英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Limbo を見た。ベン・シャーロック『運命の回り道/リンボー』

スコットランドの荒涼とした島で辛抱強く時を待つ難民申請中の人びと。
――という興味深い枠組みだが、演出が苦手すぎてあんまり頭に入ってこなかった。

どんな演出かというと、20年ほど前に新宿・中野・下北で過剰に賞賛されていた不条理劇みたいな構成と空気感。
「独特の間がよいのだ」などと聞いて見に行くと5分で後悔するという...。
良い意味で裏切られたことはただの1度もなく、あとはひたすら2時間あまりを耐えるのだ。

この100分の映画も私にとっては体感3時間。

とはいえ、すごく笑っている人もいたし(ブリティッシュコメディです)、多くの人の心を引っかくといいとは思うけれど。
日本も含め、世界的な問題であるだけに。

ネオンカラーに光るマスクをしている観客がいた。
パーリー感が増す以外にどのような効用があるのかは分からない。
隣りに座られたらスマホチェックされるのと同じくらい気が散ると思うので、座席が1列1組に限られている今だけの楽しみ?

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トレーラー。

映画 Street Gang: How We Got To Sesame Street を見た。『ストリートギャング』私のセサミストリート

ついに!映画館が戻ってきたYO!
去年Straight Upを見て以来なので、実に14か月ぶり。
よくぞ持ちこたえてくれた。
ここ以外の行きつけ2館はつぶれてしまった...

そして、本作は映画館復帰作としてぴったりだった。
私よりももっとセサミになじんできたであろう観客たちと一緒に鑑賞できたのは至福。
みんなよく笑ってた。

編集がちょっとfussyだが、具がよいので面白く見られる。
とにかく...創作に携わった人たちみんな笑顔がいいですね。

同時に、何度も書いてるけど、「NGのときの演者が一番魅力的」問題も。
特にパペッティエたちの場合、失敗するとそのままパペットでふざけ続けていて、そのアドリブがまた「脚本どおりよりはるかにいいね!」なパフォーマンスで、一体どう考えたものかと思ってしまう。

パイロットを作る段階の心理学者をまじえたリサーチ、一番のターゲットオーディエンス(教育を受ける機会が乏しい子どもたち)へのアウトリーチの取り組みがとても興味深かった。

もともとテレビCMの中毒性を応用しているものの、番組を見ている子どもたちがどんなところで気が散るか、を精査するくだりなんか、現在のリサーチ・スクリーニングのあり方にもつながる。
映像の評価で一番重要なのが「テンポが悪いと感じたのはどこか」。

実際、『美女と野獣』のノーカット版を見たとき、映画に吸い込まれていた子どもが削除されたシーンにくるたびに画面から目を離してアクビしたりしていて、こりゃ見事だな、と思ったものだ。

セサミストリートは私にとってMTV(特にシンディ・ローパーのTime after time)、Aチーム、ナイトライダーと並んで80年代のアメリカの思い出を怒涛のようにあふれさせるトリガー。
カーミットとミスペギーのイラストがついたランチボックス持ってキンダーに通っていた。
帰国してNHKで放送が始まったときは嬉しかったけれど、そのときはもうすでに別モノに感じたんだよな。

舞台をストリートに設定するまでの試行錯誤を見ながら、「おかあさんといっしょ」をいい加減、一新しろよと思わざるを得なかった。
子どもを「おかあさんがいなくてかわいそう」な子にしてしまうのは、その子に「おかあさんがいなくてかわいそう」と言うまわりの傲慢な大人なのよ。

関連書。

トレーラー。

映画 Hope/Håp (2019) を見た。Maria Sødahl監督『ホープ 希望』

たいへんよかった。
不治の病に向き合う人間をモチーフにした映画は数あれど、少なくとも日米にこういう断絶ギリギリの絶妙な距離感(対病気でも対人でも)を描ける人はいないのでは。
北欧の徹底したほの暗さも、この人たちの他者への敬意のはらいかたを浮かび上がらせるのに貢献している。
6人の子どもたちも、主人公の目線を通せばとことん成熟した「他者」。

内田樹が、愛と敬意は相反するものであり家族に必要なのは愛ではなく尊敬することなんだ、というようなことを書いているのを読んで疑問を感じたのだが、この映画を見て、敬意こそザ・愛じゃないかと改めて思ったよ。

「余命3か月と知って長年のパートナーとの結婚を決めるんだよ」という筋だけを聞くと、I'm good と思うかもしれないが、絶対裏切られるのでぜひ体験してほしい。

フィクションではあるが、オスロの医療従事者の勤務事情が垣間見られたのも興味深かった。

トレーラー。

映画 Time (2020) を家で見た。アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞候補作『タイム』

ユニークなドキュメンタリー。
ジャズにのって軽妙に20年間の闘いを描く。人権の回復を求めるのはかれらにとっては日常だということ。
白黒編集でフォックスの生え際に白いものが増えていくのが痛切に。

ところで、この正直で知的でヴァーバルな夫妻が銀行強盗をした、というのがどうにも頭で理解できない。
教会や学校をはじめとしたコミュニティにも恵まれたんだろうけど、子どもたちがグレずに真っすぐに勉強好きに育っているのを見ると、忍耐力や克己心も備えた人たちに違いないし...。

出来心のスケールがでかすぎないか。

タイム

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トレーラー。

映画 Quo Vadis, Aida? を家で見た。アカデミー国際長編映画賞候補作『アイダよ、何処へ?』

怒りに震える。
もう地球上の「男」が全員消える以外に解はないのではないか。

4/17追記 霊は理性だ、という話の流れでまたぞろ牧師が「男性はまだいいが、女性は往々にして感情的で...」と言い出し、会堂の中でひとり怒り再沸騰。
ほんとうに「男」にからし種ほどの理性があったら、この映画みたいなことは起きてねえよ怒