアターに行ったら7ドルだった。
だいぶ人員も絞っているようだった。
後席の老夫婦が停電のシーン以降しきりに鼻をすすっていて、映画館っていいな、と思った。

随分前から楽しみにしているスピルバーグのWest Side Storyの予告編も流れたが、ワクワクしないねえ、あれ...。
主役の2人どこ...。


トレーラー。

映画 Moby Doc を家で見た。モービーのドキュメンタリー

実はモービーの名を知らなかったのだが、過去に行ったレイブで彼のパフォーマンスを見ていたことが発覚。
スティーヴ・アオキのショーケースしか覚えてなかったわ...。
それ含めて、"This film is yours"と教えてくれたEちゃんありがとう。

興味深い人物。
折々にはさまれる彼の作品もとても好きだ。
ダンスミュージックであってもなぜか「G線上のアリア」を耳にするときに感じる気分と同じ。

ただ、一番「そこんとこ詳しく聞きたいよ!」という局面が省かれていた、というか書き込みが足りない印象。
かゆいとこに手が届かない。
なんでいきなりアル中から脱出できたの?
とか、
母の葬儀を二日酔いでブッチするまで落ち込んでいたのに、そこから再び売れるとこまでどうやって持ってったの?
とか。

名声の頂点に達したフェスの前夜、バルセロナのホテルの描写こわい。
何かの要素がひとつでも違えば、彼もホイットニー・ヒューストンみたいに部屋で見つかったかもしれない。
「二度と目覚めないのが怖くて眠れない」という人は時々いるけど、「もう目が覚めなければいいのに」とだけ願う夜とは。
MJもプリンスもそんな前夜を過ごしたのかな...。

ニューヨークに出るまで暮らしていた工場跡の話もえぐい。
月50ドルで数年住んでた間に3人もそこで死んだとか泣。友達もここで刺されたんだよとかサラっと言うな。

ところで音楽。
パンデミックの1年で、私は音楽鑑賞をしなくても生きていけるという事実を知ってしまった。
そもそもまともな再生機を何も持ってないし、2005年に日本で買ったiPod Nanoもどこへいったのか不明。
(見つかったとしてもまだ使えるのか?)
仕事しながら流すのはもっぱらニュースチャンネルやオーディオブックなど、話を訊くコンテンツばかり。
車に乗る時間が減るとプッシュで流行曲も入って来ず。

レイブやライブもな。もともとそんなに行ってたわけじゃないけど、一生行っちゃダメって言われても平気だな。
週1回は教会で賛美をしているので、それがなくなったら少しさみしいけど。

日本にいたときは5分チャリに乗るだけでもイヤホンを入れないと気がすまないほどobsessiveだったのに。